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「死にたい」と言われたら

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2024.5.29

先日、ある読書会に参加したときのこと。

「相手に『私はダメだ(死にたい)』と言われた時の対応について、糸ちゃんはどう思いますか?」

と聞かれる機会がありました。私がPSWの資格を持っていることで、こういうサービス・パスを回してくれたのだと思いますが、そう簡単な話ではありません。

あなたは、大切な誰かに「死にたい」と言われたら、なんと答えますか?

執筆:糸ちゃん

「死にたい」と言われたら

どうも、県内の大きな本屋に行ってもハヤカワSFのコーナーが異様に狭いことに絶望している糸ちゃんです。

先日、生まれて初めての読書会に参加しました。一応本読みのくせにその手の集会をずっと敬遠してきた結果変な想像が膨らみ続け、なにやら降霊会のような魔術的なイメージを抱いていたのですが、まあ普通の良識ある人たちの集まりでした。

その時の題材が「聴くことの力」みたいなタイトルで、その本を私は全く1ページどころか1行さえも読んでいなかったわけですが、最終的に一番喋っているのが私という何とも皮肉な様相を呈しておりました。

その読書会の中で、ある男性が興味深い感想を口にされていました。

「この本には『私はダメだ(死にたい)』と相手に言われた時、答え方としては5つあると書いています。精神科領域に詳しい(であろう)糸ちゃんはどう思いますか?」

会が始まる前の自己紹介で私がPSWの資格を持っていることを主催者が説明してくれたので、こういうサービス・パスを回してくれたのだと思います。その優しさに配慮してそれらしい回答をしておいたのですが、内心は「くだらねえな」と思っていました。

まず、相談支援の現場において正解というのは存在しません。それこそ100人が「死にたい」と口にしたとして、その背景には100通りの「死にたい」があるわけですから、こうすればいい、というような方法論は何の価値もないわけです。

先日、「福祉専門職の欺瞞」という、やや、いやかなり私憤にかられた支離滅裂なコラムを寄稿しましたが、そちらにも同じようなことを書きました。

「この障害の人にはこう接しよう!」とかいうアレです。ああいうことを真顔かつ平気で口にする輩は専門職ではありません。更に厳しい表現をするとパチモンです。というか素人以下です。

だって障害者に限らず、健常者の方も何らかの悩みを自分が信頼できると感じた相手に打ち明けた時、その人が「このパターンでは……」と適切なツール(引き出し)を探っている様子を見せたらムカつきませんか? 人間の心はそのように類型化できるほど単純なものではありません。

よく専門職が「傾聴」だの「受容」だの「共感」だの口にして、それがいかに大切なことか力説していますが、例えば「死にたい」と言われた時を考えてみた時、これは本当に有用なツールなのでしょうか? これをこのまま適用すると以下のようになります。

クライアント「自分には生きている価値なんてない。今すぐにでも死んでしまいたいです」

支援者「うんうん、あなたは死にたいんですね(傾聴)。そう感じることは決しておかしなことではありませんよ(受容)。確かにあなたのおっしゃる通り、死んだ方がいいかもしれませんね(共感)」

……まあこれは極端すぎる例ですが、本や教科書に書いてあることを十分咀嚼せずに実践すると、決して起きえないとは言い切れない危うさがあります。

一応擁護しておくと、この手の方法論が全く無意味で有害というわけではありません。支援におけるこうした原則を押さえておくと、少なくとも自殺志願者に対して「そんなこと言っちゃダメだよ!」とか「両親にもらった大切な命をなんだと思ってるの!?」なんて比喩ではない「殺人的」な無知を晒すことは避けられます。また、有名な「バイステックの7原則」なんかはすごくよく出来ていて、私も相談支援の現場では割と念頭に置きながらクライアントと接しているという事実もあるからです(気になる人は調べてみてください)。

それでも、人の心という一生かけても理解しえない複雑怪奇で深淵なテーマに本気で取り組み、誰かの「死にたい」を筆頭にした深刻な悩みと向き合うならば、こちらも全存在をかけて相手と対峙しなければなりません。その際に出し惜しみはなしです。「腹を割って」などというレベルではなく、魂のぶつかり合いなのです。

さて、ここまで読んであなたは大切な誰かに「死にたい」と言われたらどうしますか? この問いにもしもすぐに明確な答えが出せる人は、すでに大きな嘘に足元をすくわれているのかもしれません。

1994年生まれ。いじめや家庭内不和で精神障害(双極性障害Ⅱ型)を発症しながらも、福祉系の大学で4年間福祉について学び精神保健福祉士を取得。現在は大分県別府市にある訪問介護事業所で事務・広報の仕事をしている。
ライターとしての心がけは「しんどいことを楽しく伝える」こと。自身の体験を専門職と当事者両方の視点で語っていきたい。

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