『パラちゃんねるカフェ』がお届けする、企業で活躍する障がい者社員インタビュー。今回は、株式会社セブン&アイ・ホールディングス 経営推進本部 サステナビリティ推進部で働く高木一成さんにお話を伺いました。普段のお仕事の内容ややりがい、働く上での工夫など、さまざまなお話を伺いました。
※当コラムは2021年3月に「パラちゃんねるカフェ」に投稿されたものです。
はじめに
セブン‐イレブンやイトーヨーカドーなどの店舗でお馴染みのセブン&アイグループ。
今回、お話を伺った高木一成さんは、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの経営推進本部 サステナビリティ推進部で働いています。
高木さんには聴覚に障がいがあります。子どもの頃は聞こえていたものの、途中からだんだんと聴力が衰えていく中途失聴。普段は、補聴器をつけ、口の形や声などの情報を総合し、コミュニケーションを取っています。
普段のお仕事の内容ややりがい、働く上での工夫など、さまざまなお話を伺いました。
セブン&アイグループの環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」に取り組む一員
高木さんは現在、経営推進本部 サステナビリティ推進部に所属し、セブン&アイグループのサステナビリティに関する基本方針にある、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を推し進める一員として、活躍しています。
この宣言は、グループ各社の店舗ネットワークとサプライチェーン全体で、さらなる環境負荷低減を目指すもので、CO2排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達という4つの具体的な取り組みを進めています。

『アリオ市原』に大規模太陽光発電を導入|2020年7月21日 株式会社イトーヨーカ堂 プレスリリース
高木さんは、CO2排出量削減のテーマを担当しています。
CO2の排出量削減というと、工場や店舗に大きな機械を設置して…というイメージがあるかもしれませんが、私の仕事は、グループ各社から届く排出量のデータをもとに、グループ全体の排出量の算定やチェック、また算定基準や排出削減目標をより良いものにすることなどです。職種としては、企画職の側面が強いかもしれません。
企業の社会的責任を果たす上で、事業活動を通じて環境領域の社会課題へアプローチする企業が増えています。ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが企業に求められる機運もあり、高木さんの仕事はまさに、企業の持続可能性をつくる仕事です。
CO2の排出量に関しては第三者機関の検証が必要で、日程や検証方法の調整を行ったり、その審査に立ち会ったりということも仕事です。CO2の排出量に関することは内容も複雑なので、コンサルタントや審査機関の方々とのやりとりも必要です。聴覚に障がいがあるため、電話でのやりとりは難しいので、メールなどを活用した文章でのコミュニケーションを用いて業務を進めています。
企業の未来、ひいては地球環境の未来をつくる仕事を任されている高木さん。もともと、環境に関する仕事に就き、違う仕事の担当を経て、また現在の仕事に戻ってきたという経緯があります。
やっぱり、この仕事は面白いなと感じるんですよね。自分で考えて、自分で推進する。これは、やりがいです。もちろん、周囲の方に相談しながら、コミュニケーションを大事にして仕事を進めますが、自分の意思が反映される仕事です。それが、企業と地球の未来につながっている。この仕事、好きですね。
さまざまな技術の革新によって、働きやすさが格段に増した

高木さんには聴覚の障がいがあります。周囲とのコミュニケーションが求められる仕事に就いていますが、どのような工夫や配慮のもと、働いているのでしょうか。
コミュニケーションのツールが電話からメールへ、そしてチャットツールやビデオ会議システムへと移り変わってきていることは、私の障がいにとって、とてもありがたいことです。以前は現場の担当者への電話ができなかったので、当時会社で使っていたシステムやメールなどを使ってやりとりしていましたが、リアルタイムでのコミュニケーションが難しかった。でも、今はリアルタイムに近い環境でやりとりできます。
電話やビデオ会議システムは音声を使ったコミュニケーション、メールやチャットツールは文章でのコミュニケーションと、それぞれに特徴があります。聴覚に障がいがある分、文章でのコミュニケーションのほうに重きを置くことが考えられます。
例えばメールでのやりとりは、すれ違うこともあれば、意図が伝わらないこともあります。分かりやすい文章を心がけるのは大事です。聴覚に障がいがある人にも、文章の得手不得手はあると思いますが、コミュニケーションが必要な仕事ならば、障がいがある・ないに関わらず、分かりやすく伝えようという心がけは必要だと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、リモートワークや時差出勤など多様な働き方の導入が進みました。特にビデオ会議システムは、コロナ禍における必須のビジネスツールとなりました。
当社では朝礼を行っているのですが、在宅勤務の方も増えたので、ビデオ会議システムを使って実施しています。投影される資料を目で追いながら話を理解することができるので、今までのように全員が集まって、会話を軸とした朝礼よりも情報を取得しやすいんです。これも働きやすさにつながっている一例ですね。

コミュニケーションしやすいマスク(フレックスジャパン株式会社)
※長野県に本社のあるフレックスジャパン株式会社が長野県聴覚障害者協会監修のもとで作製した人にやさしい透明マスクのご紹介です。
※イトーヨーカドーの限定店舗で、3/26(金)以降順次販売を開始いたします。
【取扱店舗】アリオ上田、南松本、大森、武蔵境、木場、四街道、立場、武蔵小金井、川崎、春日部、曳舟、大井町、東大和、アリオ深谷、アリオ亀有、アリオ葛西、アリオ上尾、アリオ西新井、アリオ八尾
仕事は自分で選んで、切り拓くもの。
自分の障がいのこと、そして業務上の工夫や働きやすさについて気兼ねなく話す高木さんですが、障がいのある人すべてが同じように振る舞うことは難しいものです。
中途失聴という症状を考えると、だんだんと聞こえなくなる不安や恐怖、障がい者になったという変化への受容を経験しているはずの高木さん。現在のような仕事に対する姿勢や意欲には、どのような経緯があったのでしょうか。
途中で聞こえなくなったことで、昔からお付き合いがあった方々にはなかなか理解してもらえず、実は今は、聞こえなくなってからのつながり、人間関係がほとんどなんです。当社にも、自分の障がいのことを伝えて入社しているので、周囲は自分の状況を知ってくれた上で、受け入れてくれています。だから、気持ちよく仕事ができているのかもしれません。

以前、私の上司だった方に伝えられた言葉が今でも忘れられないんです。それは「今(当時)は障がい者に合った仕事を会社が渡す時代だが、これからは障がい者が自分で選んで、切り拓く時代になる。そこは覚えておいてほしい。」というものでした。今、そういう時代になったか?と言われると、変わりつつあるけれど、足りないかもしれない、というのが実状かもしれません。ただ、自分はその言葉を胸に、実直に仕事に取り組んでいきたいです。
仕事は自分で選んで、切り拓くもの。これは障がいの有無にかかわらず、すべての人に当てはまる言葉かもしれません。
障がいがあるからといって、障がい者自身も、企業側も決めつけすぎないことが大事だなと感じています。配慮してほしいことと自分ができることは平等で、どちらも示していかなくてはいけないことだと思います。自分でできることを示しながら、持続可能な働き方を目指していきたいですね。
最後は、高木さん自身の「サステナビリティ推進部」に紐づけて、持続可能という言葉でインタビューを締めていただきました。
取材後記
実は先ほどの言葉の後に「商品やサービスをサステナブルに、と言われているけれど、働く人も現場もサステナブルでなければ」という言葉もいただきました。
障がい者雇用において、現在は「採用」以上に「定着」「活躍」というテーマが話題となっています。サステナブルは「定着」につながるもの。障がい者が安心して働くためには、合理的配慮、職場環境の整備、対話やコミュニケーションなどが必要です。
しかし、働く障がい者側は、どのようにサステナブルに貢献すればいいのでしょうか。その答えは高木さんが取材を通じて伝えてくれた、ひとつひとつの言葉に込められているのではないでしょうか。
