車いすユーザーの働く上での困りごと④職場環境編 車いすでの移動があるからこそ生じる職場環境での困りごととは?

車いすに座って窓際で微笑んでいる男性の職場風景。

この連載は、車いすユーザーが働く上でどのような困りごとがあるのか、どのようにすればその問題が解消できるのかについて、私の例を踏まえながら解説していきます。

第4回目は、前回に引き続き、車いすユーザーに適した職場環境についてご紹介します。車いすで移動するからこそ生じる環境面での困りごととその解決方法。現在の職場に、今回紹介するすべての要素を取り入れることは難しいかもしれませんが、可能な範囲で参考にしていただければと思います。

段差と階段

段差や階段が車いすユーザーの移動の妨げになることは、車いすユーザーでない方でも想像できるのではないでしょうか。

最近の公共施設では、スロープやエレベーターが設置され、環境面のバリアは以前よりもかなり解消されました。しかし、築年数が30年以上のビルでは、未だに建物の入り口に段差があったり、会議室は2階にあるのにエレベーターが設置されていなかったりすることもあります。

車いすユーザーの中には、自力で段差を越えられる人もいますが、10cm以上の段差になると他者のサポートを必要とする方がほとんどです。そのため、建物の入り口に段差がある場合、社員や通りかかった人にサポートをお願いすることになりますが、常にそのような状況が整っているわけではありません。

したがって、建物の入り口はスロープを設置するなどして、車いすユーザー単独で移動できるようになると望ましいです。

一方で建物内にエレベーターが設置されていない場合は、会議を1階の部屋で行うなど、車いすユーザーの社員が2階以上に上がらなくてよい仕組みを整えることで解決することができます。

車いす用に設置された歩道のスロープ。

机の高さ

車いすユーザーがデスクワークをする場合、椅子に移乗する人と車いすのままで作業する人の2パターンがありますが、多くの方は車いすのまま作業します。

車いすのままで作業するときに問題になるのが机の形状です。

たとえば、私は車いすに座っている状態だと床から膝までの高さが650mmあるので、机の下に引き出しがあると膝が当たり、車いすのまま机に入れないことがあります。引き出しがついていない机の方が使いやすいです。

また、最近は電動で上下昇降できるデスクも多くあるので、そちらを導入することもおすすめします。

個人的には、女性と男性では適切な机の高さは異なるため、可変式の机を導入することは車いすユーザーに限らず、多くの社員の働きやすさに繋がると考えています。

ノートパソコンと植物が置かれたミニマルなワークスペース。

ドア

みなさんは車いすに乗った状態でドアを開けたことはありますか?

ドアには、開き戸と引き戸の2タイプあります。車いすユーザーにとって引き戸で困ることはほとんどありませんが、開き戸は使い勝手が良いとは言えないドアです。

特に手前に引く場合は、車いすに当たらないようにドアを手前に開ける必要があるため、人によっては周囲に十分なスペースがないと一人では開けられないことがあります。

周囲の社員にドアの開閉をお願いすることで解決できるかもしれませんが、業務に集中しているときに何度も声をかけることを考えると、やはり申し訳ない気持ちになります。

できることならば、車いすユーザーの社員が頻繁に利用する部屋のドアは、自力で開けられるように整備されていると望ましいです。

多機能お手洗いのサインが表示されたドア。
多目的トイレの扉が、分かりやすい「引き戸」です。

通路幅

通路の幅が車いすの幅よりも狭いと、当然、車いすで通ることはできません。車いすで移動する場合、健常者が歩行するときよりも幅広い通路が必要となります。

ゴミ箱や不要なパーティションなど、移動の妨げとなるものは、できる限り通路に置かないことを求めたいところです。

また、通路幅が車いすのサイズぎりぎりの場合は、その場で車いすを回転することができません。車いすで不自由なく移動するためには、その場で360度回転できるスペース(約1500mm)が必要になります。

特に車いすで回転できるように本人のデスクの後ろに十分なスペースを確保していただけると嬉しいです。

まとめ

前回から2回に渡って車いすユーザーに適した職場環境について取り上げました。

最後に重要な点をお伝えさせてください。それは、今回取り上げた内容がすべての車いすユーザーに当てはまるわけではないということです。

同じ障害でもその症状には個人差があります。人によっては上記のような設備を必要としない方もいますし、その逆もありえます。

今回取り上げた内容はあくまで概論として捉えていただき、詳細は障害のある社員と対話をしながら適切な職場環境を整えてください。

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ABOUT ME
中村 珍晴(ちん)
1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。