点字の普及率は視覚障碍者の中で1割程度。世の中と当事者間のズレについて。

自動販売機の釣り銭返却部分にある点字表示。

私は全盲の視覚障碍者で、盲学校に入学した頃から今まで日常的に点字を使ってきました。

点字は社会の中に広く普及しています。たとえば、公共施設の案内や、スーパーやドラッグストアで売られている商品のパッケージまで、さまざまな場面で使われています。

ただ、全国の視覚障碍者全体で点字を使用している割合は1割程度と言われています。世の中に存在している点字の多さの割に、当事者にはなかなか普及していないという現実があります。

今回は、あまり知られていない点字についてお伝えしていきます。

ソーダ缶のプルタブを開ける手のクローズアップ写真。

点字をすらすら読むのはなかなか難しい

私は、小学1年生のときに盲学校に入学し、すぐに点字を習い始めました。

点字は、6つの点を組み合わせて構成させている文字です。縦3点、横2点の合計6点で、この6つの点の組み合わせが1マスです。この1マスが50音を表しています。

また、他の文字とちがうところは、必ず横書きで、左から右に進んで読んでいくというところです。

しかし、点字を書くときは、これが逆になります。右から左に書いていき、点の配置も読むときとは反転します。なぜなら、点字を書くときは紙を針の先で打っていくことで、紙の裏側に点字が浮き上がるため、元の文字を反転させる必要があるのです。

私は点字を書くことは、比較的すぐ出来るようになったのですが、点字をすらすらと読めるようになるまではかなりの時間を要しました。小学5年生になったころ、ようやく読めるようになったくらいです。

点字を読むとき、隣との文字の間隔がわからなくなってしまったり、次の行に移るときに間隔がずれてしまったりすることがあり、なかなか習得しづらかったです。

この次の行に移るときに自分がどこまで読んだかわからなくなってしまうことを防ぐために、今では行の真ん中くらいまで読んだら、左手を次の行の先頭に移動させるようにしています。こうすることで、一行読んだ後にどこまで読んだか分からなくなってしまうことがなく、スムーズに読み続けられます。

ただ、この対策をすればすぐに読めるようになるというものでもなく、習得に時間がかかるというところが、点字がそこまで普及していない理由の一つかもしれません。

晴れた日に撮影された学校の建物の写真。

どんな場面で点字を使うのか

私が点字を使う場面は、電話をしながらメモをとるときと、専門的な内容の本で点訳されている本を読むときです。

職場の固定電話にかかってきた電話の内容をメモする際は、片手で受話器を持ち、もう片方の手で点字のメモをとります。片手で受話器を持っていると、パソコンのキーボードを打つのは困難になってしまいますが、点字なら片手でも書くことができます。

図書には、音訳されているものと、点訳されているものがあります。私の場合、録音図書だと何度も聴き直さなければならなくなってしまい、集中力がなくなってしまうのです。点字だと、一文字ずつゆっくりとなぞり、思考を深めていくことができます。

そのため、専門書の場合は、ゆっくり見直しながら読める点訳された専門書で読むようにしています。

その他、飲食店に点字メニューがある場合は、利用しています。

点字を作成するためのスレートとスタイラスの写真。

まとめ

私は点字があまり普及していない背景には、点字の習得の困難さがあると思っています。

ここまでにお伝えした通り、点字の習得には時間がかかります。年齢が上がるほど、指先の感覚が鈍くなってくると言われているため、中途で視覚障碍者になった場合はより一層困難になると考えられます。また、見えていた頃とのギャップも生じるため、そもそもその受容が大変なのかもしれません。

世の中のイメージでは、視覚障碍者は点字を読むことができるという認識があるように思います。2000年代前半から小学校の授業の中で点字が大きく取り上げられるようになった影響もあり、「視覚障碍者=点字」の意識が強くあるのではないでしょうか。しかし、このイメージと現状の間には大きな溝があると感じます。

社会にたくさんの点字表示を普及してくださっている方々に感謝しながら、当事者への点字の普及についても考えていかなければいけないと思います。

当事者と世の中のずれを小さくするためにも、点字を学ぶハードルの高さをいかに低くできるかという難しい課題に向き合っていきたいです。

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ABOUT ME
小川 誠
視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。