車いすユーザーの働く上での困りごと②通勤編

この連載は、車いすユーザーが働く上でどのような困りごとがあるのか、どのようにすればその問題が解消できるのかについて、私の例を踏まえながら解説していきます。

第2回目は、通勤時の困りごとについてご紹介します。通勤手段は、電車、バス、車、自転車などさまざまです。結論からすれば、車いすユーザーは車通勤ができると通勤の負担が軽くなります。しかし、車が使用できず、電車を使わざるを得ない環境でも、ポイントを押さえることで通勤の負担を軽くすることは可能です。

そこで今回は、電車通勤での困りごととその解決策について解説します。

電車通勤で直面する問題

さっそくですが、車いすユーザーが通勤ラッシュ時に電車を利用して出社することは、ほぼ無理です。その理由は、車いすユーザーが電車にどうやって乗るかを知っていただくことで理解してもらえると思います。

まず、一人で電車の乗り降りができる車いすユーザーは多くいません。ほとんどの駅では、ホームと車両の間に段差や隙間があるため、単独で乗車すると車いすの車輪がハマってしまう危険があります。

そのため、電車を利用する際は、改札で駅員さんにサポートを依頼します。具体的には、目的地の駅と乗降時のスロープの有無を伝えます。

サポートをお願いすると、すぐに電車に乗れると思うかもしれませんが、実際はそうではありません。鉄道会社によっては、目的地の駅にサポートの確認がとれてからでないと乗車できません。目的地の駅に確認が取れていない場合、目の前に電車がきていても、次の電車に乗ることになります。その場合、乗車まで20分以上待つこともあります。

サポートの準備が整い、いざ電車に乗ろうと思っても新たな問題に直面します。それは、満員電車の場合、車いすで乗車できるスペースがほとんどないことです。車いすは、立っている2~3人分のスペースを必要とします。乗客のみなさんが車両の奥に移動しスペースを確保できれば良いのですが、それが難しい場合は次の電車を利用することになります。

駅の改札口と周囲の様子。車いすユーザーが通勤時に直面するアクセスの問題を表現しています。

解決策とは?

ではどのように解決すればよいかを考えていきましょう。

まず、車いすでも通勤ラッシュ時に電車を利用できるようになると良いのですが、いささか現実的ではありません。そこで、今回は、通勤手段・出勤時間・就業場所の視点から解決策を紹介します。

1:通勤手段

電車やバスなど、公共の交通機関を利用して通勤するのが難しい場合でも、自動車通勤が可能になると通勤のハードルが下がります。私のように下半身が麻痺している車いすユーザーは、手動運転装置を取り付けることで両手のみで運転することが可能になります。

自家用車での通勤を許可する場合に気をつける点は、駐車場です。

車いすユーザーが単独で車の乗り降りをする場合、車いすを積み下ろしするために、運転席のドアを目一杯開ける必要があります。ショッピングセンターなどの車いす駐車スペースが幅広いのは、このような理由からです。

また職場に駐車スペースがない場合、コインパーキングを利用することがあるかもしれません。しかし、コインパーキングのロック板が邪魔で、運転席の横に車いすを置けないケースもあります。この点は当事者でないと気がつかないかもしれません。

車いすユーザーのための青いアクセシブル駐車スペース。近くにはスロープも設置されています。

2:出勤時間

通勤ラッシュ時の電車は利用者が多く、車いすユーザーが利用するにはハードルが高いと説明しました。それでも、出勤の時間帯をずらすことで電車やバスを利用して出勤することは可能です。

たとえば、通勤時間が40分の場合、10時出社であれば9時台の電車で出勤することになります。都市圏と地方で事情は異なると思いますが、9時台であれば、比較的混雑は解消されているのではないでしょうか?

また可能であれば、フレックスタイム制度を導入し、設定されているコアタイムのみ勤務して、勤務時間や出退勤時間を社員が自由に決められるとより通勤の負担は少なくなります。

もちろんフレックスタイム制度は、企業側が求める成果を満たすことが前提ですが、通勤の問題だけが雇用の問題になっているのであれば、検討する余地はあるでしょう。

3:勤務場所

最後は出勤することに困難がある場合、そもそも通勤をやめて自宅で働こうという考え方です。

数年前までリモートワークは、一部のIT企業のみが導入できると考えられていました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、多くの人が出社を制限され、リモートワークが一気に広がりました。リモートワークでも生産性を維持できることを実感した人も多いのではないでしょうか。

これは、車いすユーザーに限った話ではありませんが、通勤がなくなると身体的にも精神的にも負担が軽くなります。また通勤時間を業務や休憩の時間に充てることができるというメリットもあります。

ただし、フルリモートを実現できる企業はごく一部です。それでも週5日の勤務の内、週2回をリモートワークにするだけで負担はかなり少なくなります。

私の職場は、週3回の出向が義務づけられています。残りの日は出勤時間を遅くすることもありますし、自宅で仕事をすることもあります。重度障害を抱えていても仕事ができているのは、間違いなく職場の配慮のおかげです。

デスクでパソコンを操作する車いすユーザー。通勤に関する問題について考えている様子。

まとめ

以上、今回は通勤をテーマに解説しました。

職場の近くに引っ越すことができれば、身体的にも精神的にも負担が軽くなりますが、介護などを理由に家族と同居している人は簡単に引っ越すことはできません。

それでも、通勤方法・通勤時間・勤務場所の選択肢を増やすことで、車いすユーザーが働く可能性は広がります。すべての方法を取り入れることは無理でも、可能な範囲で選択肢を増やしてみませんか。

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ABOUT ME
中村 珍晴(ちん)
1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。