私が視覚障害者向けのIT支援の仕事をするようになった理由

青空を背景に左右の方向を示す標識。視覚障害者向けのIT支援の仕事を始めるきっかけを象徴しています。

私は2015年から視覚障害者を対象にIT支援を行っています。今回は、視覚障害者にはなぜIT支援が必要なのかの背景を説明しながら、支援の方法や難しさ、私が支援の目標としている「生活の充実」について書いていきます。

全盲の視覚障害者として自立したい思い

私は全盲の視覚障害者ですが、「なるべく人の手を借りずに生活をしていきたい」という思いがあります。

視覚で受け取る情報量は、全感覚の8割を占めると言われています。全盲になると、残りの2割をフル活用して生活していくことになります。

しかし、得ることのできない8割の情報は、いくら残りの2割をフル活用しようとしても補えるものではありません。この8割を失うのは、大きな喪失感につながります。

たとえば、中途失明の方だと、見えていた頃は本が好きでたくさん読んでいたのに、失明したら読めなくなってしまったなど、多くの制限や諦めが降りかかってきます。

何か物事を進めるときは、視力のある人に頼まなければなりませんが、他の人がいつもそばにいて手伝っていただけるわけではありません。外出援助などの福祉サービスも十分とは言い難いです。

そのような中で、IT機器を使えると「できることが増える」のです。

ノートパソコンのキーボードとデジタルアイコンのコラージュ。視覚障害者向けのIT支援の仕事を始める理由を表現しています。

IT支援を始めたきっかけ

私は2015年に視覚障害者に対するIT支援を始めました。当時、地元の視覚障害者福祉団体で行われていたパソコン講座の講師が退任されて、そのあとを受け継ぐことになりました。

もともと、パソコンなどのハードウェアやそれに搭載されているアプリやプログラムを試すことは大好きなのですが、急な依頼だったこともあり、不安感も少しありましたが、引き受けました。

一人一人の技術に合わせた支援を行う

「視覚障害者向けのIT支援」と聞いても、どのような方法で行っているのかは想像がつきづらいかもしれません。IT支援は、一人の先生が多くの生徒に対して説明をする講義形式ではなく、一対一で行っています。

IT機器を扱う技術のレベルは、一人一人違うものです。そこで、個人のレベルに合った支援方法を考えなくてはなりません。

支援を始める前に受講者には「何をできるようになりたいか」の目標を設定してもらうようにしています。支援者は、その目標を実現できるようにお手伝いをしていきます。明確な目標を立てることは、受講者のモチベーションを上げることにもつながります。

支援する上での難しさ

支援を行う上で難しいことは、「受講者にいかに毎日パソコンなどに触れてもらうか。」というところです。

支援に受けに来ただけで満足してしまい、家に帰ると練習をしないという人が多くいらっしゃいますが、スキルアップの基本は練習を継続することです。復習をしなければ、忘れてしまいます。反復練習を重ねることで定着するものですが、なかなか伝えるのが難しいです。

スクリーンリーダーから流れてくるアナウンスを理解できるようになるまでも時間がかかります。IT用語はカタカナまたはアルファベットと数字の羅列が多いので、慣れていない人には伝わりにくく、分かりやすく説明することに、多くのエネルギーを注いでいます。

どのような場面でIT機器が活躍するのか

では、IT機器が使えるようになると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

たとえば、郵便で届いた活字の書類が読めないときに、ITが使えなければ他の人に読んでもらうしかありません。そのようなときに、スマートフォンに文字を認識して読み上げてくれるアプリがあれば、自分で確認することができます。

印刷物の内容によっては、提出日が書いてある物もあるので、迅速に確認出来るだけでも私たちにとっては大きな事です。

もう一つ、視覚障害者は外出が困難になることが多くなります。外出を援助していただける福祉制度も不十分なため、特に買い物の不便さは大きいです。そのとき、ネットスーパーを利用して買い物ができれば、外出援助について考える負担が減ります。

ITを使えるようになると「自分でできることの幅が増える」のです。

IT支援をしていて良かったこと

これまで、IT支援を行ってきて良かったことは、受講者の技術の向上が感じられるときです。「自分が行っている支援方法が、その人にとってうまくマッチしたのだ」と思うとうれしくなってきます。

さらに、「生活面で良い変化が表れて、とてもうれしい」という声も聞きます。このような声を聞くと更に支援への情熱が沸いてくるのです。

逆に、うまく行っていないときは、「なぜうまく行かないのか」の理由をしっかり考えるようにし、もう一度コミュニケーションを取り直すようにしています。

青空を背景に左右の方向を示す標識。視覚障害者向けのIT支援の仕事を始めるきっかけを象徴しています。

まとめ

私が、現在までIT支援を続けているのは、多くの視覚障害者の QOL が向上して欲しいという思いが強いからです。

Word や Excel が出来れば、選択する仕事の幅が広がり、収入アップに繋がるかもしれません。収入が上がれば、生活に余裕が生まれ欲しかった物が手に入るようになり、趣味の一つでも増やすことも可能になります。

視覚情報を受け取れないことで喪失感を味わったり、仕事や生活の場面で制限がかかってしまったり、といった背景で多くの制限がかかりやすいからこそ、仕事のスキルアップや趣味の幅を広げるといったことが重要になります。

また、他の人の手を借りなくても、自分でできることを増やしていけると、自信につながります。

これからも、私は受講者がモチベーションを維持しながら反復練習していけるように、その先にある生活の充実を感じていただけるように、IT支援を続けていきます。

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ABOUT ME
小川 誠
視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。