「自分で髪を抜いているの?」と笑われて美容院が恐怖の場に

机の上に並べられたヘアドライヤー、ヘアアイロン、ブラシ、コーム、ヘアクリップ、そして観葉植物。

~自力で髪の手入れをし続けた地獄の3年間~

抜毛症であると、美容院に行きにくいと感じることが多い。実際、取材をしていても、そういう声を聞くことがある。なぜ、当事者は足が遠のいてしまうのか、そして、どういうお店であれば行きやすいと感じるのだろう。

地元の美容院で短い毛ばかりになった頭頂部を笑われた

大きな鏡の前に並べられた3つのピンク色の美容院の椅子と背景の壁に飾られた写真。

今でこそ、私は県外の美容院まで足を運び、自分を労わりながらヘアケアをすることで抜毛の頻度が減ったが、10代後半から20代の頃は美容院へ行くのが苦手だった。抜毛し、短い毛ばかりになってしまった頭頂部の状態を指摘されたことから、頭部を見られるのが恥ずかしくなってしまったからだ。

それは19歳くらいの頃、近所の美容院に行った時のことだった。担当してくれた女性の美容師から「頭のてっぺんにだけ短い毛が多いね」と言われた。髪のプロなら、抜毛と言う悩みを話しても受け入れてくれるかもしれない。そう思った私は、「実は髪を抜く癖があって…」と勇気を出して打ち明けた。

すると、美容師は「え?自分で髪を抜くの?(笑)」と引きながら笑った。その話題は他の美容師にも共有され、後からやってきたアシスタントにも「髪を自分で抜いちゃうらしいですね」と笑いながら聞かれた。

そうした周囲の反応を受けて、私はやっぱり自分がやっている抜毛という行為は客観的に見れば、異常なことなんだと改めてショックを受けた。そして、こんな恥ずかしい思いをするのなら、美容院に行きたくないと思い、足が遠のいた。

自分の髪を褒めてくれる美容師に出会って…

机の上に並べられたヘアドライヤー、ヘアアイロン、ブラシ、コーム、ヘアクリップ、そして観葉植物。

その後、3年くらい美容院へ行けなかった。カラーは市販品で済ませ、毛量が気になる時には、自宅にあったすきばさみで髪をすいた。素人だから当然、へたくそで髪はスカスカになる。それでも、美容院に行くよりはましだと思った。

3年ほど経って、ようやく母が昔から行っている顔なじみの美容院になら行けるようになった。そこの美容師さんは70代のおばあさんで、小学生の頃から私も知っている人だった。頭頂部の状態など、何も指摘されなかったため、安心してカットやカラーをお願いできたのだ。

そんな風に美容院へ行くことに慣れてきた時、より抜毛しにくくなるように、ずっとやってみたかったハイライトカラーに挑戦したいと思った。とても勇気がいったけれど、県外にある、最初から最後まで同じ担当者がカットやヘアカラーをしてくれる美容院に予約を入れた。

そういう仕組みなら、抜毛のことがバレても、その人ひとりだけだろうし、アシスタントに共有されて笑われることもないだろうと思ったからだ。

だが、予想に反して、担当してくれたTさんは、とても優しかった。頭頂部に短い毛があることなど一切触れず、「ブリーチが痛くないのは、ひとつの才能ですよ」や「一緒にいい髪を作っていきましょう」と褒めたり、励ましたりしてくれた。

これまでかけられたことがなかったプラスの言葉をたくさんもらい、私は自分の髪を、頭を少しだけ好きになれた。抜毛症であることはまだ怖く明かせていないが、優しい無視をしながら、客側が最大限満足できるように工夫してくれる美容師と出会え、美容院へ行く恐怖心は、すごく和らいだ。

もし、過去の私のように美容院へ行くことに恐怖を感じている当事者がいるのなら、来店後に悲しい気持ちにならなくてもいいお店を見つけてほしい。個人的に、ひとりの担当者が最後まで仕上げてくれるお店ならば、コンプレックスや悩みを話す時に抜毛症のことも打ち明けやすく、満足できる仕上がりにしてもらいやすいのではないかと思う。

また、世の美容師には抜毛症という病気があることを知ってほしい。そうした情報を得ているだけでも、接客に違いが現れると思うからだ。

悩みの種でもある“髪”を大切に扱ってくれる美容師と出会えたら、自分を労わることにも繋がり、抜毛対策にもなっていくはず。美容院という視点からも、自分が苦しまなくてもいい抜毛症との向き合い方を見つけていってほしい。

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ABOUT ME
古川 諭香
猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。