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インナーチャイルドは3人いた!“あの頃の私”に出会って見つけた「自分の本音」

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2024.5.1

少しスピリチュアルな印象を与える、「インナーチャイルド」という存在。その子を自分の中に見つけた時、人にはどんな変化が起きるのだろうか。今回はカウンセリングを受ける中で私が感じた、インナーチャイルドを見つけることの意味を紹介したい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

3人もの「インナーチャイルド」が自分の中にいた

ネットなどには、インナーチャイルドがひとりだと記されていることも多い。私はそもそも、どこかスピリチュアルな印象を与える「インナーチャイルド」を信じておらず、自分を癒す系の書籍を読んでも心が和らぐ感覚を味わったことがなかった。

だが、複雑性PTSDだと診断され、1~2週間に1回のカウンセリングを受ける中で自分の中にもインナーチャイルドがいることに気づかされた。

最初に見つけることができたのは、小学生の頃の私だった。カウンセラーの指示に従い、目を閉じていると、リビングで笑いながら踊る自分の姿が見えた。笑顔なのに、心の中は悲しみでいっぱいな女の子。それは、問題がある家庭を自分の力で何とか明るくできないかと思い、道化を演じていたあの頃の私だった。

それからは当時の自分に戻って、あの頃、封印せざるを得なかった悲しみや苦しみ、孤独感をカウンセラーに吐き出す作業が何回も続いた。

すると、数ヶ月後、カウンセリング中にカーテンを閉めた真っ暗な部屋でベッドにもたれながら過ごす長髪の女の子が見えた。小さな私は手を伸ばし、その子を「助けたい」と訴える。けれど、手が届かず、助けることができない。そのもどかしさに泣きながら、気づいた。あの子は、一番苦しかった19歳の頃の自分だと。

振り返れば、その子の姿は今までに何度か頭の中に浮かんだことがあった。でも、それがインナーチャイルドであるとは思わなかったのだ。

自分の中に複数のインナーチャイルドがいることに混乱したが、カウンセラーから「インナーチャイルドは何人もいるんだよ。きっと他にもいるよ」と説明され、受け入れることができた。

インナーチャイルドが他のインナーチャイルドを助けたいと思っていることは、自分にとって大きな衝撃だった。自分が気づかないところで生まれているインナーチャイルド同士の関係性があるなんて…。改めて、心は複雑だと思った。

この出来事を機に出てきてくれたのが、よく頭の中に浮かんでいた姿をした、怒りの感情が強いインナーチャイルドの「憂」だった。

当時、私は自分では制御できない怒りに突如、襲われることがあり、何が原因なのか、どうやって心をなだめればいいのか分からなかった。普段は冷静なほうであるのに、そうなると心の舵が取れず、大切だと思っているパートナーにも苛立ってしまう。

私は怒りを言葉で表現することがにできないため、ひとりの時に泣きながら罵声を吐き出し、何とか心のバランスを保っていた。まっさらな心を汚していくようなその時間が、私はとても嫌いだった。

だが、「憂」がカウンセリング中に出てくるようになると、怒りで心が支配されて自分がどうにかなりそうな感覚になることが減っていった。

心の中に溜めすぎた両親への怒りや私を都合よく扱ってきた男性たち、助けを求めても私の命などどうでもいいかのようにあしらった周囲の大人たちへの恨みをカウンセラーが丁寧に聞き、一貫して「あなたは悪くなかった」と伝えてくれたから、抱えきれなかった感情が消化されていったのだ。

そのあたりから少し日常が楽になり、「憂」への気持ちが変わっていった。当初は、「この子がいるから、私の心は怒りで支配されて厄介だ」と思っていたが、周りに反抗して自分を守ろうと必死になって生きてきた「憂」がいたからこそ、私は生き抜いてこられたのだと思えるようになった。

今まで頑張ってくれてありがとう。あなたが反抗心を持っていてくれたから、私は自立できたよ。そう、「憂」に言えてからは、不思議と心が波立たなくなった。

また、その子がいたからこそ、3人目のインナーチャイルド「空」とも出会えた。「空」は心を空っぽにしようと頑張っていた、あの頃の自分だった。2階にある自室の手すりに身を乗り出し、生と死の境目で命の価値を考えていた、あの日々。死にたいと思いつつも死ぬ勇気が持てず、窓から見える綺麗な星を明日も見ようと自分を何度も励ました。

怒りが制御できない時と同じように、当時、私は気分が堕ちると表情を作ることすら面倒になり、廊下の壁に寄りかかり、動けないことが多々あった。孤独という言葉では表現できないほどの孤立感と、突如襲ってくる「車道に飛び出して死にたい」という感情に苦しめられていた。

だが、「空」と向き合ってからは、そうした日々を経験することが激減した。眠れない夜中に過呼吸になるまで泣き、近くの車道を通る車の音を聞いては「交通量が少ないから、いま飛び出ても死ねない」と考える日が減って、心は穏やかになった。今の私は偽物だと思うこともなくなっていった。

きっと、私の心には他にもまだたくさんのインナーチャイルドがいる。その中には、カウンセリング中に出てきてくれない子もいるのかもしれない。だが、見つけられても見つけられなくても、過去の自分が頑張って生きてくれたことを、ちゃんと認めてあげたい。

ひとつひとつの生きづらさの裏には、過去の自分が懸命にもがいた痕がある。そう気づくと、自分という人間を少しだけ愛せそうな気がする。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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