ポジティブ・ファシスト

金色の王冠のイラスト

皆さんの周りに、ものすごく前向きな方っていないでしょうか?

私は、その人たちを「ポジティブ・ファシスト」と呼んでいます。まずこれはなんぞやという話なのですが、完全な私の造語です。詳しくお話ししましょう。

ポジティブ・ファシスト

どうも、「塩素の匂いはノスタルジー」糸ちゃんです。

今回はポジティブ・ファシストについて語っていきます。まずこれはなんぞやという話なのですが、完全な私の造語です。意味としては、「前向き全体主義者・独裁者」といったところでしょうか。詳しく述べていきます。

まず、皆さんの周りにもいるか皆さん自身がそうかもしれませんが、ものすごく前向きな方っていないでしょうか?

例えばこちらが何か失敗をした、過ちを犯してしまったと打ち明けると「成長する良い機会になったね!」「それにはきっと意味があるんだよ!」と絶妙に焦点の合ってない怖い眼を輝かせながら言ってくるような人です。

ポジティブ・ファシストの中では、意味のない経験や時間というものは存在しません。私たちの身にふりかかる全ての事象は人生の前向きな展望に資するものであって、最終的に目指すべき自己に近づくためのプロセスだというのです。

果たして本当にそうでしょうか?

スポットライトの下にいるウサギ

重度の自閉症で作家の東田直樹さんはこんなことを言っています。

「人生には確かに無駄な時間・時期が存在します。それを認めようとしないだけです」

これを聞いたポジティブ・ファシストはすぐに激怒し反論しそうですが、私はこの意見には大いに賛成です。

例えば、やっているだけでみるみるIQが下がりそうなソーシャルゲームへの依存、本当にロクでもない恋人との交際、カスみたいな自己啓発・宗教セミナーへの傾倒。これらにかけた時間と労力は全くの無意味であるとは言い難いかもしれませんが、いくらなんでも「人生において大きな意味があった」と捉えるのは難しいのではないかと思います。

しかしポジティブ・ファシスト、別名「前向き病」の人たちはこれらの事実を決して認めようとはしません。そしてこれは、人生観に留まらず私たちの日常にもはびこっています。

例えばSNSでは自分の好きなモノ・コトを発信する人で溢れかえっていますよね。いわゆる推し活というやつです(合ってるのかな?)別にそのこと自体は何の問題もなくそれこそ好きにすればいいわけですが、そうした活動をしている人たちはしばしば排他的になります。

つまり、自分の推しに対して少しでも批判・懸念の表明をした「敵」を発見すると執拗に攻撃し、相手が改心するまでその手を緩めないのです。

これは政治的思想に関しても同様です。自分の信じているものを肯定する意見以外はノイズとみなし、心理的にも物理的にも視界に入れないための不断の努力を日々している点が特徴だと言えます。

野原を歩く狼の群れ

そうして自分の気に入らない存在を攻撃あるいはブロックすることを繰り返していくうちに、いつか周囲には自分と似たような考えをもった趣味嗜好・思想信条の人たちしか残らなくなります。

これを社会学では「サイバー・カスケード」と言うのですが、要は思想的に似たような人たちが集まった閉鎖的な空間では、言論や発言が集団のルールに従って弾圧・統制され再生産的に思想が先鋭化していくということです。ネトウヨや反ワクなどが良い例ですが、彼ら・彼女らは自分にとって心地の(都合の)良い情報や人間を取捨選択することで、どんどん視野を狭め考え方が過激化していきます。

そしてポジティブ・ファシストは、創作活動の場でも頻繁に出会うことが可能です。読者の方も経験があるかもしれませんが、明らかにカスとしかいいようのないクオリティの自作の詩・小説・イラストを一方的に押し付けてきて、感想を強要してくる自称アーティストは世間に溢れかえっています。

それで、自分の作品を他人に見せるのであれば必然的に批判・ダメ出しをされることを覚悟しなければならないのですが、ポジティブ・ファシストにとってそれは攻撃とみなされるのです。

「俺(私)が頑張って作ったものに文句をつけるなんてひどい奴だ!」と。

……うん、じゃあ見せるなよと言いたくなりますよね。大体、創作活動とは絶えず他人に批判とまではいかなくても改善点を客観的に教えてもらうことで、徐々にブラッシュアップしていくのが当然ではないかと私は思います。最初から傑作が書けるヤツなんていませんから(たまにいるけど)。

しかし、こうした何がしたいのかわからない自称アーティストたちは先述したSNSにおけるサイバー・カスケードの例に漏れず、自分の大事な大事な作品を批判しない優しい人たち(大体双方が自称アーティスト)とばかり付き合い、お互いの創作を褒め合うという気色の悪い集団生活を営むことで、安住の地を手に入れます。彼ら・彼女らが批判や攻撃と呼ぶところの建設的提言を受け入れていれば、今頃もっと良いものが作れていたかもしれないのに……。

神経細胞のイラスト

ここまで、ポジティブ・ファシストの持つ病理性について多角的に考察してきましたが、極端に書いただけで誰しもが持っている普遍的な傾向であるとも私は思っています。ただ、もしも何にでもいちいち意味がないと許せなかったり、イエスマンばかりと付き合うことを好む人はポジティブ・ファシストの素質が大いにあるということです。

あとこの造語は完全なオリジナルで版権?は発案者の私にあるわけですが、好きに使ってくれて構いません。いつの日か人々が「お前ソレ、ポジファシじゃね?」くらいのノリで使ってくれる程度人口に膾炙(かいしゃ)すれば望外の喜びです。

そんじゃまたね!

アピールしたい職歴・スキルだけで応募できる!
ABOUT ME
1994年生まれ。いじめや家庭内不和で精神障害(双極性障害Ⅱ型)を発症しながらも、福祉系の大学で4年間福祉について学び精神保健福祉士を取得。現在は大分県別府市にある訪問介護事業所で事務・広報の仕事をしている。 ライターとしての心がけは「しんどいことを楽しく伝える」こと。自身の体験を専門職と当事者両方の視点で語っていきたい。