ボクのLiving with HIV~3

緑の草原が広がる風景

保健所でHIV陽性告知を受けたボク。帰宅後、インターネットを駆使して情報を集めようとしましたがボクが欲しい情報は集まらず。その代わりにボクのHIV陽性ステータスを友人や元カレに開示しその日は寝てしまいました。

ボクのLiving with HIV~1
ボクのLiving with HIV~2

予約と受診の準備

翌日は勤務日でした。
ボクは、とにかく拠点病院を早く受診したいと言う思いがあり、その日のうちに初診の予約を早く入れたかった(この辺りはせっかちというボクの性分です)。「予約の電話を入れるなら昼休みだ!」と思い、朝からソワソワしていました。

拠点病院の電話番号を携帯電話に保存し、いつでもかけられるようにした状態で昼休みを迎え、誰にも見られない(と思っている)リハビリ室の片隅で、ドキドキしながら電話をし、翌々週の金曜日の午後に初診となりました。

今までボクは、その職場で『(病欠以外の)急な予定で有給を取る』ことをしてこなかったので、正直、何と言って上司に休みをもらおうか悩みましたが、結局、口頭で「スミマセン再来週の金曜の午後から急に予定ができまして…」みたいな感じで有給申請したと思います。幸いにも、上司には特に突っ込まれることなく、その場を乗り切りました(笑)

初診日と診察

翌々週。
どうやって病院まで行ったのか、どうやって受付をしたのか、医師との診察の前後のことは全く覚えていません。ボクを担当してくださった医師は、驚くほど落ち着いてボクに説明してくださいました。

感染経路は同性間の性行為によるものかと言う確認、HIVに感染していることに間違いはないこと、定期的に血液検査をし投薬の時期を決めること、月に一度は定期受診してほしいこと、今の生活を変える必要はないこと、理学療法士という仕事も今まで通りで良いということ、そんな事をお話していただきました。

検査や診察を一通り終え診察室を出たところで、看護師さんから次回以降の予約についてや急な体調不良の時の対応などの説明を受け、最後に「何か聞いておきたいことなどありますか?」と水を向けてくださり、〝受診〟と言う緊張感が一気に解け、それと同時に感情が溢れ出してしまいました。

仕事を変える必要はないとか、今まで通りの生活ができるとか、頭では分かっているのですが〝心〟の部分で不安な気持ちというものが抑えきれなくて、ボロ泣きしてしまったのです。

それを見かねた看護師さんが「カウンセリング受けられるけど、受けてみますか?」と声をかけて頂き、ボクは二つ返事でお願いすることにしました。

カウンセリングと定期受診の開始

この時ボクの心の中には色々な『???』があって

  • 病気の事を誰かに伝えたほうがいいのか?
  • 家族には説明したほうがいいのか?
  • 恋愛やセックスはどうすればいいのか?
  • 本当に医療従事者として働いていいのか?
  • 薬を飲み始める頃にはどの様な体調になっているのか?
  • 薬の副作用は?
  • 身体障害者手帳の申請は?

などなど、溢れる思いの処理が自分ではできなくなっていたので、とにかく自分の気持を落ち着かせながら、1つずつ整理するために『心理カウンセリングを受ける』と言う手段を選びました。

そして、月1回の定期受診(毎回、血液検査も行います)と月2回の心理カウンセリングを受けるという療養生活『ボクのLiving with HIV』が始まりました。

HIV診療の流れと血液検査

さて、HIV診療では何を行っていくのか。

主には血液検査がメインで、他に気になる症状などがある時は主治医に相談し、それらがHIV感染症に関係するものであるかそうでないかの判断をし、必要であれば追加の検査とお薬の処方をする、というのが一般的なスタイルです。

では、血液検査では何をみているのか、医学的な説明を少しさせてください。

『HIVと免疫には関係がある』と言うことは何となく皆さんも知っていると思います。この『免疫』と言う機能に関係する『免疫細胞』には様々な種類があります。

自然免疫と獲得免疫の仕組みを示す図

上の図のマクロファージ・NK細胞・好中球・キラーT細胞・B細胞・樹状細胞などが主に免疫に関係する細胞なのですが、HIVは『キラーT細胞』のうちの『CD4リンパ球』と言う免疫細胞に感染します。そのためCD4リンパ球(以下、CD4)が血液の中にどの程度、残っているのか、HIVが血漿の中にどの程度、存在しているのか、と言う数値がHIV感染症の治療の、重要な目安になります。

ウィルスと初診時の数値

もう少し『ウィルス』と言うモノについて詳しくお話しをします。

ウィルスというのは細胞の『核』と呼ばれる部分だけの生命体で、ウィルスは細胞の中に取り憑いてその細胞の中だけでしか生きることができません。そして取り憑いた細胞を栄養分にして、ウィルス自身の分身を作るわけですが、その分身を作るたびに取り憑いた細胞を壊していくのです。『細胞の中でしか生きられない』と言う意味でウィルスと言うのは非常に弱い存在とも言えるわけですが、いかんせんHIVは外敵から体を守るための免疫細胞であるCD4だけに取り憑きます。つまり、HIVに感染しCD4にHIVが取り憑いて増えていくと同時にCD4が壊されていくため、どんどん免疫機能が低下していくわけです。

ウイルスが細胞に侵入しようとするイラスト

話しを元に戻しますね。

ボクが初診で検査したときは、CD4が血液1μL中に600個程度だったと思います。ウィルス量は血漿1mL中に10の8乗個のウィルスが存在しているような状態でした。

(μL=1000000分の1L mL=1000分の1L)

CD4の変動と服薬開始

CD4というのは、もともと持っている細胞数に個人差があると言われていて、正常値は700~1300/μLと言われています(これは憶測ですが、ボクのCD4は元々、少なめだったのではないかと思います)。

当時の抗HIV治療ガイドラインでは『CD4が200を切ったら投薬開始の目安』となっていたので、毎月の受診と検査、そして心理カウンセリングを受けながらその日を待つことになりました。もう一つ付け加えるなら、当時の法律では、CD4が200に近づかないと(つまり投薬が始まるタイミングにならないと)身体障害者手帳が申請できませんでした。

CD4というのは様々な要因に反応するとても敏感な細胞で、その日の体調やストレスなどの精神的なものからもかなり影響を受けるため、血液を採取した時の状況で値が大きく変わることがあります。しかし長いスパンで見ていくと、ジワリジワリとCD4が下がっていくのが分かりました。

ちなみにCD4が200を下回ると、健康な人であればかかることのない様々な病気(日和見感染症)になりやすく、特に下の表にあるような病気にかかった場合に『エイズ(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome)』と言う診断になります(下図参照)。

エイズ指標疾患のリスト
厚生労働省HP 「9後天性免疫不全症候群」より抜粋、作成

そしてボクは、服薬を始めるまでに、様々な体調の変化を経験することになります。

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ABOUT ME
勝水 健吾
1975年岐阜県生まれ。長く理学療法士として医療機関に勤務。働きながら社会福祉士免許取得後、大学院修士課程を修了。リハビリテーション療法学修士。その後、産業カウンセラーの資格を取得。現在はフリーの心理カウンセラーとして活動中。セクシャルマイノリティ(ゲイ)であり身体障害者(免疫機能障害)であり精神障害者(双極性障害)である。