ADHDの私が仕事の優先順位について勘違いしていたこと

私は優先順位をつけることが苦手です。

イメージとしては、テーブルの上に物がごちゃごちゃと乗っている時点で、どれから片付ければいいのかわからなくなる感じです。「どっちにしよう」と迷っているうちに時間が過ぎてしまうことがよくありました。

「優先順位をつけるのが苦手」というのは、ADHDの特性の一つだと言われています。おそらく、注意力が散漫になりやすいことから、大事なことに集中できなくなってしまうのでしょう。

今回は、ADHDの私が優先順位について考えさせられた職場のできごとについてです。

優先順位をつけるのが苦手な私の経験

図書館の中で本を探している人々を描いたイラスト。仕事の優先順位についての混乱を表現。

以前、とても忙しい小売業の店舗で販売員として働いていたことがあります。

朝お店に着くと本部からファックスが届いていて、バックヤードには売り場に出す商品が山積み、棚を見ると欠品している商品がチラホラある状態。営業時間になると売り場には店員を探すお客さんがいて、レジが混んできて放送で応援を頼まれて、職場の携帯が鳴りっぱなし。こんな状況になることがよくありました。

その職場で、私は毎日あっぷあっぷしていました。当時、上司からもらったアドバイスは「優先順位をつけなさい」ということ。

私はそのアドバイス通りに毎朝早めに出勤して、やることリストを作っていました。朝一で今ある仕事をリストアップして、その全てに番号を割り振っていきました。

ただ、そのやることリストを作っていても、一つずつ減っていくことにはなりませんでした。お客さんから話しかけられたり、電話に出たり、レジ打ちをしたりしているうちに時間が過ぎていき、結局、リストにあるものは終わらないことがほとんどでした。

私のリストは日に日に長くなっていき「どんどん仕事が増えていく」と焦っていました。

同期から学んだ「優先順位のつけ方」の極意

困っていたとき、私は同期に「毎日仕事が終わらないんだけれど、どうしている?」と質問しました。同期はあっけらかんと答えました。

「そんなの簡単だよ。今日やるのは、上から3つだけにすればいいんだ。」

実際、その同期は言った通りの働き方をしていました。本社から来た書類を放置して怒られたり、電話に出ずに怒られたり、色々な人から注意をされていたものの本人は笑顔でみんなに謝っていました。

私はその同期を見ていると「心臓に毛が生えているってこういうこと…?」と感じました。あまりにも自分とちがいすぎるので驚きました。

ただ、後になってから考えると「仕事は優先順位の高い3つだけに集中すればいい」というアドバイスは、かなり当たっていたなと感じます。

同期は色々な人からの指示を完璧にこなすことはしませんでしたが、周囲との関係性はよかったです。接客にクレームが入ることもほとんどなく、順調に出世していったことを考えると、大事なポイントを押さえていたのだろうなぁと思います。

優先順位をつけることの本当の意味

当時の私は「優先順位をつける」ことは仕事に取り組む順番を工夫することだと勘違いしていました。その上で、一度決めた順番を守れていませんでした。

実際は、「優先順位をつける」のは仕事に番号を割り振ることだけではなく、エネルギーや時間の配分を決めることだったのだと感じています。使える資源は有限なので、大事な仕事に集中する必要があります。

もしかしたら、仕事の処理スピードが速い人や、たくさんの仕事をこなせる人は私と同じような悩みがあまりないかもしれません。

しかし、忙しい職場にいたり、ある程度仕事のスピードがゆっくりだったりする場合は、どの仕事をするのか選択する必要があります。その現状を受け入れた上で、優先順位の高い仕事は必ず押さえていればよかったのだろうと思います。

自分の能力を理解することの重要性

私は自分で「優先順位をつけるのが苦手」と思っていましたが、少し解像度を上げてみると「優先順位をつけた上で、順位の低いものを切り捨てて、高いものに集中すること」ができていなかったのだなと思います。

もっと言えば、自分が一日にできる仕事量をわかっていなかったり、この仕事はどのくらい時間がかかるかの見積もりが不正確だったり、「今日の仕事はどうなりそうか」の予想を立てられていなかったりしたはずです。

正しく状況を把握できていて、自分の能力の限界を理解できていれば、毎日のようにあり得ない目標を立てて失敗することはなかったはず。見通しが甘いというか、段取りができていないというか。色々な点において未熟でした。

視点を変えることで見えてくる解決策

To Do リストのチェックボックスと番号が付いたリストを示すイラスト。ADHDの仕事の優先順位の混乱を象徴。

今回は私自身の失敗談を例に出しましたが、「優先順位をつけるのが苦手」で終わらせてしまっていた頃は、課題が何なのか見えてきませんでした。

同期の「優先順位の高い3つに集中する」というアドバイスはかなり的を射ていましたが、当時の私は理解できませんでした。

たぶん、私と同じように「仕事が終わらない」とか「優先順位をつけるのが苦手」と言っている人でも、よく見ていくと課題がちがうこともあるはずです。

たとえば、仕事のスピードがゆっくりで終わらない人と、断れない性格で他の人の仕事を引き受けてしまう人では対処法が変わります。状況を把握することが苦手で、優先順位を間違えてしまうこともあり得ます。

より詳しく分析して、解像度を上げていくと見えてくるものが変わります。うまくいかないときに、近づいて細かい部分まで見たり、要素を分解してみたり、遠くから全体を眺めるようにして見てみたり。視点によって、見えるものは変わっていきます。

後から私が反省する点としては、「これしかない!と思い込んで視野が狭くなったときに、別の見方をしてみればよかったなぁ」ということと、「他の人のアドバイスをすぐに却下せずによく聞いてみればよかった」ということです。ここまでわかっていても、当時の私にそれができたのかはわかりませんが。

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ABOUT ME
森本 しおり
1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。 就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。