PARA CHANNEL Cage

自分ではない誰かのことを深く考える。ユニバーサルワーク研修が導く、障害者の働きやすさとは?

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2021.5.27

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする企業インタビュー。今回は、精神・発達障害のある方と一緒に働くことを起点に、すべての人に共通するコミュニケーションやマナーを学ぶ「ユニバーサルワーク研修」について、この研修の開発に携わり、講師も務める株式会社ミライロの原口さんにお話を伺いました。

執筆:株式会社ミライロ

ユニバーサルワーク研修とは?

株式会社ミライロは、2010年6月に設立された、バリアバリューの視点からユニバーサルデザインを提供する企業です(創業は2009年5月)。

障害者や高齢者、LGBTといった自分とは違う視点に立ち、行動するための研修である「ユニバーサルマナー検定」などが主なソリューションとして挙げられます。



ミライロが提供するサービスのひとつである「ユニバーサルワーク研修」は、「ユニバーサルマナー検定」で届けられるメッセージを軸に、精神・発達障害のある方と一緒に働く上で大切なことは何か、理解しておいたほうがいいことは何かを学ぶことができます。パーソルグループの特例子会社で、精神・発達障害者の雇用が多い、パーソルチャレンジと共同で開発したコンテンツです。


2021年3月に障害者雇用の法定雇用率が2.3%に引き上げられました。障害のある方とともに働くことは、多くの企業にとって当たり前の時代となってきています。しかし、企業で働いている人の中には、障害のある方とどのように関わればいいのか悩ましい、配慮項目などが分からないという声があります。その中でも、精神・発達障害のある方と向き合う部分への不安が強いことが見受けられました。



そこで、精神・発達障害のある方と働くことを題材とし、障害の理解やコミュニケーションのあり方を実践的に学ぶ機会を作ることができればと「ユニバーサルワーク研修」を開発しました。しかし、この研修は障害名から単にその人の障害を推察するようなものではなく、ひとりひとりと向き合っていただきたいという想いが根幹にあるので、知識偏重の学びではないことを知っておいていただきたいです。


「ユニバーサルマナー検定」で大切にされている「自分ではない誰かについて考える」という観点。これは知識や情報をインプットするだけではなく、他の誰かの目線に立って自分の行動を考えるということです。

この考え方に基づいて開発された「ユニバーサルワーク研修」は、職場における障害理解ではなく、自分の行動を見直す時間といったほうがいいかもしれません。


精神・発達障害のある方の場合、職場でのコミュニケーションが課題となりやすいです。会話の中でふいにその方を傷つけてしまったり、居心地を悪くさせてしまったりという可能性があります。そこで普段のコミュニケーションの中で、否定ではなく肯定から入ろうということを伝えています。職場に安心感がなければ、相談や自己開示はできません。勇気がいることです。ケースワークを通じて、実際の現場に活かせる形で研修を進めています。


この考え方は、精神・発達障害のある方に限らず、職場で働くすべての人にとって共通するものです。障害というテーマを起点に、広く全般を見渡していくという視点が、障害者雇用だけでなく多様な人材を活かすことにつながるのかもしれません。


この学びは、例えば新卒の新入社員にも活かせます。働く上で不安が多い方に対して、まずは相手を受け入れて、そして何でも話せる、相談できる空気感を作るためにどうすれば良いか。いろいろな背景を持つ方が身近にいて、互いに心地よく働くために、どのような関わりをもてば良いか。そんなことを考えるきっかけになればいいですね。



企業で働く障害者にも求められるユニバーサルマナー

ミライロが提供するソリューションには、障害のある当事者の声が多く含まれていることが特徴的です。ミライロ代表の垣内さんをはじめ、今回お話を伺った原口さんも障害のある当事者です。

原口さんは生まれつきの全盲であり、視覚に障害があります。小学校から高校まで盲学校に通い、大学へ進学した後、新卒でミライロに入社しました。しかし入社してすぐは失敗が多く、ストレスフルな時間を過ごしていました。


入社してすぐは「何でもできます」「何でもやります」というスタンスだったんです。障害が原因であっても、できないことや苦手なことがあるだけでマイナスなイメージを与えてしまうのではないかと不安に感じていました。でも、何でもできると公言してしまっていたことで、会社としても「その仕事はあなたには無理だよ」と言いづらくなってしまっていました。結果として仕事ができない・任せられないという悪循環に陥っていました。



悪循環を抜け出したのは、ふとしたきっかけでした。PDFデータってあるじゃないですか?あれはテキストではなく、画像なんです。障害への配慮としてスクリーンリーダーという文字読み上げツールを使っていたんですが、そのツールだとPDFデータが読み取れなかったのです。読めないことを伝えたら、みんな驚いて。そこから、様々な困りごとの共有や解決方法の相談ができて、一気に働きやすくなりました。自分が得意なこと、苦手なことを正直に伝えておくというのは、障害者が働く上で重要であることに気付く機会になりました。


素直に話す、分からないことがあったら聞く、うまくやっていけるように対話するといったことは「ユニバーサルマナー検定」の考え方にも近しく、また「ユニバーサルワーク研修」では一緒に働く側の障害者への関わり方として学ぶものです。

また一方で、障害のある当事者側も、ユニバーサルマナーにある「自分ではない誰か」について考えることが、働きやすさや仕事での成果につながるのではないでしょうか。


当たり前の話ですが、コミュニケーションはどちらか一方だけが頑張っても、うまく関わり合うことができません。雇われる側の立場である障害者も、積極的に情報発信をする必要があります。仕事はチームで協力して行うものなので、強みも弱みも正直に伝えることが大事です。伝えることでお互いがその課題を解決するためのアイデアを考え始めます。なかなか言いづらいこともあるかもしれませんが、言えるようになることが働くための準備なのかもしれませんね。


原口さんからいただいた「強みも弱みも正直に伝えること」は障害の有無に限らず、すべての働く人たちにとって、働きやすさにつながる大切なアクションかもしれません。

障害を価値として捉えるバリアバリューの視点から、誰もが快適に過ごせる社会を提案しています。デジタル障害者手帳の「ミライロID」や「ユニバーサルマナー」など、様々な取り組みを展開中。
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