全盲の大学生だった私が就職活動を無事に終えて感じていること
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2023.4.22
2022年3月に始めた就職活動ですが、2023年3月31日をもって無事に終えることができました。就活を振り返ってみると、本当にたくさんの経験をさせていただいたと思います。
執筆:藤岡 郁弥
これまで、パラちゃんねるカフェでは全盲の大学生の私が就活をしていて大変だと感じることについて書かせていただきました。
2022年3月に始めた就職活動ですが、2023年3月31日をもって無事に終えることができました。
私は5月から、社会福祉法人の事務員として働くことが決定しました。これまで視覚障害者の雇用実績がない法人なので、具体的な業務内容についてはまだ不明確な部分はありますが、主に電話の取次や、事務作業を行う予定です。
就活を振り返ってみると、本当にたくさんの経験をさせていただいたと思います。社会人として求められる常識の一部を理解することができましたが、社会情勢に左右されることを実感したり、自分の中にこれまでになかったような競争心が芽生えたりする一面もありました。それが就活だということもできます。
就活でうまくいったことは、offerboxというスカウト型就活サイトでの活動に切り替えたことで、さまざまな業種の会社に出会うことができたことです。
就活を始めた当初は、「障害者枠で働きたい」という思いから、障害者専門の求人サイトしか使っておらず、かつ障害のない学生がどのように就活をしているのか全く関心を持っていませんでした。
しかし、先輩がofferboxを教えてくださったことで、一般枠での就活に出会うことができ、そしてスカウトを送っていただいた企業とは必ず面接でき、選考に進めたのは大きな一歩だと思っています。
一方で苦戦したことは、私自身が内定をいただいていない中、周りは4月からの進路がどんどん決まっていくという状況で、自分のメンタルをどのように保っていくかということでした。
自分の中で焦りの気持ちばかりが出すぎて眠れない時期もありました。周りの人たちが「絶対に決まるよ!」と励ましてくれても受け入れられず、イライラした時期もありました。
どれだけ就活が忙しいときでも隙間時間は必ずあるので、それを楽しい時間にしようと気持ちを切り替えました。そして、人と接するときは笑顔でいるように意識すると決断したときに、自然と心が楽になりました。楽しい時間を作るために音楽を聴いたり、行きつけのお店に顔を出してゆっくりしたり。
また、人と接するときに笑顔でいるために、あえてボランティア活動先に頻繁に出向いて、なるべく子どもたちや地域の方々と関わり、心の穏やかさを保とうと心掛けました。
これまでお話してきたことは、いわゆる健常者の就活でも起こり得ることかもしれません。
視覚障害があるとつまづきやすいと感じることは、理想と現実とのギャップに遭遇したときに、自分を見失いがちになることです。「将来、介護職の仕事をしたい」という目標があったとしても、視覚障害があると、現実的にはなかなか厳しいことが想定されます。そのギャップにつまずき、「自分は何がしたいのだろう」と悩みに悩んで、本来の自分を見失う可能性が高くなります。
障害があってもなくても自分の夢を叶えられるようにしていくことは、とっても重要なことです。そのためにもいろいろな人が働くことのできる場の整備が必要になってくるのではないでしょうか。
今後就活をしていく皆さんに伝えたいことはたくさん思いつきますが、今回は二つに絞ってお伝えします。
一つ目は、人との接点を大事にしてほしいということです。実は今回の就職先も出会いがきっかけで決まりました。簡単に言うと、ボランティア先のセンター長に、働き口がないか相談したところ、法人本部と掛け合ってくださり、決まったという次第です。
ただ、「就活で余裕がないのに人との接点を大事にするのは難しい」と思われる方もいるかもしれません。
そこで、二つ目に伝えたいことは、笑顔をいつも以上に意識することです。物事は一つの現象として生じており、それはすべてと通ずるといわれています。そして、その現象というのは自分自身の日ごろの行いや心の状態から変えることができるのです。
いつも笑顔でいることで、物事の流れがよくなったり、ふとしたところから縁あって働くことになったり、頼れる仲間が増えてきたりします。少し神秘的かもしれませんが、実践してみると、意外と理にかなっているものです。
これから社会人としてどんなことが待っているのか不安と期待でいっぱいですが、一歩ずつ着実に進んでいきたいです。