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ちょっと早いですが、この春に新社会人になる視覚障碍のある学生へのメッセージ

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2024.2.22

私は先天性の視覚障碍者で弱視と全盲を経験し、現在に至っています。それほど胸を張ってお話するような人生の歩みではありませんが、この春に晴れて新社会人になられる視覚障碍者の学生の皆様に向けてメッセージを送らせていただきます。

執筆:小川 誠

私は先天性の視覚障碍者で弱視と全盲を経験し、現在に至っています。

私は社会人になったときは、既に全盲になっていました。様々な経験をする中で、嫌なこともありましたが、たくさんの親切にしていただくこともあり、ここまで人生を歩むことが出来ております。

それほど胸を張ってお話するような人生の歩みではありませんが、この春に晴れて新社会人になられる視覚障碍者の学生の皆様に向けてメッセージを送らせていただきます。寒い日が続く中で、時期的には少し早いかもしれませんが、前向きになれるための心の準備は早いほうがいいと思いましたので、文章をまとめました。

この春に新社会人になられる視覚障碍者の学生は、社会人生活への期待と不安が入り乱れているかと思います。中には期待よりも不安の方が大きいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、私が卒業するときにいただいた恩師からの言葉、社会人になってからの心の変遷など、視覚障碍者が社会人として生きていくことについて私自身の経験を踏まえて書いていきたいと思います。少しでも、参考になれば幸いです。

私が卒業するときにいただいた恩師からの言葉

私は、盲学校の理療科を卒業して社会人になりました。理療科では、あんま・マッサージ・指圧、鍼、灸の勉強をしておりました。

学校を卒業するときに、恩師からいただいた言葉を皆様にもご紹介したいと思います。

その言葉は「社会の人たちは思ったより親切だなと思うことがたくさんあるよ。だから、自分が困ったときは積極的に援助依頼しなさい」というものでした。

私はこの言葉をかけていただいたおかげで、とても安心したことを覚えています。確かにそのときから社会人として歩んできて、その言葉の通りだと感じたことが何度もあります。

自ら援助の手を差し伸べて下さる方も多くいらっしゃいますが、こちらから援助依頼をしても、ほとんどの方たちが親切な対応をして下さいます。そのときは、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

社会人になってからの心の変遷

社会人になってから、様々な方たちとの出会いや仕事環境の変化がありました。自分自身の心の持ち方の変遷を考えてみますと、人としっかり向き合って接することが大事だということを感じます。

当たり前のフレーズのように聞こえますが、そう簡単なことではありません。気づくとしっかり向き合った対応ができていなかったと反省することが多くあります。特に、自分が伝えた意思と相手の反応とがかみ合わなかったとき、そのような感情によくなります。

しかし、相手と話がかみ合わないことに対してこだわりすぎると、前に進む気持ちも弱くなってしまうかもしれません。

そのような場合は、相談できる人を作っておくことが大事ではないかと思います。在学中にお世話になった先生や友達と末永く関係を継続していければ悩み事の解決がうまくいくことが多くなると思います。

あとは、視覚障害関係のコミュニティに積極的に参加して、様々な人間関係の事を知り、自分自身でどう生かせるかについて考えることも良いかと思います。

視覚障碍者が社会人として生きていくには

テクノロジーの発展によって、視覚障碍者も多くの事ができるようになってきています。しかし、視覚障碍者の中でも人によって能力は様々で、できる事とできない事は十人十色です。

私は、自分でできる事をしっかり行うことが大切だと思っています。例えば、勤務先で新しい仕事を頼まれたとき、その仕事は自分の能力の範囲でどこまでできそうかを考えます。

できる事とできない事の区別をしたら、相手に相談しながら自分のできる範囲の仕事を行うようにすると良いかと思います。他の人ができるかどうかではなく、あくまでも自分のできることに集中して、それを積み重ねていくことが重要です。

仕事以外の日常生活でも、自分ができることは可能な範囲で自分で行うようにして、困難な場合は福祉サービスを利用するなど、積極的に動いていけると良いと思います。

まとめ

ここまでのお話を読んでいただいて、不安感が増してきてしまったという方もおられるかもしれませんが、社会という海原に出たときに「心配してたほど悪くない」という感覚を覚えるときが来ると思います。

その感覚を自分が行動する上でのモチベーションアップのきっかけにすると良い方向に進んで行けるのではないかと思います。

視覚障碍者として、自分自身の中でできることできないことをしっかり伝えていって下さい。

人は、一人では生きて行けません。健常者でも、誰かに助けられて生きているのです。

様々な人たちに支えられていることを感じて、感謝の気持ちを忘れず歩んで行って下さい。

この度、社会に旅立たれる視覚障碍者の皆様にとって、これから先の社会人生活が心身ともに健康かつ、充実したものであるように心よりお祈りいたします。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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