フリーランスに転身して2年、ゆるく働く全盲の私は今……
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2024.2.10
2年前、全盲の私は8年間勤めた会社を思い切って辞めました。自分の本当にやりたいことを追求したい、と考えたからです。今はフリーランスで、ちょこちょこですが仕事をこなしています。難しい部分もあるわけですが、この生き方はうまくいっているのか。どんな気持ちを抱いているのか。経済的に問題はないのか。正直に綴ってみます。
執筆:山田 菜深子
2年前、全盲の私は8年間勤めた会社を思い切って辞めました。自分の本当にやりたいことを追求したい、と考えたからです。
今はフリーランスで、ちょこちょこですが仕事をこなしています。
難しい部分もあるわけですが、この生き方はうまくいっているのか。どんな気持ちを抱いているのか。経済的に問題はないのか。正直に綴ってみます。
笑顔で過ごせる
会社員からフリーランスに転身して、どう感じているのか。以前のコラムで書いたことがあるのですが、現在もその頃と同じようにポジティブな気持ちで過ごしています。思い切り自由を謳歌する日々です。
マイペースに働けるようになり、落ち込むこともストレスが溜まることもなくなり、夫からは「笑顔が増えた」と言われています。
毎週日曜日にはアニメ「サザエさん」を見ているのですが、会社員時代よりも穏やかな気分でそのエンディングテーマを聞けるようになった。これも大きな変化です。
規則正しい生活をすることや、人との関わりをなくさないことなども意識していて、心も体も元気いっぱいです。
今の仕事は主に2つ。文章を書くこと、点字を教えることです。どちらも本当にやりたいことなので充実感があります。できる限り長く続けたいと思っています。
夢をかなえるための充電期間
フリーランスに転身と言っても、正直なところ胸を張れるほど働いているわけではありません。かなりのんびりです。新しい仕事を獲得するのはやっぱり簡単ではなかった。このままでいいのだろうかと、最初は焦りました。
でもだんだんと考え方が変わってきて、今は「もしかしたらこれぐらいがちょうどいいんじゃないか」と感じられるようになっています。というのも、実は密かに抱いている大きな夢があるんです。それを叶えるための勉強や情報収集にたっぷり時間が使える。ありがたいことです。
私にとって今は、大切な充電期間なのかもしれません。と言いつつ実現させる自信なんてまるでないので「夢のために頑張ってます!」と声高にアピールするのは控えたいところなのですが……。
会社を辞める前に収入源確保
さて、この状況を話すと、「え、そんなんで食べていけるの?」と驚かれることがあります。せっかくの機会なのでそこのところも思い切って書いてみますね。
そうなんです。バリバリ働いているわけではないので、確かに会社員時代と比べると仕事の収入は大幅に減りました。それだけで食べていくのは難しいというのが現状です。
収入は月によって波があるので安定もしていません。毎月お給料日に喜びの声を上げていたあの頃が懐かしいです。
とはいえそれは、会社を辞めると決めたときから想定していたこと。後悔することのないように、退職前にしっかり準備を整えました。
どんな準備を整えたかというと、以前からやっていた株式投資の見直しです。将来に向けて真剣に取り組み始め、配当金である程度の収入が確保できる状態にしたんです。仮に全く働けないという事態が発生したとしても、これがあるので慌てる必要はありません。
そのおかげで、今は不安を感じることなく生活できています。夫と2人で暮らしていて、財布は別にしているのですが、退職後も自分の生活費は自分自身で支払っています。
もちろん仕事でもっと稼ぐということも考えてはいますが、そのために無理をするようなことは基本的にしたくない。何よりやりがいを重視したいんです。
会社員時代の経験は有意義
会社員とフリーランスという2つの働き方を経験してみると、フリーランスのほうが私には合っているように感じられます。それでも会社員として過ごした時間にも、大きな意味がありました。
まだ大人になり切れていなかった20代の私が、ほんの少しではありますが会社という世界に触れたことで、あれこれ悩みながらも成長できた。それまでとは違う角度から自分を見つめることができた。
この経験があったからこそ今の暮らしがあります。そしてこの経験が夢の実現にもつながっていくはずなんです。
自分のこれまでの選択はきっと、どれも正解だった。そう信じようと思っています。今後もこんな感じでゆるく働きながら、こっそり夢を追いかけるつもりです。