できることが増えた!36歳全盲の私がガラケー・スマホと歩んだ日々
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2023.12.16
1987年生まれ、先天性全盲。そんな私は子どもの頃に携帯電話を手に入れ、大人になってからスマートフォンを使い始めました。ガラケーやスマホのおかげで、私の可能性はどんどん広がっています。ということで、私のガラケー・スマホ遍歴を振り返ってみます。
執筆:山田 菜深子
1987年生まれ、先天性全盲。そんな私は子どもの頃に携帯電話を手に入れ、大人になってからスマートフォンを使い始めました。
それは充実した日々でした。ぼやいたり、感動したり、苦労したり。さまざまな思い出があります。
「見えないと操作に苦労しそう」と思われるかもしれません。たしかに20年以上前にはじめて買ってもらったガラケーは1人で使える機能が少なくてもどかしかったですが、少しずつ携帯電話は進化してきています。ガラケーやスマホのおかげで、私の可能性はどんどん広がっています。
ということで、私のガラケー・スマホ遍歴を振り返ってみます。
制限付きから読み上げ機能付きへ
初めてガラケーを買ってもらったのは、中学1年生のときでした。ずっと欲しかったんです。中1で携帯デビューというと当時は早いほうでしたが、私が盲学校で寄宿舎生活をしていたということもあってか、両親は快く持たせてくれました。
おもちゃのようであり、それでいて私をどこへでも飛び立たせてくれる翼のようでもある、何とも魅力的なアイテム。すっかり夢中になってしまいました。
ただ、この携帯には大きな問題がありました。画面に何が表示されているのか、目で見なければわからない。電話の発信や応答は私1人でもできましたが、それ以外は誰かに手伝ってもらうしかありませんでした。
メールがしたいのに、好きな着メロをダウンロードしたいのに、自由にこなせない。もどかしい限りです。
この携帯、なんで喋ってくれないんだろう。そうぼやくばかりでした。
それから数年経った頃のこと。私は喜びの声を上げました。読み上げ機能付きの携帯が登場したからです。早速購入しました。
メールも、着メロのダウンロードも、音声を聞きながら自分の力でできるようになった。このときの感動は忘れられません。
「メル友」と呼べる仲間を作ってやり取りしたり、大好きなラジオ番組にメッセージを投稿したり。コミュニケーションの幅が大きく広がっていきました。
それからさらに数年経ち、今度はスマホが登場。私の心は躍りました。画面読み上げ機能が搭載されているのはもちろん、視覚障害者に合ったタッチパネルの操作方法もちゃんと用意されているというではありませんか。これは気になる。ガラケー以上に私を楽しませてくれるはず、そう確信しました。
そこで、「まずはちょっと見るだけ」というつもりでお店に入り、スマホを手に取ってみたんです。すると、「今すぐ持って帰りたい!」という気持ちが膨らんできた。結局思い切って、その場で購入しちゃったんですね。ほぼ衝動買い。
こうして2014年、26歳のとき、スマホデビューを果たしたのでした。
使い始めてみるとなんとかなりました
こんな形でデビューしたものだから、最初はちょっと戸惑いました。タッチパネルに触れた経験などほとんどなかったんです。1度だけ視覚障害者向けのiPad講習会に参加して、フリックやダブルタップといったジェスチャーを教わったことはあるのですが、十分な練習はできていませんでした。
うわあ、画面ツルツル!どうしよう!やっぱりボタンが恋しいよー!そんな状態からのスタートとなりました。
それでも、家族に助けてもらいながら使い始めてみるとなんとかなるもので、操作には比較的短時間で慣れることができました。わからないことが出てきたときにはネットや本で調べれば情報はたくさん得られますし、大きくつまずくことはなかったんです。
文字を入力するときにはボタンがないとやっぱり不便だと私は感じましたが、ワイヤレスキーボードを使うことでその問題も解決しました。
今では快適なスマホライフを送っています。ついついスマホを見すぎて困るくらいです。
できることや仲間が増えた
スマホを使い始めてよかったことが2つあります。
1つは、「1人でできることが増えた」ということ。私の目の代わりを果たしてくれるアプリがたくさんあるんです。特にカメラで写した文字を読み上げてくれるアプリ、これには大いに支えられています。
そしてもう1つは、「仲間が増えた」ということ。私がそれまで使っていた携帯電話は高齢者や視覚障害者向けのものでしたが、スマホの場合はそうではなく、どれを選んでも読み上げ機能が搭載されているんです。
視覚障害者ではない同年代の友人と、「スマホ一緒だね」という話ができるようになった。居心地のよさが感じられます。
今後も、スマホはさらに進化していくはず。次はどんなことができるようになるのか、本当に楽しみです。
スマホデビューはハードルが高いと感じる方もいらっしゃいますが、そういう方であっても便利なアプリなどを通して生活の質を上げられるよう、環境を整えていきたいものですね。