視覚障がい者が「テレワーク」を本音で語る!
~メリット・デメリットは?事前確認したいことは?
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2023.5.1
こんにちは、ライターの榎戸です。
先日、採用企業向けウェビナーに登壇させてもらいました。
その時、多く寄せられた質問のテーマにテレワークがありました。障がい当事者にテレワークで働いてもらう企業も多くなっているのではないでしょうか?
執筆:榎戸 篤 Atsushi Enokido
そこで今回、視覚障がい当事者にとってのテレワークのメリット・デメリットや、導入前に確認した方が良いことを弱視の筆者の視点から書かせてもらいます!
ちなみに私は、コロナ前テレワーク反対派でしたが、テレワークが導入されると大大大賛成派に変わりました。
その変化の理由もお伝えさせてもらえればと思います。
視覚障がい者から見たテレワークのメリットは?
まずメリットから。よく聞くのが、
・通勤がラク
・社内での移動がラク
・イヤホンの使用頻度が減る
というものです。
ホーム転落事故などがあるように、通勤で危険やストレスを感じる当事者も多くいます。
また画面読み上げソフトを使ってPCを操作する当事者にとっては、職場では一日中イヤホンをつけなければならず、耳が痛くなるという苦労もあります。
そのため、メリットにあげる人も多いようですね。
視覚障がい者から見たテレワークのデメリット~導入前にチェックしたいことは?
次にデメリットとしてよく聞く声として、
・支給されるパソコンによっては音声読み上げソフトが使えない。
・仮想デスクトップでは、音声の読み上げが遅くなる。
・職場ではサポートしてもらいながら仕事をしているが、テレワークではお願いしにくい。
・画面が見えないため、トラブルが起こったときに対応しにくい。
・弱視のため、職場では特別にモニターや台などを用意してもらっているが、自宅にはない。
といったことがあります。
画面を音声で読み上げている当事者にとってはテレワークでも使えるかという所が一番重要なポイントのようですね。
テレワークの導入の検討時には、モニターや台なども含め機器関連について必ず事前にチェックしたほうがよさそうです。
テレワーク反対派だった弱視の私が、賛成派になった理由
ここからは私の体験談を書かせてください。
―――
2020年2月の朝、私は都営大江戸線六本木駅の行列に並び、長い長い階段を上っていました。六本木駅は地下が深く、通勤客が行列をなすことで知られています。人込みをかきわけ、職場に到着。
会社のテレビをつけると、新型コロナ陽性者が出て大勢閉じ込められているという豪華客船の映像が。それを見て、「この前まで中国の奇病と言われていたのに」という、自分とは遠いことのように感じていました。
仕事を始めようとすると上司から声をかけられ、個別面談をすることに。
「何か悪いことしたかな?」と恐る恐る会議室に行くと、上司が「テレワークはできる?」という話をしてくれました。その頃はまだテレワークの実績がないため、上司が状況を聞いてくれたのでした。
私は「環境が変わると同じパフォーマンスを出すのが難しいので、テレワークを避けたい」旨を伝えました。その時は、まさか本当に全面テレワークになるとは思っていなかったこともあり、上司も「そうだよね」と軽く応じてくれたのでした。
しかし新型コロナがあっという間にまん延し、自宅での仕事を余儀なくされました。
私の場合、読み上げソフトなどを使わず、画面を目で見ていたため、テレワークになっても作業の内容自体は職場と同じことができました。
ただ、自宅では大きくはないモニターで作業するため見えにくかったり、机が自分に合っていないことが原因で、目や体が疲れることがありました。
そのため開始当初、思うように仕事がはかどらず、「あー!やっぱりテレワークつらい!!」と歯がゆい思いをしました。
ただ徐々に自分でモニターや台などを購入し、最終的に会社と同じような仕事量をこなせるようになりました。
その後、新型コロナ感染者数が落ち着きを見せた2020年秋ごろ、私は久々に出社することになりました。
六本木駅に行くと、あの行列が半分ぐらいになっていました。人込みをよけていた通りも人の姿があまりありません。コロナ前との変化に驚きつつ、会社へ向かいました。
出社すると、コロナ前よりも人混みが少なく楽なはずの通勤で体がヘトヘトになっていました。
そして会社のお手洗いへ行こうとしたときのことです。立ち上がり、歩き始めようとすると、ふっと緊張が走りました。「誰かにぶつからないか?」「変な場所に物が置いてないか?」そんな考えが頭をよぎったのです。
そこで私はハッと気付きました。
これまで普通に行っていた通勤、会社での移動、自分は無意識に見えないことからくる緊張やストレスを抱えていたんだなと。自分にとってテレワークが、毎日の無駄な緊張やストレスを解消してくれていたのだなと感じました。
その後、久々に上司と話す機会があり、再び「テレワーク、これからどうしたい?」と聞いてくれました。
あれだけ反対していた私でしたが、気付くと「テレワークをなるべく続けてもらいたいです!」とお願いをしていたのでした。
おわりに
このように私は、最初モニターなど機器回りの心配を理由にテレワークには反対していました。しかし実際に環境が整ってみると、通勤や移動の楽さを痛感して賛成派になりました。
きっと私のように、システムや機器さえ整えば、テレワークをしたいという当事者も少なくないと思います。
もっともっと環境を選択できる、仕事以外で必死にならなくても良い社会になってもらいたいなと願っています。
Text by
Atsushi Enokido
榎戸 篤
1989年生まれ、東京都青梅市出身。
3歳の時のケガにより弱視に。視力は左0.04、右0。
現在は、テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動中。
▼執筆媒体
当事者向け旅行サイト「COTRAVEL」
障がい者ライフスタイルメディア「Media116」