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“+αのなにか”を持っていない障害者も「人並みの収入」を稼げる社会になってほしい

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2023.6.16

最近、障害を持つ人の取材記事を書く中で思ったことがある。それは、障害者は+αのものがないと人並みの収入を得ることが難しいということ。持病の治療などで頑張ることを求められ続けてきた私たち障害者は、人並みの幸せを手に入れる時も“頑張ること“を求められているような気がする。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

+αのなにかを持っていなくても伸び伸びと生きられる障害者が増えてほしい

障害者となったことから社会を変えるために起業をした人や、生まれ持った障害への理解を積極的に訴えかけている人など、“障害者”という言葉でくくられる人の中には強い人も多い。だが、その強さはたくさんの涙を流し、挫折や苦しみを経験して生まれたものであることが大半だ。

私自身、持病を公表するようになってから痛感したことがある。それは、病気を自身の中で受け止め、積極的に発信できるほどの強さを持たなければ、健常者と同じほど稼ぐことが難しいという、今の社会の現状だ。

障害者は、「頑張って」という言葉を投げかけられる回数が健常者よりも多いと思う。例えば、病気の治療時や手術後のリハビリの時。その温かい言葉に答えようと、私自身も必死で頑張ったことがある。

だが、年を重ねていく中で、ささいな日常の中でも「頑張って」と言われることが増え、思うようになった。私はいつまで、頑張ることを周囲から求め続けられるのだろうか、と。

病気の治療時だけでなく、完治しない持病と付き合う中でも、障害者は頑張り続けている。私自身は持病があるという事実に折り合いをつけられるようになるまでが大変だった。

なぜ、私だけがこんな思いをしなければならないのか、健康な体がどんなものなのか一度でいいから体験してみたい…。そんな気持ちを押し殺しながら、必死に自分が納得できる持病の受け止め方を模索し、自立できる生き方を考えてきた。

そんな時でも、周囲からの「頑張って」は耳に届いた。悪気がないことは分かっている。だが、ずっと頑張って生きているのに、さらに頑張り続けなければならないように思えて、苦しかった。

また、持病があることに折り合いをつけられた後には就職という壁が立ちはだかり、さらに“頑張ること”を課せられているように感じた。

障害者雇用枠では任せてもらえる仕事に限りがあり、健常者よりも賃金が低い傾向がある。

私はそもそも、見た目で分かりにくい内部疾患であることから持病が理解してもらえず、不採用の連続だったが、障害者が健常者と同レベルの収入が得るには突出したスキルを持っていたり、周囲が驚くほどの行動力があったりするなど、なにか「+α」のものがなければ難しいのが現状だ。

そして、その+αの中には、障害があることを乗り越えてこそ持てるようになるものも多いように感じる。

例えば、持病を前向きに捉えて車椅子で外の世界へ積極的に出かけ、バリアフリー情報を発信する人や自分と同じ障害に苦しんでいる人にとって役立つ物を作る人など、バリバリと活躍している障害者はみな、涙の日を何度も越えてきた人ばかりだ。

そうした人の活躍は、とても尊いものだが、誰もがみな、そんなに強いわけじゃない。

どれだけ月日が経っても持病が受け止められなかったり、前を向いて人生を歩もうという気持ちになかなかなれなかったりする人だっている。それはごく自然だが、そういうマインドであると、障害者は人並みに稼ぐことが難しい。頑張って障害を乗り越えた先で、ようやく“普通の幸せ”と呼ばれるものを掴めるような気がするのだ。

一体、いつまで頑張り続ければいいのか。もう、頑張る日々に疲れた。

かつての私が思っていたように、そんな苦しみを抱えている障害者は、きっと多いはず。「病気と向き合い、乗り越える」という、言葉で表すと、たった数文字で終わるこの作業が、私たち障害者にとってはなかなか苦しいものだ。

完治しない先天性心疾患を持つ、私は自分なりに持病の受け止め方を見つけ、運よくライター業という職にも巡り合えたが、その道のりは決して平坦なものではなかった。自分がそうした想いをしたからこそ、+αのなにかがなかったとしても、障害者だって健常者と同じくらいの収入が得られ、肩の力を抜いた状態で“普通の幸せ”を噛みしめられるのが当たり前な社会になってほしい。

そんなに強くなれなくても、頑張り続けなくてもいいじゃない――。そんな優しい言葉が飛び交う世の中になれば、強くあれない障害者も伸び伸びと生きられるはずだ。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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