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先天性心疾患は定期健診でどんなことをしてるの?

検査終了までに4時間かかることも…障害者の日常とは

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2023.7.14

「定期健診」という言葉は耳にすることが多いが、実際どんなことをしているのだろう。
障害者の日常を聞く中で、そう思ったことがある人はきっといるはず。

今回は私の定期健診を例に、先天性疾患者が受けている “定期健診”の中身を紹介したい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

先天性疾患者が受けている「定期健診」の検査内容とは?

自分にとって、3ヶ月に1度の定期健診は、もはや恒例行事のようなもの。幼少期から何度も経験したことがある検査をし、主治医から身体の状態を聞かされる、慣れたイベントだ。

だが、友人や恋人に定期健診のことを話すと、「どんな検査をするの?」と聞かれることが、よくあった。会社員時代には定期健診のために休みを申請すると、「定期健診って、そんなに時間がかかるもんなの?」と言われることもあった。

たしかに、「定期健診」というたった4文字の言葉では、どんな検査をしているのかが何も伝わらない。それは結果的に、「先天性心疾患ってよく分からない」に繋がるように思う。だから、本稿ではひとつの例として、私が定期健診の時に受ける検査を説明し、定期健診の中身を知ってもらいたい。

私が通っているのは、様々な診療科がある総合病院だ。3ヶ月に1回、先天性心疾患児を専門に診る「第二小児科」にかかり、半年に1度、消化器内科で肝臓の経過を調べてもらっている。

肝臓を診てもらうのは、フォンタン手術後に肝硬変や肝がんを発症するケースが報告され始めてきたから。私は小学校4年生でフォンタン手術を受けたため、通常の血液循環ではなく、肝臓がうっ血している。主治医が変わった20代後半の頃、消化器内科にも連携してもらい、肝臓の経過観察もしてもらうようになった。

第二小児科での定期健診の時、受ける検査は大抵の場合、採血、超音波エコー、心電図の3つ。子どもの頃はX線検査も毎回の定期健診で受けていたが、放射線の影響を考え、大人になってからは半年に1度になった。

採血は少なくて、8本。心電図は3分間、測定。超音波エコーは予約していても待ち時間が30分~1時間ほど発生し、検査時間は30~40分ほどかかる。私が一番憂鬱なのは、超音波エコー。内臓が逆位であるからか、私の体は見方が難しいようで、先輩の検査技師に相談をし、検査がやり直しになることがよくある。そうなると、必然的に検査時間はより長くなる。

検査が終わった後に待っているのは主治医の診察

一通りの検査を受けた後は第二小児科へ行き、診察を待っている間に体重、SpO2、血圧を測る。診察室に呼ばれた後は検査結果を聞いて、主治医に聴診器で心臓の音を聞いてもらう。その際は体に水が溜まっていないか、足を触診してもらいもする。その後、会計を済ませて、薬が処方されるのを待ち、ようやく通院が終わるというのが、私の定期健診だ。

医師らはなるべく通院頻度を減らせるように努力してくれ、消化器内科と第二小児科の診療日を合わせてくれたり、第二小児科の検査をしに来たついでに消化器内科で必要な採血も取れるようにしてくれたりと、連携してくれている。

そういう風に2つの科が重なる日は、通院を終えるまでにより時間がかかる。第二小児科のみの定期健診の時でも朝8時に病院へ行き、帰れるのは12時近くだ。

慣れたものとはいえ、毎回、定期健診の日は疲れ切ってしまう。地下1階から2階までを行き来しながら検査を受けたり、長い待ち時間を経験したりし、肉体的な疲労を感じるのはもちろんだが、「前よりも体が悪くなっていたら、どうしよう…」という精神的な不安と闘う疲労も大きい。

30代になり、一般的な30代よりも体力の衰えを感じる近ごろは、定期健診から帰宅した後、疲れて眠ってしまうこともある。だから、私は通院前にスケジュール調節をして、通院日は絶対オフにしている。これはフリーランスだからこそ、できる調節だが、もし会社員であっても、定期健診の日は休みを希望していたと思う。通院後に出社するのは、体力的にも精神的にも厳しいと感じるからだ。

先天性心疾患をよく知らない健常者の中には、同じ職場の障害者が定期健診のために休みを取得するのを見て、「定期健診でも午後から出勤できるのではないか」「休みを取得するほど時間がかかるものなのか」と疑問に思う人もいるかもしれない。

だが、私たち障害者にとって通院は、多くのエネルギーを使う行為だ。もちろん、人によって必要な検査やかかる時間などはそれぞれ。だが、ひとつの参考例として、私の通院事情が色々な人に届き、障害者の定期健診について考える機会を持ってもらえたら嬉しい。

定期健診は健康を保つために、欠かせないもの。気兼ねなく行け、温かく送り出せる社会になってほしいと思う。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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