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先天性心疾患の私が30代で感じた「体の変化」

手術直後や20代の頃とはやっぱり違う…

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2023.7.21

先天性心疾患の私は小学4年生の頃にフォンタン手術を受け、日常生活が普通に送れるようになった。だが、年を重ねる中で現れた異変はある。当事者や先天性心疾患の子を持つ親御さんのため、その情報を共有したい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

フォンタン手術から23年が経ち30代になって表れた“体の変化”

単心室・単心房症の患者にとって最終ゴールだと言われているフォンタン手術の経過は個人差が大きい。だからこそ、当事者がどういう経過をたどっているのか、あまり情報公開されておらず、当事者は未来の自分の体を不安に思うこともある。

実際、私がそうだ。どういう変化が現れる可能性があり、どんなことに気をつければいいのかを文献ではなく、当事者の声で知りたい。

そこで、今回はまず自分自身が手術から23年経ち、30代になって表れた体の変化を紹介したい。


ー ①月に1回は体調不良になって体が動かず

私はフォンタン手術をした人の中では、経過が良好なほうだと言われている。だが、20代の頃と比べると、やはり体力や免疫力が落ちていると感じることが増えてきた。

例えば、月に1回は必ず体調不良になり、だるさから動けなくなる。咳や発熱といった症状はないが、お腹が気持ち悪くて目覚め、翌日、体に熱がこもっている感じがして、だるくなるのだ。

担当医には一度、「体内に熱がこもっている感じがして辛い時がある」や「発熱はしていないけれど、頬や手足が熱っぽくて平熱よりもやや高めの体温になる」などと話したが、「発熱していないなら問題ない」と言われ、原因は不明。

定期健診の結果も問題ないと言われるため、風邪なのだろうと思い、市販薬で対処するようになった。もちろん、薬の効き目には個人差があり、すべての人に有効だとは言えないが、私の場合は色々な市販薬を試した結果、発熱に効果がある漢方薬がよく効いた。

一般的な風邪薬を飲んでも1週間ほど寝込んでしまっていたが、その漢方薬を服用しはじめてからは2~3日で復活できるようになったのだ。

謎の体調不良は、月に2~3回起きることもある。そこで、現在は免疫力を高める効果があると言われている漢方薬を服用しながら、少しでも健康な日々を送ろうと工夫している。


ー ②旅行時に車酔いするようになった

これは持病が影響しているのか分からないが、幼少期から乗り物を全くしなかったのに、30歳を過ぎた頃から、助手席に1~2時間乗っていると車酔いするようになった。

一度酔うと症状は長引き、せっかく予約した旅館のご飯を食べられず、残念な気持ちになったことが何度かある。それに、一緒に出掛けている友人やパートナーに申し訳なくもなる。

そういう事態を少しでも避けたいと思うので、酔う体質になったことを自覚した後からは車に乗る前に酔い止めを服用したり、持ち歩いたりとできる対策をしている。


ー ③SpO2の数値が下がってきた

コロナ禍で一気に知名度が上がったパルスオキシメーターでのSpO2の計測は、私たち先天性心疾患者にとっては慣れた検査だ。手術前、私はSpO2が70%で、スーパーの中を一周することもできなかった。

それが、フォンタン手術後には99~98%に。今まで見たことがない数値に、子どもながら驚いたことを今でも覚えている。

だが、30歳になった頃からSpO2の数値は徐々に下がり始め、最近では94%となった。94%であると、マスクをしていると息苦しく、階段を登ったり早足で歩いたりすると息が切れる。ノーマスクでも鼻呼吸では酸素を十分に取り込めていないように感じ、つい口呼吸になってしまう。

特に、冬は寒いからか、SpO2の値が低い。今の主治医はSpO2の値に関して特に触れることはないが、前の主治医からは「95%を切らなければ大丈夫」と言われていたため、基準となる数値を切ってしまった自分の体は今後、どうなるのだろうと不安が募る。

貧血と診断されて鉄剤を飲み始めた

一年ほど前から、日常的に服用する薬が増えた。主治医から、貧血だと告げられたからだ。通常、ヘモグロビンの値が男性だと13g/dl以下、女性の場合は11g/dl以下であると貧血だと診断される。

しかし、フォンタン手術を受けた患者は通常とは異なる血液循環となるため、その基準を目安にすると、息苦しさを感じてしまうそう。

主治医から貧血であると告げられた時、私のヘモグロビン数値は10 g/dlくらいだった。これまでの採血結果を見直すと、年々ヘモグロビンの数値が下がってきていたことから、鉄剤を服用し、貧血を改善することに。

鉄剤を飲むと、便が緑色か黒色になり、下痢が起きやすい。飲み始めた頃は食事をするたび下痢になり辛かったが、副作用だと言われている腹部の違和感は出なかったため、飲み続けることになった。すると、階段を登る時、マスクをしていても呼吸が少し楽になったように感じた。

鉄剤のおかげで、ヘモグロビンの数値は14 g/dlに。体内に貯蔵される血液の量も安定してきたため、主治医から、一度止めて様子を見るかと言われたが、月経の量が多いことを伝えると、「出る血液が多いのなら、飲み続けたほうがいい」と言われた。

だから、私は今も鉄剤を飲み続けているが、服用するようになってから、月経時の出血量がより多くなった感じがあるので、少し困っている。

だが、その一方で、2年ほど前から感じるようになった、月経前に心臓が重くなるような違和感や息切れといった症状はなくなった。そうした体調不良は鉄不足によるものだとは思っていなかったので、原因が分かり、嬉しく思う気持ちもある。

この先も、きっと年を重ねるたびに色々な不調が現れ、そのたびに何らかの対策を考える必要があるだろう。そんな思い通りにならない自分の体は、少し面倒だ。けれど、私の身に起きた異変が、先天性心疾患者が快適に老いていける治療の参考になったり、当事者が気をつけようと思える情報のひとつになったりするのならば、これほど嬉しいことはない。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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