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心臓病の子どもを持つ親が気をつけたいポイント5選

~我が子が伸び伸びと生きられるために~

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2023.7.28

健康な体に産んであげられなかった申し訳なさや、できる限り普通の生活をさせてあげたいと願う親心…。障害児の親はきっと、そんな想いを抱えながら我が子の成長を見守り続けている。

我が子が生きづらさを抱えず伸び伸びと成長していくため、親はどんなことに気をつけたらいいのだろうか。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

心臓病の我が子を持つ親御さんに気を付けてほしいこと

我が子に障害があると、親は戸惑ったり、どう育てていったらいいのか悩んだりすることがある。それはごく自然な反応だが、親がどう障害を受け止めるかによって、当事者の持病の受け止め方は変わってくる。

そう思うようになったのは、私自身の体験やライターとして他の先天性心疾患者の話を聞いたりする中で、一番身近な大人である親が与える影響の大きさを感じたからだ。

そこで、今回はいち心疾患者として心臓病の我が子を持つ親御さんに向けて、気をつけたいポイントを伝えたい。


ー ①成長に合わせて持病を説明しよう

幼少期、子どもにどれだけ持病のことを説明したらいいのか悩む親御さんはきっと多いはず。もっと大きくなってから、きちんと説明しようと思い、誤魔化しながら病院へ連れていっている方も、中にはいるのではないだろうか。

だが、私は小さい頃から持病や今後の治療方針を説明するのは大切なことだと思う。なぜなら、子どもは大人が思っている以上に理解力があるからだ。

私自身は物心ついた頃から、自分が心臓病であると自覚していた。幼稚園の頃には、心臓の部屋が人よりも少ないことや運動ができないことなどを理解しており、いつか手術を受ける必要があることも、母から聞かされていた。

だから、水遊びに参加できなくても、ひとりだけ通園の服装が厚着でも「他の子と違って体が弱いんだから仕方ない」と納得することができた。

母や医師は私の成長に合わせて、持病に関する知識をアップデートしてくれ、小学校高学年の頃には過去に2回手術をしてきたことや自分の病気には単心室・単心房症という病名があることも知った。

子どもは大人が思うほど子どもではなく、戦う相手が分かっているからこそ頑張れることもある。病気を腫れ物のように扱わず、「あなたの一部」として我が子に教えてあげることは親だからこそできる、大切な教育のひとつだ。


ー ②過干渉せずに見守る

我が子に障害があると心配が募り、つい過干渉になってしまうこともあるだろう。実際、私の両親は過干渉で、何かと先回りして心配されていた。

もちろん、親からしてみれば過干渉は愛情ゆえの行動だが、私は親が敷いたレールをひたすら歩かされている気がして生きづらかった。自分で失敗をして学んでみたいと思い、反発をして親子仲が何度も険悪になった。

障害児とその親は二人三脚で病気の治療に挑むため、親子間の距離が近くなりがちだ。だが、我が子がちゃんと自立し、親亡き後も生きていけるような強さを身に着けさせてあげるのも、親にしかできないことだと思う。

だから、一見、体力的に無理そうに思えることでも当事者が「やってみたい」と言うことはチャレンジさせてあげてほしい。本当に無理であっても、実際にやってみて「無理だった」と学べ、他の道を考える機会を持てることが障害児にとっては大切な経験となるのだ。


ー ③「できないこと」を埋める“何か”を作らない

先天性心疾患であると、運動ができなかったり日常生活で制限があったりと、他の子のようにできないことが出てくる。私の母は、できないことがある分、「他のことで1番になってほしい」と思い、もともと得意なほうだった作文力を磨くことに力を入れ始めた。

母の想いは、優しさから生まれたものであったが、できないことを何かで埋めないといけないことに私は疑問を持った。そして、できないことがある自分は秀でたものがなければ価値がない人間だと思うようにもなった。

障害児は健常児よりも、できないことが多い。言葉にはしなくとも、普通になれない自分に本人が一番苛立っている。だからこそ、親御さんは「たとえ、できないことがあっても、あなたは尊い存在」と伝えてあげてほしい。親から「できないことがある、ありのままの自分」を認められることは子どもが自信を持つきっかけにもなると思う。


ー ④障害者手帳を持つ意味を話す機会を設ける

先天性心疾患の場合は出生後間もなく障害者手帳を申請しており、物心ついた時には我が子が障害者手帳を持っているという状況になるため、障害者手帳について親子で話す機会を逃しがちだ。

障害者手帳は、障害を持っていることを自覚させられるアイテム。だからこそ、障害者手帳に対して我が子がマイナスなイメージを持たないように配慮する必要があると思う。

私の場合は親が障害者手帳に対してあまりいいイメージを持っておらず、極力見せてはいけないものだと教えられた。だから、私は持病は隠さなければならないものだと感じ、20代後半まで障害者手帳を提示することに抵抗があり、持病を周囲の人に話すことにもためらいがあった。

だが、同じ病気仲間は障害者手帳によって受けられるサービスや、その必要性を親から説明され、親自身が障害者手帳に対して前向きな印象を持っていたため、堂々と障害者手帳を提示し、障害と共に人生を楽しんでいた。

我が子の障害の受け止め方は、親が子どもの障害者手帳をどう受け止めているかによっても変わる。持病を説明するだけでなく、障害者手帳に関して親子で話す機会を設けることも、障害児が前向きに生きていくためには大切なことなのだ。


ー ⑤我が子の可能性を信じる

ひと昔前よりも、社会は障害者に対して寛容になってきており、障害者が就職や結婚をするのも当たり前になってきた。だが、親としては我が子の成長を感じるたびに、うちの子は就職や結婚ができるだろうか…と、将来が不安になってしまうこともある。

だが、十年前に今の社会が想像できなかったように、十年後の未来だって、きっと予想だにしないほど様変わりしているはず。もしかしたら、体力がない人でも働きやすい世の中になり、障害者への支援も手厚くなっているかもしれない。

障害は恋愛・結婚のハンデになると思われやすいが、障害も丸ごと受け入れて愛してくれる人と出会える可能性だって多いにある。現に私も両親から心配されていたが、フリーランスという働き方で職を得ることができ、結婚だってできた。

障害があると未来に対して悲観的になってしまうこともあるが、我が子には大きな可能性がある。親だからこそ、「あなたは大丈夫」と背中を押してあげてほしい。

障害児が伸び伸びと生きていくためには、まず親が障害をネガティブに捉えすぎず、我が子の可能性を信じてあげることが大切だ。障害児の○○ちゃんではなく、うちの○○ちゃんという視点で、我が子の成長を見守っていってほしい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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