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やめられない理由はココにあり!「抜毛症」の当事者が抜毛中に考えていることとは?

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2023.9.22

抜毛症を患うと、長時間、一心に髪を抜いてしまうことも多い。その際中、当事者は一体どんなことを考えているのだろうか。今回は私の場合や、これまでライターとして抜毛症当事者に取材をする中で得た声を紹介したい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

「抜毛」の時間は何も考えず、無になれる

私は普段から、頭がフル回転しているタイプだ。寝る前も、色々な考え事がグルグル頭を巡り、疲れてしまう。考えることをやめたいと思うと、「どうしてこんなにも色々なことを考えてしまうんだろう」と、またスイッチが入り、頭が休まらない。

だが、抜毛している時間だけは違う。不思議なことに、普段よりもずっと無に近い状態になれるのだ。この、ぼーっとできる心が穏やかな時間は、とても心地いい。だから、抜毛という行為が癖になる。

こういった感想は、これまで取材をした抜毛当事者からも多く聞かれた。「心のザワつきがなくなる」「抜毛することで現実逃避ができる」など、抜毛は不思議な安心感をくれるのだ。

私の場合は、悩みごとがある日や緊張している日などに抜毛の頻度が増えた。抜毛することで、自分の心をなだめていたのだと思う。

それに、自分が抜きたいと思っている癖毛や変な太さの毛が抜けた時は妙な嬉しさがこみ上げてきて、抜毛が楽しくなった。この快感をもっと味わいたいと思って、また手が髪に伸びる。希望通りではない毛を抜いてしまった時は残念に思うが、「今度こそ、いい髪が抜けるように頑張ろう」と頭に手が伸びる。

どのみち、1回髪を抜いたら、もうやめられなくなるのが抜毛症の怖さだ。ストレスを感じている時は、どんな髪でもいいから…と、手っ取り早く抜ける、自分の抜きやすい部分に手が伸びる。私の場合は、頭頂部と左後ろ。その部分だけ毛量が少なくなった。

抜毛当事者にはこんな風に、抜いてしまいやすい部分があり、その箇所だけ脱毛が目立つようになる。ハゲるのは嫌だという気持ちはもちろんあったが、心を穏やかにしたいという欲求のほうが勝り、私は抜毛を繰り返していた。

抜毛後に押し寄せてくる罪悪感がキツい

抜いている最中は、どちらかというと幸福を感じる。だが、その分、抜毛し終えた後の罪悪感がキツい。我に返り、ゴミ箱に捨てた大量の髪をまじまじと見るたび、「またやっちゃった…。どうしてやめられないんだろう」と激しい自己嫌悪に襲われた。

抜いた髪の量の多さに自分でも引いて、鏡で頭頂部をチェックすることもしばしば。また薄くなったかもしれないと不安になり、もう二度と抜かないと心に誓うのに、それを守ることが難しい。

自分との約束を破るたび、意志が弱い人間だと痛感。自分のことを、さらに嫌いになっていった。

抜毛症は自分ひとりでは完全に治療することが難しい病気だと、私は思う。なぜなら、根っこにある、心の問題に目を向ける必要があるからだ。だから、どうか何度も抜毛を繰り返してしまう自分を責めないでほしい。

そして、抜毛症と上手く付き合っていくためにも、信頼できるカウンセラーを探してほしい。投薬治療に抵抗がある人や心に溜まっているものの重みに耐えきれない人は公認心理師が1時間ほどじっくり話を聞いてくれるカウンセリングを選ぶのがよいだろう。

抜毛症の治療には、長い時間がかかる。だからこそ、ひとりで問題を抱え込まず、辛い気持ちを共有し、共に闘ってくれるパートナーを見つけることも大切なのだ。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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