車いすユーザーの就職活動①障害者雇用枠の面接で意識したこと
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2021.4.7
就職活動で避けては通れない「面接」。障害者雇用においては、自分の障害や配慮してほしいことを説明する必要があります。障害があっても「この人と一緒に働きたい」と感じてもらうためには、どうすればいいのか。私の実体験をもとに、まとめてみました。
執筆:中村 珍晴(ちん) Takaharu Nakamura
はじめに
先日、下記のツイートをしました。
このツイートに対して300人以上の方がいいねをしてくれたこともあり、今回はこの内容を掘り下げて解説します。
これから障害者雇用枠での就職を考えている方は、自分の面接の準備に生かしてください。一方で、人事の方は採用基準のひとつとして参考にしていただければと思います。
就職の経緯
まずは、私の就職の経緯について説明します。
私は、2018年4月に神戸学院大学に教員として就職しました。大学の教員は、不定期に公募が発表され、それに応募し選考を受けることになります。
この公募は障害者雇用枠での採用でした。そのため、面接では教育業績や研究業績だけでなく、自分の障害について説明が求められました。
障害者雇用枠での就職を考えている当事者の中には、自分の障害をどのように説明したらよいかが分からず、不安な方もいるのではないでしょうか。
そこで次は、私が面接で意識したことを詳しく説明します。
障害者雇用枠の面接で意識したこと
私が面接で意識したことは以下の3点です。
・自分の障害を小学生でも分かるレベルで説明する
・配慮してほしいことを具体的に説明する
・大学(企業)に貢献できることを実績とともに説明する
ではひとつずつ解説します。
自分の障害を小学生でも分かるレベルで説明する
障害者雇用枠での選考は、必ず障害のことについて聞かれます。
私が意識したのは、こちらの障害について、お互いの理解のギャップをゼロに近づけることです。なぜなら、障害によりどのような症状があるのか、どのようなことができないのかが分からないと、職場での配慮の内容を決めることができないからです。
また面接担当者が私のことについて分からないことがあると不安が残り、採用の決断をためらう可能性があります。そのため、障害についてお互いの認識を合わせることで選考のスタートラインに立てると考えました。
障害を説明するときは、できる限り専門用語を使わないようにしました。
自分の障害を説明する際に、障害者手帳に記載してある障害名を伝えても、具体的な症状はイメージしづらいものです。そのため、小学生でも理解できるように自分の言葉で障害を説明しました。
具体的には以下の通りです。
私は鎖骨から下は自分の意志で動かすことができません。また腕の力も弱いので、手のひらで車椅子を漕いでいます。走行用のグローブをつけると学内の坂道は自走で移動することはできます。目に見えない症状としては、排泄障害があります。具体的には、尿意と便意がないので、時間を決めて排泄をしています。排尿はカテーテルという細い管を使い、排便は週に2回、浣腸を使って自己管理をしています。
これくらい噛み砕いて説明することで相手の不安を減らすことができます。
また自分の障害を隠さずに説明することで相手に信頼してもらいやすくなると考えました。
配慮してほしいことを具体的に説明する
自分の障害を隠さずに説明しただけでは、「あれもできない、これもできない」と思われる可能性があります。そのため、障害によりできないことを説明した後は、それをどのようにしたら解決できるのか、具体的なサポート方法や配慮してほしいことを説明しました。
これは国の調査結果を参考にしました。
内閣府の調査によると、障害のある人を手助けできなかった理由として「どのように接したらよいか分からなかった」「自分が何をすればよいか分からなかった」という回答があります。
つまり、どのようなサポートをしたらいいかが分からないことが、サポート行動の障壁となっている可能性があります。
自分の障害を説明した上で、「これはできませんが、◯◯のようなサポートや配慮があると解決できます。」と伝えることで相手の不安を解消できると考えました。
また、解決法まで提案することで面接担当者に「この人は課題を客観視して、それを解決できる人だな」と印象づけることも意識しました。
障害者雇用枠で応募する人の中には、採用してもらいたい気持ちが強すぎて、自分の障害を隠す方がいると聞いたことがあります。しかし、その状態で採用されても入社後に適切なサポートを受けることができないため、結果的に苦しい思いをするかもしれません。
自分の障害を隠すことは、個人的にはおすすめしません。
大学(企業)に貢献できることを実績とともに説明する
障害に対する面接者の不安をできる限り払拭した上で、さらなる後押しを意識しました。自分が大学に就職することで、どのような場面で力を発揮できるか、自分の経験や実績と共に説明しました。
具体的には以下の通りです。
・大学のアメフト部でヘッドコーチを4年間務めたので、大学生にグループで共通の課題を取り組ませることに自信がある。
・大学院生のときに心理学の実験実習のティーチングアシスタントを4年間担当したので、実験実習科目を担当できる
・YouTubeでの動画配信を3年間経験しているので、動画教材の作成や広報活動に貢献できる
・研究実績として大学院生のときに日本学術振興会特別研究員※に採用され、競争的研究資金を獲得した経験がある
※簡潔に説明すると国の研究員です
このように、就職後にどのような貢献ができるかを実績という根拠とともに説明できると説得力が増すと考えました。
まとめ
今回は、私が障害者雇用枠での面接を受けるときに意識したことを説明しました。
私は就職活動とは障害の有無に関係なく「あなたと一緒に働きたい」と思ってもらえるかが重要だと考えています。面接担当者に、このように思ってもらえるように上記の3点を意識しました。これから就職活動を考えている方の参考になれば嬉しいです。
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Text by
Takaharu Nakamura
中村 珍晴(ちん)
1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。