車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場に欠かせないポイント!職場環境編
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2022.1.27
車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場環境にするためには、どんな工夫をしたらいいのか。今回は電動車いすユーザーの私が、実際に働いていたときに配慮していただいたポイントや、その理由についてまとめようと思います。
執筆:佐々木 美紅 Miku Sasaki
私は脊髄性筋萎縮症という、生まれつきの病気のため、電動車いすで生活しています。
脊髄性筋萎縮症とは、体幹、腕、脚など全身の筋肉を動かす脊髄の細胞に異常があり、筋力が低下していく進行性の難病です。
今回は、車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場環境にするためには、どんな工夫をしたらいいのか、実際に事務やコールセンターの仕事の経験がある私の考えをまとめようと思います。
注意していただきたいのは、車いすユーザーだからといって、すべてが当てはまるわけではないということです。体の大きさによって車いすの形は変わってきますし、 電動か手動式かなどの差によっても、配慮をして欲しいポイントは変わってきます。あくまでも私の経験として参考にしていただけると幸いです。
車いすユーザーが仕事をする上でのポイント
車いすユーザーが仕事をする上で、職場環境のポイントとして抑えていただきたい点として以下の項目が挙げられます。
- 通路の幅
- デスクの高さと幅
- ドアの開閉とセキュリティロック
- エレベーター、スロープ、段差
- ファイリングやコピー機の操作
- 多目的トイレ
これは、実際に私が働く上で配慮していただいたことです。不安なことはあらかじめ相談するようにしていましたが、実際に働き始めてから不便な点が出てきたこともありました。
すべての項目について説明をしていると長くなってしまうので、今回は通路と、デスクに絞ってついて書かせていただきます。
ポイント1 通路の幅
私の車いすの横幅は約65cmです。なので「80cmくらいあれば、大丈夫かな」と思われてしまうのですが、全長が100cmを超えているので、最低でも150cmはなければ回転することができません。
しかし、社内の通路すべてを広くすることは厳しいことでしょう。私が働いていた会社もすべての通路を広くするのは難しかったため、私のデスクの位置を工夫してくれました。
- 入り口近くで比較的幅の確保がしやすい場所。
- 後ろにロッカーやプリンターが置かれていない
- 入室してあまり曲がったりせずに、まっすぐ入れるところ
といった配慮はしていただいたのですが、車いすでは通れないところも多いので、大変なこともありました。
奥の席に座っている方に声をかけたいときは、 入り口近くの社員に声をかけて呼んでもらったり、メールを入れて相手の都合のいい時間に訪ねてきてもらったり、内線電話を使ったりして話をしました。
私の勤めていた会社は、打ち合わせスペースが狭かったので、個人面談をするときは机や椅子を動かしていただきました。
休憩室は、五十席ほどある広々とした空間でしたが、社員が座ってしまうと一度立ち上がって場所を空けてもらわなければ車いすで通ることができません。混まない時間帯に昼休憩に入れてもらい、なるべく入り口の近くで食事を摂ることを心がけていました。
余談ですが、昼食を早く摂っていた理由は他にもありました。ランチタイムはエレベーターが混み合ってすぐに乗れないこともあり、一階のコンビニや多目的トイレまで行くのに時間がかかってしまうので、少しずらしてもらっていたのです。
実際に働くスペースだけではなく、休憩室、会議室、面談室など、車いすの社員が使用できる環境になっているかというのも意識していただけるとありがたいです。
車いすを使っている方に働いてもらう場合は、通路幅の確保は重要なポイントだと感じています。
ポイント2 デスクの高さと幅
私が現在、家で使っているパソコンデスクは、 約幅100X奥行45X高さ74cmで、キーボードを置くスライド天板引き出しは、床から約45cmの高さにあります。
オフィスで使っていたデスクの高さに似ていますが、オフィスではキーボードを置く天板引き出しはありませんでした。キーボードを使うときに手を上げる必要があるので、体勢が少しつらかった記憶があります。
その会社では、面接のときに社内を見学でき、またデスクが使いやすいか試すことができました。
当時は、「あまり自分の希望を言うのは良くない」と思ってしまったのですが、 しっかりと伝えることができれば、もっと楽な姿勢で働けていたかもしれません。
デスクが高すぎると手が届きにくいですし、低ければ、今度は膝が引っかかってしまい深く座ることができません。
デスクで気になるポイントは、高さだけではありません。オフィスによくあるデスクは、机の右側か左側に収納がついています。大きめの電動車いすを使っている私はぶつかってしまわないように、気を使いながら机についていました。
事務仕事のため、近くに書類を保存しておく場所を作っておきたかったので使用していましたが、左右に何もない方が使いやすいかもしれません。コールセンターで働いていた時は、左右に収納がなかったので移動がスムーズでした。
使用している車いすや障がいによっても使い勝手が違うので、本人と相談をして、高さや幅の検討をしていただけたらと思います。
まとめ
電動車いすの私が実際に働いてみて、工夫していただきたいポイントを今回は2つに絞ってご紹介しました。
通路幅もデスクの大きさも、工夫をすることで改善につながるのではないかと思っています。通路幅は、 車いすの人が通る場所にはゴミ箱を設置しないなど、少し気を使っていただくだけで通れることもあります。
職場環境編では、まだお伝えしたいことがありますので、次回またお伝えしようと思います。