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「相手の心に寄り添う」とは…

~子供の頃、病院が怖かった私の場合

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2024.3.18

私の病気は生まれつきで、子供のころから病院は「よく行く場所」でもありました。

でも、だからこそ知っている恐怖があります。
今回は子供からみた病院の印象について、紹介します。

執筆:山口 真未 Mami Yamaguchi

病院に、どれくらいの頻度で行きますか?
障害や病気を持っていない方にとっては、「何か困ったときに行く場所」という印象かもしれません。

おそらく風邪を引いたとき、ケガをしたときに行く程度ですよね。
もちろん私も風邪を引けば、家の近くの病院に行きます。

でもそれ以上に、子供のころから「年に数回は必ず行く場所」と認識しています。
私の病気は生まれつきで、2歳の頃には正確ではないものの病名がわかっていました。

筋肉の難病として判明しているからこそ、子供の成長と共にどこまで症状が出るか、命にかかわる部分はどうかなど、経過観察が必要だったのです。
筋肉の病気は意外とやっかいで、通常の生活としての歩く、座る等も大事ですが、心臓や目の動きなども筋肉にかかわる部分。

だからこそ子供のころ、定期的に病院に通っていたわけですが、定期的に通う病気だからこそ見えてくるものがありました。

おませな子供の病院への印象

「病院やだ~!」って子供が言うことありますよね。
子供は病院がキライなものって印象もあるかもしれません。

病気の具合などにもよりますが、注射が痛い、薬が苦い、待つのが退屈、色々な理由があってだと思います。
もちろん痛い検査は私も嫌ですが、子供のころから通うと病院に対しての免疫ができるもの。

例えば私の場合は、物心ついたころには色々な検査をしていたため、レントゲンやMRIなどの検査では泣き喚くこともありませんでした。
暗くなったり、少し動かずにいるくらい、なんてことない。

何度も検査をしたおかげか、レントゲンやMRIの検査で痛いことが起きることはない、と知っていたからです。
今思えば生意気ですが、子供心にレントゲンが嫌な理由がわからないくらいでした。

また病院での待ち時間も、むしろ楽しいものでした。
小さいころはゲームやスマホがなかった時代でもあったので、待ち時間にできることといえば読書や折り紙などの手遊びです。

でもずっと遊んでいても怒られない、むしろ習い事の宿題などをやらずに済むのが嬉しいくらいでした。
病院の待ち時間=遊ぶ時間と認識していたからこそですね。

そんな病院通いなら病院に行きたくない、ってアリエナイと思いますよね。
でも子供心に病院は嫌な場所でもありました。

私の筋肉の難病はゆるやかではありますが、進行性のものです。
また子供のころなら、大人になった後のことを心配もしますよね。

その心配をする「大人の表情」が怖かったのです。

病院の本当の怖さ

病気の進行が気になるような病気を1度でもしたことがある人は、少し想像ができるかもしれません。
病院の何が怖いって、お医者さんのお話を聞くのが一番怖いのです。

もしかしたら検査の結果が悪いかもしれない。
もしかしたら今よりもっとツライ治療が待っているかもしれない。

そう思うと検査をすること自体よりも、検査の結果を聞くことの方が怖いのです。
そして子供だって怖いと思うことなのです。

子供だから難しい医療用語や今後の想像などできないと思いますか?
もちろん難しい言葉や言い回し、大人の会話は理解できないことも多いです。

でもその分、大人の表情や行動を読み取るのです。
お医者さんと話しているときの親の表情、反応。

そして病院後の行動など色々な部分から、察知できるのが子供でもあります。
私も小学校高学年くらいになると、よくお医者さんの問診のあとに私だけ先に待合室に出され、親とお医者さんだけが話している時間がありました。

もちろん、どんな会話があったのかは想像でしかありません。
でもその後の態度や行動から、読み取れたことは事実です。

例えば病室から出てきた時の親の表情や私の好きなご飯が出てきたり、まだ勉強が残っているのにテレビを見ていても、遊んでいても怒られなかったり。
些細なことですが、子供心に嬉しさと悲しさと怖さが混じっていました。

子供だからこその気づき

当然ですが大人も病気になった、病気が悪化したなどと言われるのは怖いですよね。
子供も同じです。

直接言われなくとも感じることはできます。
「病院に行きたくない」って子供の声には、痛い検査が嫌だ、薬を飲みたくないって意味もありますが、大人と同じような恐怖もあるのです。

子供だからわからない、子供に伝えるのは、もう少し大人になってから。
その気持ちも大人になった今、わかる気もします。

でも子供だからこそ気づくこと、感じることがあります。
それは大人になると、むしろ気づくことや感じることができないかもしれません。

だからこそ子供の「病院に行きたくない」の言葉に、怒ったり叱ることは程ほどにしてほしい、とも思います。
そして子供だから、と隠すのも程ほどが良い、とも思っています。

病気だと伝えるのも勇気

病気の種類や程度にもよるとは思いますが、「あなたは難病です」と子供に告げるのはツラいことですよね。
また「病気が治らない」「これからもっと悪くなる」なんて、誰しも我が子に伝えるのは避けたいはず。

でも避けているばかりでは仕方がないのも事実。
それに子供だからこそ感じたことで、親以上に不安になったり、悩むこともあります。

私の実体験があるからこそ言いますが、隠すことが必ずしも正解ではありません。
特に日常生活に支障があることなら子供は当然、疑問に思います。

「なんで走れないの?」
「なんで階段がゆっくりなの?」

この疑問に答える術を持たないことも、病気だと知るのと同じように子供にとってはツライことなのです。

子供の目線に寄り添って

とはいえ、どの選択肢が正解かは私にもわかりません。
私は病気だと、しっかり告げられたのが中学生だったため、遅めだったと思います。

仮に病気である、と告げなくても病院に定期的に通えば、子供なりに察するところがあるもの。
子供だから、と侮ることなく、一人の人間として接することは大人だからこそ大事にしたいですね。

また「病院がイヤ!」と子供が言ったときは、ぜひイヤな理由を深く考えてあげてほしいとも思います。
子供だからこその理由があるかもしれない。

大人だからこそ、子供の世界を少しでも広く、深く想像して寄り添いたいですね。

1990年生まれ。障害者ファイナンシャルプランナー(FP)。生まれつき”筋ジスの仲間”と言われつつも、正式な「ベスレムミオパチー」の診断は大人になってから。高卒・障害者雇用で大手鉄道会社の事務で10年以上勤務したが、病気の悪化により退職。そこで改めて、お金の大切さに気付く。現在は、障害者だからあるお金の悩みと寄り添いたく、障害者FPとして活動中。

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