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優しい社会への第一歩~子供の頃の入院生活で気付いたこと

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2023.11.8

私自身は障害者で難病を持っていますが、いつも入院と隣り合わせ、という生活ではありませんでした。

でも小学生のとき初めて少し長い入院を経験し、とても大きな衝撃を受けました。
今回は子供の入院について感じたことを紹介します。

執筆:山口 真未 Mami Yamaguchi

突然ですが、入院したことありますか?
障害に関係なく、経験がある人もいますよね。

私は2歳のときに検査入院をしていますが、さすがに記憶にはありません。
恐らく何もなければ、大人になり障害が悪化するまでなかっただろうな、と思っています。

でも小学6年生のとき、3カ月の入院生活がスタート。
原因は、骨折でした。

絶対安静のための入院

私は筋肉の病気のため、人よりも力が弱いのが特徴です。
そのため人とぶつかったとき、自分を支える筋肉がなく勢いのまま転びます。

また基本的に受け身も取れないため、転ぶときはドコかを強打することは必須。
小学校高学年になると、身体の重みと共に強打する割合も増え、骨折も経験済みです。

でも小学6年生のときの骨折は、次元が変わります。
友達との下校中、ふざけて友達がぶつかってきた際に、その勢いのままに転倒し同時に2カ所の骨折。

しかも左腕と太ももの骨折で、かつ太ももはナナメに骨折したため、もし骨がズレたら手術という危険性も。
骨がくっつくまで絶対安静、ベッドに寝たまま上半身を起こして座ることすら禁止という事態です。

さすがに自宅で安静にする、というレベルではありません。
最初の診療は自宅の近くの病院でしたが、リハビリ等を考慮して元より通院していた病院へ転院となりました。

その病院こそ、こども病院です。

少し特別な病院への転院

「こども病院」をご存知でしょうか?

全都道府県には無いのですが、一般の病院では診察が難しい病気をもっている子供たちが専門の治療を受けられる病院です。(病院や病気によって事情はさまざまのため、ココでは簡単に記載しています。)

簡単にイメージするなら普通の風邪やケガではなく、難病のような病気をもった子供たちが治療する病院です。私自身も2歳で病気がわかったときから通院していたため、転院となりました。

今は冷静にこのコラムを書いていますが、当時、病院で主治医の先生を見た瞬間、実は大泣きしました。

身体はめちゃ痛いし、転院は骨折箇所をズラさないためと初めて救急車に乗せられるし、長期の入院と言われるし、と不安だったのだと思います。

そんなスタートを切った入院生活ですが、衝撃しかありませんでした。

悲しい現実ですが、小さい頃から入退院を繰り返す、入院生活の方が長い、という子もいます。私も初めての入院とはいえ小学6年生、頭では理解していました。

でも実際に入院エリア内に入ると、私よりも小さい子が入院生活に慣れていることに驚きばかり。

外に出られず、食べたいおやつが食べられず、見たいテレビも見られず、家族にもあまり会えない。

代わりにあるのは病棟内を動き回ること、集団でなら見られるテレビ、そしてツラい治療です。私は骨折のリハビリが大変くらいでしたが、中には数日に1回は泣き叫ぶ治療を受ける子もいました。

もちろん治療がツラく大変なのは、子供にとってイヤなことです。

でも私はそれ以上にツラいな、と感じたことが2つあります。

日本では当たり前にある学びの機会

1つ目は、学びの機会が奪われることです。

当然ですが、入院生活は治療が最優先で学びの機会は二の次。

でも入院がなければ、学校に通い学ぶ機会があるはずです。

幸い私が入院した病院には「院内学級」という、病院の中にある学校がありました。

入院生活が長くなる場合、その学級へ編入することで先生が授業をしてくれます。私も3カ月以上はかかるかも、と言われていたため、一時的に入りました。

でも学校とはいえ学年の違う子供たちが、一斉に同じ教室で学ぶスタイル。自分で教科書を読めても、学校の授業のように先生がガッツリ教えてくれるものではありません。

それでも長い入院生活を思えば、学ぶチャンスはありがたいことです。大人になってより実感しますが、知識は生き抜く上での武器ですよね。

日本では識字率はほぼ100%ですが、実際に生活するなら文字が読めるだけでは困ります。難しい契約書を読み解く力や数字が理解できなくては、働く上でも生活する上でも成り立たちません。

その練習が学校の勉強だと思うと、やはり貴重な場です。

学校が全てと言うつもりはありませんが、そもそもチャンスがあるのかで大きく変わります。

院内学級などチャンスがあることは大切だな、と身をもって感じました。

家族と一緒にいられる貴重な時間

2つ目は家族との時間が奪われることです。

病院でルールは異なりますが、私が入院していた当時は親の付き添い入院がNGでした。

そのためどんな子でも必ず親とサヨナラをし、夜は1人で寝ます。

小さいお子さんがいる方なら分かるかと思いますが、家族で同じ部屋で寝ることありますよね?入院は、そんな当たり前のことも奪うのです。

また最初にこども病院は、全都道府県にはない、と紹介しました。

残念なことに、自宅から遠いご家庭も多いのです。

私は幸いなことに自宅から車で20分ほどの距離でした。毎日通うことが可能な距離のため、私の母は極力、毎日顔をだしてくれていました。とはいえ、3歳下の妹もいるため、徐々に回数は減りましたが、最低でも2・3日に1回は面会に。

そんな私とは違い、月に数回しか親と会えない子も多くいたのが事実です。

家が遠いなら行き来するだけでも大変ですし、兄弟姉妹がいれば尚更です。また中には近くにホテルをとって、病院に通うという親御さんもいました。

連日通うなら、その方が長く一緒にいられるし、楽だからと。お金や移動の時間をかけても、一緒にいられるのは面会の数時間。

さらに兄弟姉妹は風邪などの病気を持ち込む危険性が高いので、病棟に入れずガラス越しで会うのみ。

家族を必要とする子供時代の生活として、家族でも会えない時間が多いことは衝撃でした。

もちろん仕方がないことで、解決は難しいです。

それでも、もし周りで「子供が入院中で…」という人がいたら、少しでも子供第一になるよう、こんな苦労があると、知ってほしいなと思います。

あなたが「今すぐできること」で優しい世界を

当たり前ですが、この世の中から病気がなくなることが一番です。
でも今すぐに、そんな世界を作ることは難しい。

だからこそ今できることから、ですよね。

私が入院した理由は骨折のため、いつかは退院できるとわかっていました。

でも中には退院の目途すら立たない子も多くいます。
そんな子供たちを可哀そうと思うのは簡単ですが、本人たちは恐らくそんな感情は望んでいません。

それよりも院内学級のような学びの場があること、少しでも家族との時間を過ごせることの方が嬉しいはず。

子供が入院する全ての病院に院内学級ができれば、と思いますが、難しいのも現実かもしれません。

その代わりに職場や周りの方で、「子供が入院中」という話を聞いたら少しでも家族の時間を作れるように、親の負担が減るように優しい気遣いがうまれてほしい。

もしかしたらその気遣いが子供への一番のプレゼントで、巡り巡って優しい社会になるのではないかと信じています。

1990年生まれ。障害者ファイナンシャルプランナー(FP)。生まれつき”筋ジスの仲間”と言われつつも、正式な「ベスレムミオパチー」の診断は大人になってから。高卒・障害者雇用で大手鉄道会社の事務で10年以上勤務したが、病気の悪化により退職。そこで改めて、お金の大切さに気付く。現在は、障害者だからあるお金の悩みと寄り添いたく、障害者FPとして活動中。

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