ワーク・ライフ・インテグレーション「仕事と生活を切り離さない」考え方
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2024.1.18
2年前に突然、高熱と皮疹が続き、指定難病の成人スティル病(成人発症スチル病)と診断されました。難病と診断されても働き続けたい想いは変わりませんでしたが、次第に「自分のことをもっと大切にしていきたい」という気持ちが大きくなっていきました。
執筆:もーこ
こんにちは、もーこと申します。都内でWeb制作会社の役員をしております。
2年前に突然、高熱と皮疹が続き、指定難病の成人スティル病(成人発症スチル病)と診断されました。病気になったことにより、今までと同じ働き方では仕事を続けるのが難しいと判断し、自分を見つめ直しながら働き方を変えていこうと考えました。
働き方を変えていく過程の試行錯誤はこちらの記事に詳しく書いています。
難病と診断されても働き続けたい想いは変わりませんでしたが、次第に「自分のことをもっと大切にしていきたい」という気持ちが大きくなっていきました。
病気になる前までは、どちらかというと仕事第一でした。自分よりも仕事を優先させていて、一人で抱えている仕事も多く、目の前にあるものをこなしつつ、がむしゃらに毎日を過ごしていました。
当時は社長という立場もあり「とにかく全力で、誰よりも多くの仕事に向かい、会社で一番稼いでいなければ」と考えていたのです。
そんな中で病気を発症し、難病の診断を受け、突然ぱたりと仕事から離れることになりました。
立ち止まる時間ができたことで、改めて自分自身について考えさせられて「なぜ働くのか」や「何を大切に生きていきたいか」を自問自答した結果、もっと自分を優先したい、自分自身のやりたいことや、家族との時間を大事にしていきたいという気持ちに気付いていきました。
今までの働き方からどのように変えていくのか
自分自身を大切にしながら働き続けるとはどういうことかを考えた時に、「まず、自分のための時間を作りたい」と思いました。
仕事を走ることに例えると、今までは常にトップスピードに近い状態で走っていました。全力で走り続けているので周りの景色を見る余裕もなく、常に必死で息も切れている状態でした。
それをスローペースに切り替えて、息を長く、周りの景色を楽しみながら走っていけるようにしたいと思ったのです。周りの景色を見る余裕をつくる、つまり自分の時間も楽しんでいけるように、仕事と生活を見直すことが必要だと考えました。
この「仕事と生活」については「ワーク・ライフ・バランス」という考え方があります。「仕事と生活を調和させること」「仕事と生活の両立」とも言われます。
ワーク・ライフ・バランスについては名前こそ知っていたものの、あまり自分には当てはまらないと感じていました。
「仕事とプライベートを分けて両立できたら理想かもしれないけど、現実的に実現が難しいのでは?」という思いが拭えず、自分ごととして捉えることができなかったのです。
そんな中、仕事と生活についての新しい考え方が出てきていることを知り、調べていくうちにそちらの方が自分に当てはまりそうだと感じました。
「仕事と生活を切り離さない」考え方
新しい考え方のひとつが「ワーク・ライフ・インテグレーション」というものでした。
ワーク・ライフ・インテグレーション(Work-Life Integration)とは仕事と生活(プライベート)を統合するという意味で、仕事と生活を線引きせずに両方を充実させるという考え方です。
また、ワーク・イン・ライフ(Work-In-Life)という言葉もあり、仕事も人生の一部という考え方も広まりつつあります。
この2つの考え方に共通しているのは「仕事と生活を切り離して考えない」ということです。
例えば、オフィスに行かず在宅でリモートワークをする、休日や仕事の時間が固定的でなく働ける時に働くなど、より自分の生活に合わせた柔軟な働き方をしていくことも考え方のひとつです。
私は「仕事も生活の一部」と考えています。その理由はいくつかありますが、ひとつはWeb制作という仕事柄、パソコンがあればどこでも仕事が出来ること、もうひとつが役員であるため勤務時間というものが決まっていないという今までの経験が大きいです。何より、私が楽しく仕事をしたい、好きなことを仕事にしたいとも考えているからです。
好きなことをしている間はずっと続けられてしまうこともあり、私にとって時間できっぱり仕事と生活を切り替えるのは難しいことでした。自営業やフリーランスの方は似たような感覚をお持ちかもしれません。
私の場合は生活の中に仕事が溶け込んでいるという表現の方がしっくりきます。私がワーク・ライフ・バランスの考えにあてはまらないと感じていたのは、自分の働き方では仕事と生活を切り離して考えることがそもそも難しいなと思っていたからでした。
さらに、コロナ禍になってリモート化が進み、ワーク・ライフ・インテグレーションの流れは加速したように思います。
自分の生活スペースの中に仕事デスクがある。自宅からリモートで打ち合わせをするなど、誰もが「仕事が生活の一部」と言える状態になってきたように感じています。
仕事と生活は両方とも充実させられる?
「仕事と生活を切り離さない」という流れがあるものの、両方を充実させるにはどうしたら良いのでしょうか。
そのためには、まず自分の生活から考えていくのが良いと思っています。どんな生活を送りたいか、誰と一緒に過ごしたいか、大切にしたいことは何か。
理想の生活というよりは、今の生活を見つめ直し、もっと楽しく過ごすにはどうすれば良いかを出していくと考えやすいと思います。
私の場合は「自分の好きなことに費やせる時間があること、ご飯を家族と一緒に食べること」が生活の中で大切にしたいことでした。
理想や大切にしたいことがわかってくると、それに合わせた働き方を考えることができます。
例えば、ご飯の時間はだいたい決まっているので、その前に仕事を終わらせられるようにスケジュールを組む、ご飯の時間には会議を入れないなどです。どうしても仕事が終わらない場合は、ご飯の時間を休憩時間として一度中断し、食べ終わってから仕事を再開することもできます。
自分の好きなことの時間はどうすれば確保できるのか。そもそもやりたいことがやれないくらいに疲れてしまわないように自分の仕事量をコントロールし、一人で抱え込まないように他の人に依頼できる体制を作るようにすれば、自分の時間も確保しやすくなります。
大切にしたいことがわかってからは、以前のようにがむしゃらに働くことはなくなりました。
「自分の大切なものが守られていれば、それ以上に働く必要はない、働いてたくさんお金を稼ぐというより自分の生活に見合ったお金があれば良い」と思えるようになったからです。
少しずつ自分一人で抱え込んでいた仕事も手放して他の人に依頼していき、気持ち的にも時間的にも余裕が持てるような状態を作っていきたいと考えるようになりました。
仕事の量を減らした分、一つのことに時間をかけて取り組めるようになり、自分自身にしか出来ないことや得意なものをより良い品質で届けることができるようになってきたのも良いことでした。
結果として、自分の仕事量を減らしたことで会社の稼ぎが減ったため、一時的に私の報酬は減らすことにしましたが、その分気も楽にもなりました。「社長として会社のために稼がなくては」と思っていただけで、私自身はそれほどお金が欲しいわけではなかったことにも気づけました。
勤務時間や働く場所がきっちり決まっていると、その中でコントロールすることは難しいところもあると思いますが、だからといって生活を犠牲にしては両方の充実を成り立たせるのは厳しくなってしまいます。
自分の大切にしたいものを守りながら、働き方の可能性を探ることを諦めずに考えることが必要だと思います。そのためには自分でコントロールできる範囲の小さいことから始めてみるのが良いかもしれません。
まとめ
仕事は生活の一部であり、人生の一部でもあると思います。自分の大切にしたいことは何かを考え、働き方を考えることは生活を充実させることにつながり、すなわち豊かな人生になると思っています。
また、人生の中でライフスタイルは変わっていくものであり、結婚、子育て、介護、病気など様々な理由がきっかけで考え方も変化し、その時々に大切にしたいことも変わるものだと思います。その都度、働き方も変化させていく必要が出てくるのも自然なことだと感じます。
今までは会社の働き方に合わせていくことが多かったですが、これからは私たち一人ひとりが働き方を作っていく時代に変わってきたとも感じます。
どうしていきたいかの答えを出していくためには、定期的に自分自身の生活を見直す時間を作り自分と向き合っていくことが必要だと思っています。
Text by
もーこ
1982年生まれ。Webデザイン会社を経営。2021年、手足の発疹と39度の高熱が数週間続き、指定難病である成人スティル病と診断される。その後ステロイド服用による治療をしながら仕事復帰。
病気になったことで、ハンデがあっても働くことの選択肢を増やしたい。病気とつき合いながらも自由な働き方を選んでいきたいと強く想い活動を開始する。