PARA CHANNEL Cage

【難病×働く×社長】リモートの限界。自分だけが変わっても上手くいかなかった

1 1

2023.7.27

1年半ほど前に突然、高熱と皮疹の症状が出て、指定難病の成人スティル病(成人スチル病)と診断されました。今回は、都内でWeb制作会社を経営している私が、病気の前後でどのように生活を変えていったか、そして、仕事に復帰していく過程について書いていきます。

執筆:もーこ

こんにちは、もーこと申します。

都内でWeb制作会社を経営しております。1年半ほど前に突然、高熱と皮疹の症状が出て、指定難病の成人スティル病(成人スチル病)と診断されました。

今回は、病気の前後でどのように生活を変えていったか、そして、仕事へ復帰していく過程について書いていきます。仕事復帰するにあたり、病気になる前と働き方を変えていく必要がありましたが、そこには大きな壁がありました。

自分ルールを決めて生活する

病気になって、今までの生活と大きく変わったことがあります。

朝、昼、夜(できれば決まった時間に)薬を飲まなければならない、薬の副作用で免疫力が低下しているため外出や人と会うことは避ける等、日常の生活で気をつけることが増えたことです。

また、治療を継続しているため、2週間毎に通院する必要もありましたし、何より、病気が再燃しないようにするため体調に気を配りながら過ごすことが求められました。

体調に気を配りながら過ごすといっても、医師から何かを制限・禁止されることはなく、治療中の過ごし方の決まりもありませんでした。私は「体調に気を配って過ごすには、具体的にどうしていくのがよいのだろう」と、自分で考えることになりました。

「具体的な決まりがないままだと、今までと何も変わらないかもしれない」と感じた私は自分の中で生活上のルールを設けることにしました。

▪基本行動方針のルールは以下の通りです。

・自分のための時間を毎日確保する
・1日1日を大切に過ごす
・自分の身体を守り、無理は絶対にしない
・ご飯は必ず家族と一緒に食べる

▪病気との付き合い方のルールも決めました。

・自分ルールを決めて守る
・できること、できないことを把握する
・リスクを周りにも共有し、理解してもらえるようにする

ルールは「基本行動方針」という形でまとめ、「生活リズムを作る」「やり過ぎない」「身体第一」ということを意識しました。

病気になる前の私はほぼ毎日出勤しており、深夜まで仕事をしたり、夜遅く帰ってから食事をするなど生活のリズムができているとは言い難いところがありました。そういったところを見直して毎日のリズムを作っていくようにしました。

「自分のための時間を毎日確保する」は、今までできていなかったことだったため特に意識しています。

仕事をしていると集中するあまり不調に気づけないまま時が過ぎてしまうことも多くありました。今はあえて「何もしない」時間を作ったり、やりたいことを考えたり、机に向かわない時間を作るなど、自分自身に目を向ける時間を増やし、やることを詰め込みすぎない1日を考えるようになりました。

「病気との付き合い方」は、働く上で周りとどのように接していくかを考えたものです。私は会社のメンバーや一部のお客様にも病気のことを開示していました。病気を抱えながら働いていく上で、お互いにどのようなことに配慮したら関係性を続けていけるのかや、どうしたら一緒に働く上でのリスクを減らせるのかを考えました。

こうしたルールや方針を決めておくことで、判断に迷う時は思い出して行動することができました。

記録して可視化する

病気になってから、私は2種類の記録をつけるようにしていました。

1つ目は、自分の時間の使い方についての記録です。仕事の時間、睡眠の時間、食事の時間、その他で色を分けて、1日の時間の使い方が分かるようにしました。


↑仕事復帰をしてから実際に記録していたもの


自分の行動を見えるようにすることで、「この日は休憩が少ないな」や、「この日は少し仕事の時間が長かったな」などがひと目でわかるようになりました。

2つ目は、体調の記録です。朝の体温や体重、薬を飲んだ時間、そして「朝起きたら少し膝が痛い」などその日に気になったことを記録していきました。この習慣のおかげで、細かな体調の変化にも気づきやすくなりました。

「記録すること」で自分の行動が可視化され、毎日の生活リズムや体調の変化がひと目でわかるようになりました。

自分の中で設定していたルールを守れているかをチェックするためにも、記録は有効で、自分の行動が目に見える形で把握できると、ルールから外れてしまいそうな時に自分で気づけるようになってきました。

リモートで「経営」はできない

自分のルールを決めて、記録をとり続けることで毎日のリズムが確実にできていきました。仕事への復帰も進んでおり、自宅からフルリモートで体調を見ながら徐々に働ける時間を増やしていきました。

私の仕事はWeb関係ということもあり、言ってしまえばパソコンさえあればどこでも仕事ができてしまいます。

加えて、当時は新型コロナも変異株が出て感染者が増加していた時期で、世間は「まだ外出に気をつけよう」というムードもありました。会社でも出社は週1回程度にしており、お客様との打ち合わせもリモートで行うことが通常になっていました。

私は体力が落ちていて通勤が難しい上に、副作用の影響で外出に対する不安があったため、自宅で働ける環境はとても助かっていました。

ただ、フルリモートで勤務を始めて3ヶ月程経った頃からだんだん違和感が出始めました。この頃は週5日フルタイムで仕事をしていましたが、徐々に会社メンバーと自分との間に距離を感じるようになってきて、日に日に会社の中で自分だけ取り残されたような気持ちになってきました。会社メンバーとのコミュニケーション不足が表面化してきたのです。

3ヶ月ほどのリモートワークの間に人間関係が薄れてしまったのでした。入院の時と合わせると、5ヶ月以上は社員や会社に関わるメンバーと対面で接していない状態でした。

同じ時期に、別チームのリーダーから指摘をもらいました。私が見ているチームとそうでないチームで差が出ているというものでした。「会社のメンバー全員にフォローが行き届いておらず、コミュニケーションにも偏りが出ているのではないか」という危惧の声でした。

今思い返せば、自分の体調管理で精一杯になっていて、他人を見る余裕がなくなっていたのです。社長として会社全体をまとめる役割が果たせていない状態になっていました。

加えて、コミュニケーションの内容にも問題がありました。「フルリモートとなってもコミュニケーションの量は減らしたくない」と思い、チャットやオンラインの会話で毎日コミュニケ―ションを取るようにしていました。

「文字だけでは伝わらないことも多いし、感情がわかるような方法が良い」と思い、なるべくオンラインで顔を見せながら話すように心がけていましたが、問題はコミュニケーションの量ではなく、その内容にあったのです。会話の内容が業務上のやりとりばかりになっていました。

以前は事務所に毎日出勤しており、社員全員がいる場で話をしていました。仕事の話だけではなく、最近あった話や趣味の話など、仕事以外の雑談も含めて皆で話すことも多くありました。

時には雑談が発展して会社の今後の話になることもあり、そのなかで互いの「思っていることを素直に話せる場」が作られていました。それがオンラインのみのコミュニケーションだと作りにくくなっていたのです。

「皆で気軽に話せる場」がなくなってきたことで、会社メンバーと私の間に距離があき、互いに「これから私たちはどの方向に向かっていくのだろう。このままで良いのだろうか」という不安に変わり、モチベーションの低下が起きていました。

この出来事で、同じ空間で会話できる「場」が果たしていた役割は大きかったのだなということに気づきました。皆の言葉が集まることで、経営に必要な意見交換の場となっていたのでした。

「リモートのみでは業務はできるが、経営はできない」と感じた瞬間でした。

自分だけが変わっても上手くいかなかった

今まで私は病気になる前と「働き方を変えよう」とルールを作ったり、フルリモートを選択して自分自身の働き方や考え方を変えていきました。そうすれば、仕事に復帰をしても、身体第一で無理しないように働き続けられる、と考えていました。

でも、実際はうまくいきませんでした。

自分が変わっても、周りは変わっていなかったからです。むしろ私だけが変わったことにより、周りとズレが出てきてしまったのです。そして、これは周りが悪いわけではありません。

また、社長という立場の人間が働き方を変えることは周りへの影響も大きいということも分かりました。少人数の会社だからということもあると思いますが、1人の働き方が変わることで会社全体に及ぼす影響の大きさを強く感じることとなりました。

組織を変えていく

そうは言っても、私が病気になる以前の働き方に戻すことはできませんでした。

体力的に厳しかったことはもちろんですが、前の働き方に戻しても根本的な解決にはならなかったからです。働き方については私一人の問題ではなく、チームや会社全体で考えていかなければならないことですし、会社としてどうしていくのがよいかを考える必要性が出てきました。

「働き方を変えることは簡単ではない」というのは自分を含むまわりの働き方にも少なからず影響があるからです。

この「うまくいかなかった」ことで会社の経営に関わるメンバーと話し合いを行った結果、会社組織を見直していこうという結論になりました。

これから会社をどのような形にしていくか、前向きに会社のあり方を考えていく。私自身も今後会社とどう関わっていきたいのかを考え直すことになりました。

今度は会社として変革する時がやってきました。

Text by
もーこ twitter note

1982年生まれ。Webデザイン会社を経営。2021年、手足の発疹と39度の高熱が数週間続き、指定難病である成人スティル病と診断される。その後ステロイド服用による治療をしながら仕事復帰。
病気になったことで、ハンデがあっても働くことの選択肢を増やしたい。病気とつき合いながらも自由な働き方を選んでいきたいと強く想い活動を開始する。

このライターが描いた記事

関連記事

障がい者雇用特化型の求人サイト「パラちゃんねる」新規登録受付中!!

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! ADHD編

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! 車いす編

マンガで分かる!採用担当者必見、採用前・面接・採用後など場面別のポイント全部解説! ASD編

LINE 公式アカウント友達募集中! ID:parachannel