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重度障害者の一人暮らし活動 行動編2

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2021.8.12

高校を卒業し就職先が決まりました。ヘルパーさんの手配を終え、「さあ、いよいよこれから出勤するのだ」と張り切っていたところ、通勤問題が出てきたのです。初めての出勤日が迫っている中、通勤するための準備をまとめてみました。

執筆:佐々木 美紅 Miku Sasaki

一人で通勤できるのかという不安

私は脊髄性筋萎縮症という、生まれつきの病気のため、電動車いすで生活しています。

脊髄性筋萎縮症とは、体幹、腕、脚など全身の筋肉を動かす脊髄の細胞に異常があり、筋力が低下していく進行性の難病です。一年間の期限付きの仕事が決まりましたが、「一人で通勤できるのだろうか」という不安が出てきました。そこで、私は仕事が始まる前に通勤の練習しました。



通勤の練習。車いすで行きやすいルート探し

高校を卒業するまで入院していた私は、一人で公共交通機関を利用することは、ほとんどありませんでした。

通勤に不安があるので、できればヘルパーさんに移動を手伝ってもらいたかったのですが、予め支援の内容が決められているので、制度上、それ以上のことは頼めませんでした。

職場には一人で行かなければなりませんが、筋肉疾患のある私にとっては一苦労です。

例えばどんなことが困るかと言うと…。


  • 道路の小さな段差でもタイヤが引っかかり、体のバランスを崩す。
  • 駅に到着してからも、力が入らずエレベーターのボタンを押せない。
  • ドアが開けられない。
  • 横断歩道の信号のボタンに手が届かない。
  • 切符を購入できない(電子マネーって便利です)。
  • 改札にカードをかざせない。

また、通勤にどのくらいの時間がかかるのかも想像がつきませんでした。そのため、試しに一度、会社まで行ってみました。



  • 自宅から最寄駅まで車いすで20分。
  • 電車で二駅で職場の最寄駅に到着。
  • 職場の最寄駅から車いすで20分。

たくさんの選択肢がある中で「どのルートなら車いすで進みやすいのか」も探しましたが、たとえば、段差の多い道は怖いため、なるべく地下の道を通っていくなどの工夫をしました。


  • 地下通路でも自動ドアであるか?
  • 手動ドアなら、人通りは多いか?
  • 地上へ出てから職場までの距離は近いのか?

一人で通勤することのハードルの高さを感じました。それでも、安全に通勤できる経路を見つけられて一安心していたところ、次なる問題が出てきました。

朝の通勤時間帯乗車拒否。

あらかじめ駅に連絡したところ「朝の通勤時間は大変混み合っていて、危険なので乗らないでほしい」と乗車拒否をされてしまったのです。

私の当時の仕事は朝8時45分から15時15分まででした。

帰りは乗車を許可してくれたのですが、朝はどうしても安全面を保証できないと言われてしまったのです。そこで私は朝の通勤時に、介護タクシーを利用することにしました。


▲最近増えてきた、電車内の優先席・フリースペース


通勤だけで給料が消えてしまう問題

私は電動車いすのまま乗れるスロープ付きの介護タクシーを利用していました。介護タクシーは、2種類の料金がかかります。通常のタクシーなどにもかかる距離制運賃(または、時間制運賃)と、乗降介助などを受けることで発生する介護サービス利用料です。2種類の料金を合わせると、朝の通勤のタクシー代だけで毎回、約4000円ほどかかってしまうのです。

一ヶ月に22日出勤すると、約9万円。

私は当時生活保護を受けていたので、通勤費も必要経費として認めてくれましたが、あまりにも通勤代が高いので、職場の近くに引っ越すように提案されました。

そこで私は、すでに実家で一人暮らしをしていましたが、会社の近くに家を借りて暮らすことになったのですが、家探しも簡単ではありませんでした。それは次回、書かせてもらおうと思います。

まとめ

通勤一つを例にしても、車いすで通りやすいような段差の少ないルートや、筋力があまりなくてボタンを押せない私でも通れるルートを探すのは一苦労でした。

また、混雑している時間帯は車いすでの電車の利用が困難であったり、介護タクシーは料金が高額だったりと様々な想定外のできごともありました。

通勤は大変でしたが、困難があったからこそ色々な方との接点ができました。そこで人見知りを解消できたと思います。

見知らぬ方に「すみません、ドアを開けてもらえますか?」とか「エレベーターのボタンを押してください。」など、声をかけないと一人で通勤できなかったのです。

でも、笑顔で助けてくれる親切な方が多く、顔見知りになってエレベーターのドアを積極的に抑えてくれ「今日は暑いですね。」など話しかけてくれるのも嬉しかったです。

そして、助けを求めたら力を貸してくれる方がいるのだと自信にもつながりました。

脊髄性筋委縮症のため、電動車椅子。コミュニティFMラジオで番組を担当。十三年務めた旅行会社で、通勤とテレワークを経験。障害者の就労、恋愛、結婚、アルコール依存症の母と過ごした日々などを、発信。体は動かないが世界とつながりたい。NHK障害福祉賞優秀賞。ライターとして執筆にも力を入れている。

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