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ダウン症の妹ときょうだい児の私~1

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2022.7.25

鬱とパニック障害を患う私と、ダウン症の妹。
それにまつわる私たちの暮らし方や、思いなどを数回に渡ってお届けしたいと思います。

執筆:和泉屋(いずみや) izumiya

現在離れて暮らしている私の妹は、ダウン症です。
幸い1人でできることが多い人で、今は生活介護の施設でお菓子などを作ったり併設されているカフェで接客をしたりと、昼間はしっかり働いています。

妹は私よりも5歳下で、とてものんびりとした性格。

私に娘が生まれた時には本当に喜んでくれて、娘が8歳になった今でもお泊まりに行くと一緒にアニメのDVDを見たり、CDを聞いたりとたくさん遊んでくれます。

昼間は一生懸命働いて姪っ子の面倒もよく見てくれて、家でも自分のことはある程度きちんとやり、ダウン症だからなんなの?と思うくらい普通に生活しているようにも見える彼女。

その彼女のことについて、私は姉として幼い頃からいろいろな思いがありました。

今は妹とは一緒に暮らしていないため、年に数回顔を合わせるという付き合いですが、幼い頃は当たり前ですが毎日一緒に過ごしていました。

けれど心臓や目の疾患にはじまり、風邪を引きやすかったりと妹はなにかと病気がちでした。

私は手のかからない5歳上の姉として扱われていたようで、妹が幼稚園から小学校の間は特に「後回しにされている」と感じていました。

妹が幼稚園…ということは私は小学生ですが、父方の祖父母と両親は小学生の私の“しっかりさ”を過信していたように思います。

妹がはじめて長く入院することになった夏、私は幼稚園の年長でした。

上野駅まで大人と一緒に行き、そこから母方の祖父母が住む福島県まで新幹線で1人で向かい、一夏を福島で過ごしました。

その後は1人で行けるとわかったので、長期休みはだいたい1人で福島へ行き祖父母や従兄弟と一緒にいたのですが、今考えると幼稚園や低学年の子どもを1人で新幹線に乗せるなんて考えられませんよね。

家族も妹の世話で、それだけ追い詰められていたんだろうと思います。

ですが、私は1人で新幹線に乗る以外にも日常でかなり「後回しにされている」と感じていて、特に記憶に残っているのが…

小学校低学年の夏休み、近くのお寺で大きい夏祭りがあるのでどうしても行きたかったんです。

でも夕方から大人たちに頼んでも取り合ってもらえず、当時から虐待されていた父親にも頼みました。

家族に何回も頼んで回りましたが、やはり誰も夏祭りには連れて行ってくれず…

最後には親がお風呂に入っている最中ドアの前で泣きながら、お願いだから連れて行ってくれと叫びましたが無視。

思えばその頃も、妹の具合がよくなかったんだと思います。

大人も疲れていたのでしょう。

ある時、小学校の友達が親におねだりをしたと聞きました。私の持っているおもちゃと同じものが欲しかったそうです。

その家のご両親は友達に「和泉ちゃんの家は妹に障害があってかまってもらえなくてかわいそうだから高いおもちゃを買ってもらえるんだ」と言ったそうです。

それを聞いた時に、ショックというよりも妙に冷静になり「私は世間から見るとかわいそうなのか」と納得しました。

「妹に障害があってかわいそう」
「妹がああだからかまってもらえなくてかわいそう」

そんなふうに見る人もいる、と気づいた出来事でした。

中学生になった時には同級生に、「家族がダウン症なんてみっともなくて恥ずかしいだろうからかわいそう」と言われたことも。

その頃にはもう他人に“障害を持つ家族”について。話すのもめんどうくさくて笑ってやりすごしたのを覚えています。

後回しにされるばかりの姉である私は、不満とストレスがたまっていきます。周りからの心ない言葉や、世間の視線にも疲れていました。

けれどなぜか、私は妹のことを恥ずかしいと思ったり「邪魔だ、普通の妹ならよかった」と思ったことはありません。

それは彼女の穏やかな性格のおかげなのか、私が単純にそういう考え方なのか。

障害について深くは考えていない幼い頃から、妹のことを恥ずかしいとは思っていません。それがいいことなのか、悪いことなのか私にはわかりません。

ただ、私たちはそんな姉妹です。

そんなふうに育った、私と妹。そして、最終的には離婚して母子家庭となった時に、家庭を支えていた母。

私たちの関係は父親からのモラハラ、虐待でちょっとずつ変わっていきました。

つづく

フリーランスのWEBライター。父親からの虐待を受けて育ち、パニック障害・鬱・不眠などの精神疾患があり手帳3級所持。現在はワンオペ育児をしながら、在宅ワーク中。23年一緒に暮らした猫を看取ってからは3人暮らし。母親業と仕事と家事でいつも疲労困憊。パンを焼いたりミシンを使ったり、手仕事が好き。「障害がありながら母として働く」ことの現実を綴っていきたい。

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