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高次脳機能障害を抱える僕が大切にしている報連相について。

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2023.9.7

僕は左半身まひと高次脳機能障害を抱えながら、障害者雇用枠で働いています。今回は、身体障害と高次脳機能障害のある僕が、障害者雇用で働く上で大切にしている報連相についてです。

執筆:山田 稔

「報・連・相」は、社会に出て初めてとても大切な言葉だと気付かされた人も多い言葉かと思います。僕もそのうちの一人です。

僕は左半身まひと高次脳機能障害を抱えながら、障害者雇用枠で働いています。

半身まひと比べて、高次脳機能障害は周囲の人にとって見えづらく、理解が難しい障害だと感じています。何で困っているかが伝わりづらいと、「何の仕事ができるか」もわかりにくくなってしまいます。

今回は、身体障害と高次脳機能障害のある僕が、障害者雇用で働く上で大切にしている報連相についてです。


僕はこれまで障害者雇用での採用を希望して多くの企業の面接を受けてきました。先輩の障害者社員が活躍されている企業もあれば、障害者社員をあまり雇用した経験がない企業もあります。

僕が今働いている企業も、僕の住んでいる区域での重度障害者の採用は初めてでした。そのため「どんな仕事を任せてもらうか」や「どうやって周囲の社員に障害について知ってもらうのか」は、お互いに手探り状態だったと思います。

働き始めてからも、「何ができるか」ということを採用担当の方と何度も話をしながら、あれをやってもだめ、これをやってもだめというように繰り返し繰り返し様々な仕事に挑戦してきました。この辺は障害者雇用の難しいところだと僕も感じています。会社に理解を得るためにある程度粘り強く見守ってもらう期間が必要になることもあります。

もちろんその期間は会社の戦力というにはほど遠い状態のため、生産性という部分だけで切り取れば、戦力になっていないと感じられることはやむを得ないだろうと思います。

「うちの会社では障害者雇用は難しい」「教育する人間がいない」「やってもらう仕事や作業がない」という声があがり、障害者雇用に対して消極的になってしまっている現実も分からなくはありません。

そのような難しさに対し、「報連相」は役に立つのです。

「報告」は自分の仕事内容や状況を上司に伝えることであり、上司はその報告をもとに1日当たりの仕事量を計算することができます。「連絡」は、自分が今やっている仕事について伝えることであり、その精度や習熟度を理解してもらうことにつながります。「相談」は自分の障害特性によってこの部分ができない、難しいということを上司や同僚に理解してもらうことができます。

報連相は、自分の障害特性と仕事の相性を伝えるためにも大事なのです。

また、僕は高次脳機能障害の中でも短期記憶障害を抱えており、短期と名前がつくだけあって、一瞬でいろいろなことを忘れてしまいます。

以前の会社で電話応対を任されていたとき、保留ボタンを押した後、誰から誰にかかってきた電話なのかわからなくなってしまい、注意されることが何度もありました。

今の会社では、面接で高次脳機能障害の障害特性で2つ以上のタスクを同時に処理することが困難なことを伝えて、そのことを了承してもらった上で入社しました。

今の業務に電話応対は含まれていないため、ストレスを感じることなく仕事に集中できています。このような会社からの配慮や自身の努力による歩み寄りによって障害者雇用として長く働いていく環境が整うのではないかと僕は思っていますし、僕自身そのように努力してきました。

こういった配慮も、自分から障害特性について伝えた上で相談をしなければ、なかなか実現しないものだと思っています。

それだけではありません。僕にとって、毎日報連相をするための時間は簡単に自分の仕事へのスタンスや悩み、やる気などをアピールしてオープンに話すことができる有意義な時間です。悩みを解決する場と時間が与えられているようなものだと思っています。慣れてくると弱音を吐くこともありました。

同僚からは「えっ!?」「そんなことで悩んでたの?」という反応を受けることもしばしばで、蓋をあけてみると、自分の障害特性で悩んでいることは意外なほど周りに伝わっていなかったのです。

一人で悩んでいるうちはうまくいかなかったけれど、同僚からの提案で解決したことや改善されたことも多くありました。仕事を進める上でも、有効だったと思っています。

そして、僕自身の周りからは見えづらく、自分からは伝えづらい高次脳機能障害をオープンにしていくことができました。


障害特性によっては周りに見えづらく、わかりにくいというものは数多くあると思います。でも、僕の経験で言えることは自分が思っているほど、いい意味で障害特性について考えないし勉強しているわけでもないということです。

一番で唯一の理解者は自分自身です。

報連相は、自分の障害特性について周りに気軽に理解してもらうきっかけや新たに興味を持ってもらう最高の場になる可能性を秘めていると思っています。障害者雇用の場面では、思っている以上にうまく機能するのです。

今回は障害の配慮のアプローチに報連相はとても有効的だということを僕自身の経験則からコラムにさせて頂きました。いろいろな意見、やり方、障害があるため一概には言えませんが何か参考になればうれしいです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

Text by
山田 稔

身体障害者で3人の父親。身体にハンディキャップを抱えながらも人生も子育てもどっちも楽しみたいとトライ中、しかしどちらも大きな壁ばかり、乗り越えられない壁はないと信じて頑張る44歳のパパ。

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