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僕が前向きにいろいろな人に相談できる理由

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2023.10.10

僕は左半身まひと高次脳機能障害を抱えながら、障害者雇用枠で働いています。もともと、自分の困っていることについて正直に伝えられなかった僕ですが、少しずつ考えが変わってきました。

執筆:山田 稔

「今、困っていることはありますか?」

月に1度必ず行われる僕の面談で聞かれる言葉です。

僕は左半身まひと高次脳機能障害を抱えながら、障害者雇用枠で働いています。入社時に支援センターの方が「面談を必ず実施して欲しい」と頼んでくださり、月に1回の面談が設定されました。

もともと、自分の困っていることについて正直に伝えられなかった僕ですが、少しずつ考えが変わってきました。この会社で働き始めてから7年以上経ちますが、今ではこの面談があってよかったと感じています。


最初の頃は面談で上司から困っていることについて聞かれても「正直に言うことは自分は仕事ができない人間だと言っているようなもの。障害者雇用でマイナスなことをであまり言わないがよいのではないか。」と考えていました。

しかし、入社して2、3か月過ぎた頃に、そのつけが回ってきました。本当はできないけれど「できます」と答えていたことが積み重なって、ミスが増えてしまったのです。

その時、ようやく僕は「このままではダメだ。どうすればこの問題を解決できるだろう。わからないことは、もっと早く質問できるようにしたい」と考え、毎日どのようなミスが出たのかをノートに書き出して保存しておくようにしました。

僕は上司に就業時間が終わる頃に時間を取ってもらえないかと頼みました。その日に起きたミスを報告し、どうすればミスが起きる確率を少なくすることができるかをフィードバックしてもらうようにしたのです。

フィードバックのための時間をとってもらうことは、他の社員の時間を使ってもらうことになるので、生産性を下げてしまう提案だったかもしれませんが、現在の会社はそれを承諾してくれました。数年たった今でも毎日とはできませんが、僕が希望すれば定期的に相談できる体制をとってくれています。

会社の人は「こんなことを言っても大丈夫かな」と遠慮しているように感じました。伝え方には苦労していたと思います。

働く期間が長くなってきたことで、フィードバックでミスを指摘しやすい環境が整ってきたと感じています。十分にコミュニケーションが取れるようになった今は、比較的厳しめのコメントをもらうこともあります。


率直なフィードバックはありがたいものですが、障害の症状や、その人の状況によっては落ち込んでしまうこともあると思います。

僕も以前は高次脳機能障害の影響で、今よりも喜怒哀楽の感情をコントロールができていませんでした。当たり前のことを注意されているだけなのに、なんだか自分が馬鹿にされているような気分になったり、「自分は会社には不必要な人間だ」と感じて落ち込んだりすることも多々ありました。

「自分のやっている仕事が会社の役に立っていないかもしれない」と感じることは、障害者雇用の現場に限らずともつらいことです。

そんな時に、僕はよくお世話になった障害者の就労支援の方の言葉を思い出していました。

「障害者雇用では無理をして会社の生産性を上げることばかりを考えなくてもよい。そんなことをすれば逆に病気になってしまう。障害者の立場で多様性の一部になり、その会社の人たちと働けているだけでいい。そうやって働ける障害者が増えれば、今後障害者雇用をする企業が増えていくかもしれない。そうなることで大いに役に立ってると言えるんですよ。」

この言葉に支えられたマインドが自己肯定感へとつながり、長くモチベーションを保ってこられたのかもしれません。障害者雇用枠で働く人にとって「自己肯定感を持てるか」は非常に繊細で大きな問題だと思います。


僕は仕事の流れの中で今のような状況になっていますが、会社側に何かを頼むことも難しい場合も多々あるかもしれません。隣の人に助けてもらったり、心が許せる同僚に話していったり、少しずつでよいと思います。動き出してアクションを起こせば、必ず誰かが助けてくれるものですし、見ていてくれています。

その積み重ねがハンディキャップを抱えて中途採用で入社した重度障害者の僕が今、気づいたことであり、伝えられることです。そしてこれは、僕だからできたことではありません。

真面目にやっていれば誰かが必ず見ていてくれる。困った時でも頼めばきっと誰かが助けてくれる。そう信じて僕は頑張っています。

今回は僕の会社に対するアプローチや、仕事をする上でのマインドについて書かせていただきました。今障害者雇用で働いている方やこれからチャレンジする方の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

Text by
山田 稔

身体障害者で3人の父親。身体にハンディキャップを抱えながらも人生も子育てもどっちも楽しみたいとトライ中、しかしどちらも大きな壁ばかり、乗り越えられない壁はないと信じて頑張る44歳のパパ。

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