無理と頑張りの境界線
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2023.9.1
統合失調症を発症して、幻聴や妄想などの陽性症状が落ち着いた後に現れたのは、強烈な怠さや無気力感に襲われる、陰性症状と呼ばれる症状でした。
陰性症状が少しよくなってきて、気力の芽が出始めた時に困ったのが、無理することと頑張ることの違いがわからなかったことです。
今回は無理することと頑張ることの境界線について、私なりの考えや頑張り方のコツをお話したいと思います。
執筆:大福 麦子 daifuku mugiko
統合失調症の私が幻聴や妄想などの症状が落ち着いた後に襲われたのは、強烈な怠さや無気力感が現れる陰性症状でした。
陰性症状が徐々によくなってきて、気力の芽が出始めた時に困ったのが、無理することと頑張ることの違いがわからなかったことです。
周囲からは「無理は禁物」と言われていましたが、回復するためにはある程度努力をしなければなりません。
したいと思っている努力が必要な頑張りなのか、してはいけない無理なのかの違いがわからず、結局無理をして寝込むことを繰り返していました。
無理して失敗した就職
例えば、私は周りの反対を押し切って、就職活動をしていた時期があります。
病前の自分に戻りたいという執着心、回復を急ぎたいという焦りから、完全に体調が回復する前から就職活動をしていました。
就職はできましたが、やっぱり体力・気力がついていかず、数か月で退職することになりました。
自分の思っている病状と現実のキャパシティにズレがあり、失敗したパターンです。
私の場合、3歩進んだつもりでも2歩下がってしまったり、このような失敗を繰り返したりして、だんだんと自分のできる範囲が見えてきました。
回復しかけている時はキャパシティが不安定なので、自分が「できそう」「やりたい」と思っても、実際にやってみると大きな反動がでることがあります。
何か新しいことを始めたい時は、周囲の人によく相談して話を聞くことをお勧めします。
医師や家族は自分以上に客観的に自分のことを見て、判断していることが多いです。
身近なちょっとの頑張りから始めよう!頑張り方のコツ
回復しかけている時は、一足飛びでやったことのないことにチャレンジしたり、病前の状態に一気に戻したりするのではなく、周囲と相談しながら自分のできる「ちょっとの頑張り」を探ると良いでしょう。
私が考える頑張り方のコツを紹介します。
ー 1. スモールステップで進める
例えば主婦が療養中にお休みしていた家事を再開させたい場合、掃除や洗濯・料理などあれこれ全部をやるのではなく、料理を一品から作ってみて徐々に品数を増やす、洗濯物を干すことから始めるなど、その人に合わせた頑張りを段階的に調整していくと、取り組みやすいです。
ー 2. 疲れたら休める環境を整えておく
新しいことを始めるとどうしても、疲れやすくなります。
頑張ってみても疲れたら休んで良いし、途中でやめてもかまわないという環境を用意しておくと、逆に継続しやすいです。
疲れたと思ったらリラックスして休めるよう、周囲の人に理解や協力を求めておくと良いでしょう。
ー 3. 「もう少し頑張れる」一歩手前でやめておく
頑張りはじめると、気力・体力がゼロになるまで振り絞ってしまう場合があります。
そうすると予後の反動が大きくなって、長いお休みが必要になります。
余力がまだある「もう少し頑張れる」の一歩手前でやめておくと、反動が少ないです。
誰のための頑張りなのか?無理と頑張りの境界線
療養の辛さから、無理をしてでも回復したいと焦ってしまう時期があります。
「周囲の期待に応えたい」「何もできない自分が情けない」と感じることがあるかもしれませんが、焦りからの頑張りは容易に限界が訪れます。
周囲の評価や誰かのためではなく、自分が本心から今の自分のためにそうしたいと思えるかどうかが大切です。
ゆっくりと着実に目の前の一つ一つを大切にして、今いる環境で自分にできることを積み重ねていきましょう。
ある日振り返ってみると「こんなに前に進んでいた!」と回復を実感する時が来るはずです。