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全盲の私が職場でお願いした配慮とは?在宅勤務の事務職体験談

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2023.10.7

全盲の私は以前、在宅勤務で事務の仕事をしていました。その職場でどんな業務を担当し、どんな課題を感じていたのか。どんな配慮をお願いしていたのか。振り返ってみます。

執筆:山田 菜深子

全盲の私は以前、在宅勤務で事務の仕事をしていました。その職場でどんな業務を担当し、どんな課題を感じていたのか。どんな配慮をお願いしていたのか。振り返ってみます。

私にとって欠かせない存在のスクリーンリーダーやその他の支援機器についても紹介します。参考にしていただけたら嬉しいです。

働きやすい在宅勤務

全盲の私が以前携わっていた仕事、それは事務職です。8年間、教育関係の会社で働いていました。

この会社で私が所属していたのは、在宅で働く障害者のチーム。時々会議などのため出社することもありましたが、通勤の必要はほとんどありませんでした。これが、とてもとてもよかったところです。

満員電車でエネルギーを消耗することがないので、万全の状態で作業に取り組める。職場環境も、周囲に気兼ねすることなく自分好みにアレンジできる。非常に集中力の高まる働き方でした。

人間関係の悩みも少なかったように感じています。同僚とのやり取りはメールやオンライン通話で行っていたのですが、ちょうどよい距離感でした。

文字起こし業務を担当

そんな環境で主に担当していた業務は、文字起こし。会議や勉強会、インタビューなどの録音された音声を文字化するというものです。例えば社内報の記事を作成するためのインタビューが行われたときなどに、私たちの出番がやってきました。

またネット上での情報収集、簡単なデータ入力などの業務も行っていました。

ただ、大きな課題もありました。本当は担当業務の幅をもっと広げたかったのですが、なかなかうまくいかなかったのです。「この業務にこういう形で関われそうです」といった提案ができればよかったのですが、会社全体の様子を把握するのは難しく、断念せざるを得ない状況でした。

手の空いている時間も少なくなかったのですが、それを有効に活用できなかったのが悔やまれます。メリットの多い在宅勤務ですが、この点には注意が必要です。


お願いしたのはスクリーンリーダーの購入

働き始めるにあたって、会社にお願いしたのはスクリーンリーダーの購入です。スクリーンリーダーとは、視覚障害者がパソコンを操作する際、画面に表示された内容を音声などで知るためのソフトウェアのこと。これを導入することで、私も会社支給のパソコンを使用できるようになりました。

ただ、会社では独自のシステムが使われており、操作制限が多いため、作業を進めにくい場合もあります。その点を考慮して、私だけでなくチームメンバー全員、個人所有のパソコンを併用することが認められていました。非常に助かりました。

そのほかにも便利な支援機器を使用していましたが、それらはすべて自分自身で購入したものでした。

あってよかった支援機器

では具体的に、どのような支援機器があれば働きやすいのか。紹介していきます。

①スクリーンリーダー

前述したように、視覚を使わずパソコンを操作するためのソフトウェア。代表的なものに、「PC-Talker」や「JAWS」などがあります。

PC-Talkerは国内でもっとも普及しているスクリーンリーダー。視覚障害者の操作性を重視したつくりになっていて、初心者にも使いやすいというのが特徴。オフィスソフト、メールやインターネットのみを使用する業務であれば、これで十分対応できます。

JAWSは世界最強のスクリーンリーダー。社内システムを使用する場合など、ほかのスクリーンリーダーでは対応が難しいケースでも、JAWSを活用すれば読み上げが可能になることがあります。ただ、その分高額です。

②音声読書機

スキャナやカメラで書籍や書類の文字を読み取り、音声に変換する読書機。誰にも頼ることなく、読みたいものの内容をほぼ正確に知ることができます。代表的なものに「よむべえスマイル」や「とうくんライト」などがあります。同じような機能を持つスマホアプリもあります。

③点字電子手帳

ディスプレイ部分のピンが上下に動き、点字を表示する情報端末。テキストファイルやWordファイル、PDFファイルなどのテキスト部分を自動的に点字のデータに変換できます。メモを取ることも可能。パソコンやスマートフォンと接続することもできます。代表的なものに「ブレイルメモ」や「ブレイルセンス」などがあります。


重要なのは自分に合った働き方

便利な支援機器を駆使し、働きやすい環境を整えれば、視覚に障害があってもしっかり仕事ができる。8年間の会社員生活で、私はそう実感しました。

もちろん、私のような働き方がすべての視覚障害者に適しているというわけではありません。さまざまな事例を参考にしながら、1人1人自分に合った働き方を模索することが重要だと思います。その選択肢の1つとして、私の体験談をお役に立てていただければ嬉しい限りです。

1987年生まれ。先天性全盲。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。Amazon Kindleにてエッセイ集『全力でゆるく生きる~全盲女子のまったりDays~』を配信中。またブログやYouTubeで全盲当事者のリアルな日常を発信中。

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