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半身麻痺の私が友人と電車で一泊二日の旅行をして気づいたこと。

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2024.1.11

私は40歳を過ぎてから発症した急性心筋梗塞のカテーテル手術の合併症で脳梗塞になり、左半身麻痺の障害を負いました。昨年、私は障害者になってからはじめて、友だちと一緒にですが、電車を使って一泊二日の旅行に出かけました。今回は、その旅行の際に気づいたことなどを書いていきたいと思います。

執筆:市川 潤一

私は40歳を過ぎてから発症した急性心筋梗塞のカテーテル手術の合併症で脳梗塞になり、左半身麻痺の障害を負いました。そのことはここ「パラちゃんねるカフェ」で書き始めてから何度も書いてきました。

障害を負う前には当たり前にできていたけれど、障害者になってからできなくなったことがたくさんあります。そのひとつが旅行です。

昨年、私は障害者になってからはじめて、友だちと一緒にですが、電車を使って一泊二日の旅行に出かけました。今回は、その旅行の際に気づいたことなどを書いていきたいと思います。


今回、一泊二日で出かけるきっかけになったのは、いつも私のことをいろいろと世話してくれている友だち二人からの誘いでした。二人は、市民ランナーとしてよくマラソンの大会に参加していて、「せっかくなら三人で行こう」と誘ってくれたのです。もちろん、私は走ることはできないので、沿道で応援します。

今までも二人の参加する大会に応援に行ったことはあったのですが、そのときは友だちの運転する車に乗せてもらい現地まで移動していました。

今回の大会も車で向かう案はあったのですが、比較的シリアスランナーが参加する大会だったので、「帰りに運転するのはしんどい」という話になり、電車や新幹線で前日入りして一泊し、走った後にまた電車で帰るという方法にしました。

ちなみに、私は1種2級の身体障害者手帳を持っているので、電車の乗車券の控除が受けられ、私の分と介助者一人分が半額になります。計算すれば分かる話ですが、少し安くなった乗車券代を含めて、合計金額を三等分のワリカンにするという方法をとりました。

切符の手配や出発する時間は二人の翌日の本番に合わせて(二人は比較的本気で走っているので食事や睡眠などの管理にもストイックなのです)、食事や睡眠の時間の管理なども含めて、二人にとって良い時間に到着できるようにスケジュールを組んでくれました。

ホテルは全国展開している某ビジネスホテルを利用しました。車椅子などでも利用できる段差が無い上にトイレや浴室に手すりが設置してあるバリアフリー対応の部屋があったので、私はその部屋を利用しました。

荷物に関して、私は走らないので大した準備は必要ありません。旅行用には、普段から使っているリュックと、斜めかけにできる貴重品を入れたショルダーバッグの二つを持っていきました。

リュックの中にはちょっとしたタオルや着替え、スマホの充電器、毎日服用している薬など、最低限のものを入れて背負っていましたが、そのリュックは終始、二人が持っていてくれました。二人には、私がリュックを背負って移動する姿が危なっかしく見えたのかもしれません。

ビジネスホテルのカードキーは、私のような半身麻痺を負った身体障害者にとって、ドアの鍵の開け閉めが楽でいいなと思います。入ってすぐのところに設置してあるカード挿しにカードキーを入れれば、電気がつくのも、暗闇でつまずく危険性が減り、安心・安全です。


移動は、特急電車と新幹線を利用しました。私たちの住んでいる町から特急を使って新幹線に乗れる駅まで行くのですが、移動が大変なのは小さな駅です。

新幹線停車駅があるような大きな駅ならエレベーターもあり、乗り場まで移動するのも比較的安全なのですが、私たちの町のような小さな駅だと、ホームに移動するまで距離がある上に、エレベーターがないので階段を使う必要があります。

私は普段から杖と装具を使いながら歩いていることもあり、歩く速度が他の人よりも遅いです。今回の旅行でも「電車に乗り遅れてはいけない。二人に迷惑はかけられない」と思うことがたくさんありました。焦って筋緊張が上がり、かえって歩行が不安定になることが多かった気がします。

歩行が不安定になる理由は焦りだけではなく、駅の構造にもあります。ホームはフラットなように見えて、雨が降ったときに水を流すためか、案外傾斜がついていて歩きにくく感じました。

新幹線のホームは、新幹線が通過するときの風圧がすごく、「新幹線のホームで歩くときは、できるだけ線路から離れたところを歩かないと、風圧で巻き込まれる恐れもあるかもしれない」と感じました。

新幹線も在来線も、ホームからの乗り降りに苦労しました。ホームと車両の間にけっこう隙間がある上に、段差もあります。手すりも電車の扉の内側に付いているものしかないので持ちにくくて、乗り降りには友だちに先に私の前に立ってもらい、肩を貸してもらって、友だちの肩を手すり代わりに乗り降りをしなければなりませんでした。

また、車内も、特急電車はもちろん、新幹線もかなり揺れるので、私は走行中にトイレに行くことができませんでした。いくら日本の新幹線は振動が少なく静かと言っても、乗り物であることには変わりなく、私のような片麻痺の身体障害者だと走行中の車内を移動するのは難しかったです。これからは極力トイレの近くの席をとろうと思います。

そういう事情もあるので、前回の記事で2024年の目標として「今度は以前住んでいたところに行きたい」などと書きましたが、電車で一人旅をするのは乗り降りの問題でまだ難しいかもしれないと感じています。

もっと電車の乗り降りの練習をするか、もしくは高速バスを使うか、または一応まだ運転免許は所持しているので、車で移動するのが現実的なのかもしれません。


今回の一泊二日のお出かけで、障害者になる前によくライブなどで遠征もしていたことを思い出しました。布団やシーツがきれいな、ホテルのベッドの居心地の良さとかも思い出したので、また、少しずつ出かけたりできるようになれればいいなと思います。

今回は友だち二人が参加するマラソン大会を応援することがメインだったので、ご当地グルメ等を味わう余裕はありませんでしたが、次の機会があれば、その土地の美味しいものなども楽しみたいと思っています。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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