視覚障害者の外出を助ける「同行援護」ってどんなサービス?その魅力は?
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2023.9.9
視覚障害者にとって大変な外出。それを助けてくれる福祉サービス、「同行援護」をご存じでしょうか。全盲の私はこれを大いに活用し、お出かけを楽しんでいます。同行援護とはどんなサービスなのか。私はどのように利用し、どんな魅力を感じるのか。綴ってみます。
執筆:山田 菜深子
視覚障害者にとって大変な外出。それを助けてくれる福祉サービス「同行援護」をご存じでしょうか。
全盲の私はこれを大いに活用し、お出かけを楽しんでいます。最初は少し抵抗がありましたが、今ではなくてはならないサービスです。
同行援護とはどんなサービスなのか。私はどのように利用し、どんな魅力を感じるのか。綴ってみます。
同行援護の概要
視覚障害者が外出するとき、支援者(ガイドヘルパー)に同行してもらい、サポートを受けることができるサービス。これが同行援護です。
移動の支援はもちろん、移動に必要な情報の提供、排せつ及び食事等の介護、代筆や代読など、さまざまなサポートが受けられます。「障害者総合支援法」に定められた障害福祉サービスで、利用のルールは全国共通です。
社会生活を送る上で必要不可欠な外出、余暇活動など社会参加のための外出がその対象で、経済活動に関わる外出(仕事中に発生する移動など)は対象外となっています。通勤や通学にも利用できません。
同行援護を利用するためには、まず市町村の福祉の窓口に相談して手続きを行い、同行援護サービスを提供している事業所と利用契約を交わす必要があります。どの事業所と契約するかは自分で選択できます。
「気を使う」より「楽しい」が大きくなった
生まれつき目の見えない私が同行援護を初めて利用したのは、22歳のとき。実家を離れて大阪に住み始めたばかりの頃です。
新たな環境での生活。その中で悩みの種となっていたのが、外出に関することでした。慣れた場所であれば1人で歩くことはできるのですが、慣れるまでにはそれなりの練習が必要になるし、慣れたからといって安全に移動できるとは限らない。周囲の友人などにサポートを依頼する方法もあるけれど、それには限界がある。どうしたものかと頭をひねっていたのです。
そうしてたどり着いたのが同行援護でした。明るい未来に向かって1歩踏み出そうと、申し込みの手続きを行いました。
とはいえ、最初は気が進みませんでした。人と関わるのが得意ではない私。ヘルパーさんと出かけるなんて気を使うし、あまり積極的にお願いしたくはない。どうしてもというときだけにしよう。そういうつもりで申し込んだのでした。
それから十数年。今も同行援護を利用しているのですが、不思議なんです。積極的にお願いしている自分がいるんです。
最初は「気を使う」が心を満たしていたのですが、今はそうじゃない。いつからか「楽しい」のほうが大きくなっている。ワクワクしながら外出できているんです。
現在は買い物やスポーツ施設、美味しいもの巡りなどに出かけるとき、ヘルパーさんにサポートしていただいています。充実した日々です。
1人では得られない「奇跡の出会い」が魅力
同行援護があって本当によかった。私はいつもそう感じています。特にそう感じるのは、「奇跡の出会い」を得たときです。
例えば買い物をするとき、私1人だったら予め買おうと決めていたものを手に取るだけで終わってしまいます。思いがけない発見をすることはほとんどありません。
でも、ヘルパーさんが一緒なら「これ安いよ」とか「こんな面白いものがあるよ」などと教えてくれる。それをきっかけに素晴らしいものを知って、「ついつい予定外のものを買っちゃった」という体験ができたりする。
お財布的にはよくないかもしれませんが、こういうことって必要なんですよね。生活に潤いが生まれます。
ヘルパーさんが一緒なら、季節感をしっかり味わうこともできます。今どんな花が咲いているのか、それがどんなふうに美しいのかなども教えてもらえるからです。自宅近くの公園を少し散歩するだけでも、ほっこりしたり感激したりの連続です。
どんな情報を伝えてくれるのか。それはヘルパーさんの興味関心や考え方によって変わってきますが、そこがまた面白いんですよね。いろんな角度から世界を見ているような、ちょっと得した気分になれます。
また、「安心安全な旅ができる」というところも同行援護の大きな魅力です。昔の私は「1人で知らない場所へ行って冒険する」なんてこともよくやっていたのですが、歳のせいか、もうそんなエネルギーは湧いてきません。
ヘルパーさんが一緒なら、ちゃんとたどり着けるだろうかと心配になったり、道に迷って身動きが取れなくなったりすることはない。本当にありがたいことです。
まずは知ってほしい
同行援護は、私たちを支えてくれる素敵なサービスです。外出に不安を感じている視覚障害者の方には、ぜひぜひ利用していただきたいと思います。
ただ、地域によってはガイドヘルパーや事業所が足りていないという課題もあります。
まずは多くの方に、同行援護を知っていただきたい。そして多くの方に、ガイドヘルパーという仕事に興味を持っていただきたい。利用者の1人としてそう願っています。