「寂しがり」で「消えたがり」だからこそ他者への共感を大切にしたい
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2023.2.11
10年以上前から急性副鼻腔炎(ふくびくうえん)の症状に悩まされていたため、昨年の10月末に思い切って手術をした。今回は、しんどかった入院期間に心の支えになってくれた大好きなスピッツの曲を紹介しながら、苦しみの真っ只中にいる人への接し方について改めて考えたことを書こうと思う。
執筆:月尾 いる
はじめに
10年以上前から急性副鼻腔炎(ふくびくうえん)の症状に悩まされていたため、昨年の10月末に思い切って手術をした。
手術そのものは全身麻酔で眠っているうちに終わってしまったが、大変なのは翌日以降だった。痛み止めの薬を飲んでいても耐えられないほどの痛みはあるし、薬の副作用でお腹を壊すし、体調に引きずられてメンタルも落ち込んでしまい、本当に散々だった。
今回は、しんどかった入院期間に心の支えになってくれた大好きなスピッツの曲を紹介しながら、苦しみの真っ只中にいる人への接し方について改めて考えたことを書こうと思う。
副鼻腔炎治療の憂鬱な手術後
まずはじめに、副鼻腔炎とは蓄膿症のことで、ウイルスや細菌、アレルギーにより副鼻腔の粘膜に炎症が起きている状態のことだ。
私の場合は鼻詰まりや鼻水が止まらないなどの症状はなかったのだが、炎症ゆえに左頬から目の周囲にかけての痛みが酷く、年間を通して耳鼻科に平均5〜10回通院していた。
手術は全身麻酔で3時間ほどと聞いていたが、目が覚めるとすべて終わったあとだった。手術後すぐは麻酔が効いていたため、痛みはあまりなかったように思う。
「案外楽勝だったな」と調子に乗っていたら、翌日から悪い方向へと風向きが変わってしまった。痛み止めの薬の副作用でお腹を壊し続けるのに痛みは引かず、鼻からは血がとめどなく溢れ続ける……
あまりの痛さに耐えきれず、看護師さんに追加で薬を求めるも、「もう少し時間を空けましょうね」と宥められてしまい終了。メソメソしながらベッドに戻るも、じっとしているとかえって痛みに反応してしまう。本当に散々だった。
気を紛らわすために何かできないかと考えた結果、「そうだ!推し活、しよう」、と某旅客鉄道会社のキャッチコピーのような言葉が浮かんできたので、大好きなスピッツの曲を聴くことにした。
現代社会の不安を霧に例えた曲『紫の夜を越えて』
聴いていたのは2021年にリリースされた『紫の夜を越えて』。これまで私はパラちゃんねるカフェでスピッツの曲をいくつか紹介してきた。
『紫の夜を越えて』は明るい曲調ではないが、前向きになれる歌詞だ。
草野マサムネさん自身も、新型コロナウイルスが蔓延する世の中の不安を霧に例えて、「今後その霧が晴れていくイメージを持ってもらいたい」とのコメントを出している。※1
君が話してた 美しい惑星は
この頃僕もイメージできるのさ 本当にあるのかも
いつも寂しがり 時に消えたがり
画面の向こうの快楽 匂いのない正義 その先に
紫の夜を越えていこう いくつもの光の粒
僕らも小さな ひとつずつ
なぐさめで崩れるほどの ギリギリをくぐり抜けて
一緒にいて欲しい ありがちで特別な夜
たしかに私も不安になると寂しくなって消えたくなるし、慰めてくれる誰かの存在を期待しては心が崩れてしまいそうになる。
「紫(色の霧)」が「不安の感情」ならば、「ありがちで特別な夜」は「他人からはよくある悩みに思えても、自分にとっては抜け出せない辛い時間」を指しているのかもしれない。
「紫の夜を越えた先にある美しい惑星をイメージすること」は、「不幸を乗り越えた先に理想的な世界が待っているのを期待すること」と私は受け取った。言い換えると、「止まない雨はない」といったところだろうか。
ひねくれ者の私は、これまでしんどい状況にいる人に向けてよく言われる「止まない雨はない」という言葉に対して「苦しみが終わるのを期待するのと、雨が止むのはわけがちゃうやろ」と、まったく共感できなかった。それなのに、『紫の夜を越えて』の歌詞には共感できる。不思議だ。
でも、これからの人生を何も期待せずに生きていく方がずっと辛いだろうから、未来に希望を持てるのなら、それに越したことはない。
苦しみには寄り添うことが大切だ
退院してから3ヶ月経つが、ありがたいことに手術後の経過は順調だ。少なくとも副鼻腔炎に関しては、『紫の夜』のような辛い時期を越えたのだろう。
とはいえ、発達障害や鬱の症状はなかなか軽減されにくいので現在進行中で悩んでいるし、歌詞にある「美しい惑星」のような理想的な世界も見つけられていない。
一方で、苦しみも不幸もない人のほうが稀なことを考えると、私を含めてみんな自分のことばかりに意識が向き過ぎている気もする。
だから、「苦しんでいるのはあなただけではないから、我慢しなさい」や「不幸な人はたくさんいるけど、あなたはまだマシだ」などと言われるケースもあるのだろう。私自身も苦しみを抱えている人に適切な言葉をかけられているか自信はない。
でも、本来はこの曲のように、「あなたも苦しいよね。私も同じだから、一緒に乗り越えていこう」と、他者に対して配慮できる言葉がけが必要ではないか。
私もだれかに、共感したり寄り添ったりできるような温かい人になりたい。
参考サイト※1
https://utaten.com/specialArticle/index/6051
スピッツ「紫の夜を越えて」不安な毎日を優しく照らす歌詞の意味を考察! | 歌詞検索サイト【UtaTen】ふりがな付