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音声で多くの情報が得られるようになった今、点字って本当に必要?

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2022.8.6

先天性全盲の私が使用している文字、それは点字です。今回は、点字が生まれた経緯やその魅力、一般の文字と違う特徴などをお伝えし、この文字の必要性をアピールしちゃいます。

執筆:山田 菜深子

先天性全盲の私が使用している文字、それは点字です。

これはとっても素晴らしい文字。でも今、パソコンやスマホが普及したことなどにより、あまり使われなくなっています。点字を愛する私としてはちょっぴり残念。

そこで今回は、点字が生まれた経緯やその魅力、一般の文字と違う特徴などをお伝えし、この文字の必要性をアピールしちゃいます。


ユーザーは意外と少ない

視覚障害者が読み書きする文字といえば、やっぱり点字。そんなイメージ、ありませんか?

確かに、点字はさまざまな場所で使われていて、見えない・見えにくい人にとって重要な文字ではあります。でも実は、すべての視覚障害者がそれを読み書きしているわけではないんです。

厚生労働省の「平成13年身体障害児・者実態調査」によると、視覚障害者の点字識字率はほんの1割程度、約3万人なんだとか。

パソコンやスマホなどの読み上げ音声によって多くの情報が得られるようになった。高齢になってから視覚障害者となる人が増加していて、その場合の点字習得は難しい。そういった理由から、点字使用者の比率は下がってきているようなのです。

こう書くと、「じゃあ、点字ってもう必要ないんじゃない?」と思われた方もいらっしゃるでしょうか。いやいや、そんなことは決してない。決してないんです。点字使用者の私としてはそこを強調したいわけです。

フランスで誕生した点字

昔は、視覚障害者も一般の文字を使っていました。紐の結び目などでその形を表現し、触って読めるようにしていたのです。

ただ、そういったものは、読み取るのに時間がかかる。また視覚障害者が自分自身で書くのは不可能に近い。その問題を解消するため、フランスでルイ・ブライユによって編み出されたのが点字だったのです。

これならスムーズに読める。自分の手で書ける。誕生したばかりの点字に触れた視覚障害者の感動はきっと相当なものだったでしょう。

点字が正式に文字として認められると、早速世界中に広がっていきました。そして非常に大きな役割を果たすこととなったのでした。


点字があってよかった

私は幼い頃に点字を覚え、長年親しんできました。交換日記をしたり、方程式を解いたり、国家試験を受けたり。いろんなことを点字で経験しました。今も仕事などで点字に触れています。

もちろん、無理して学ぶ必要は全くありませんが、点字の読み書きができれば何かと便利だと思います。

街中でも、点字を見かける機会が増えましたよね。階段の手すりとか、駅の自動券売機とか、エレベーターのボタンとか。

それがあることで、私たちは誰かの助けを借りることなく情報を得ることができるんです。素早く、手軽に。こういうものに遭遇すると、私も「点字が読めてよかった」と実感します。

点字の表示がなかったらどうなるか。とても困ることがあります。例えば、慣れない場所でトイレに立ち寄ったとき。

私が以前実際に経験したことですが、流そうと思ってそれらしいボタンを押してみたところ、何も起こらなかったんです。「あれ、おかしいなあ」とパニック状態。

どうしたものか。次に取るべき行動を考えていたら、「大丈夫ですか?何かありましたか?」とスタッフの方が飛んで来られるではありませんか。何事かと驚くばかりです。

その方によると、「今、非常ボタン押されましたよね」とのこと。ようやく状況が飲み込めた私は、ただ平謝りするしかありませんでした。

そんなことがあってからというもの、流すボタンを探すのには慎重になりましたが、最近は「流す」と点字で書いてくれている場合が多いので安心できます。

点字は本当に魅力的な文字です。ただ単に生活を支えてくれるというだけではなく、いいところはほかにもいろいろあります。

当然のことですが暗い所で読める。楽な姿勢で読める。それに見た目もちょっと模様みたいでおしゃれでしょ?

そうそう、子どもの頃は「覚えやすくてラッキー」などという魅力も密かに感じていましたね。


漢字は使わない

どうして、「覚えやすくてラッキー」だったのか。それは、一般の文字とは違う独特のルールがあるからです。

点字では、基本的に漢字は使われません。ひらがな・カタカナの区別もありません。頭に入れるべきことが少なくて済むわけですね。

でも、これはこれで大変なところも。同音異義語には要注意です。読みながら頭の中でうまく漢字変換しなければなりません。

日本語は同音異義語の宝庫。わかりにくいな、とぼやきたくなることもしばしばです。まあ、そんなところも含めて点字は面白いのですが。

それから……、え、もうお別れの時間ですか?まだまだ書きたいことがいっぱいあるのに。まあ、このままいくと点字愛が暴走しすぎて大変なことになりそうですし、この辺で終わりにしておきましょうか。

というわけで、皆さんももしよかったら点字に注目してみてください。きっと楽しい発見があるはずですよ!

1987年生まれ。先天性全盲。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。Amazon Kindleにてエッセイ集『全力でゆるく生きる~全盲女子のまったりDays~』を配信中。またブログやYouTubeで全盲当事者のリアルな日常を発信中。

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