PARA CHANNEL Cage

装具を取り巻く縦割り制度が片麻痺の身体障害者を苦しめる。

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2023.8.8

私はこれまでパラちゃんねるカフェで左半身麻痺になってからの生きづらさについて書いてきました。今回は、補装具を作るまでの過程や、装具にまつわる困難について書いていきたいと思います。

執筆:市川 潤一

私はこれまでパラちゃんねるカフェで左半身麻痺になってからの生きづらさについてまとめてきて、前回は日常生活の中で不便を感じることについて書きました。

歩行を補助してくれる装具にも触れていたのですが、多くの人は装具についてあまり詳しく知らないと思います。実際、私も麻痺を負うまではよく知りませんでした。

今回は、補装具を作るまでの過程や、装具にまつわる困難について書いていきたいと思います。


装具を作るにあたって、制度的に非常に面倒なことが多い、というのが私見です。

装具はオーダーメイドが基本です。「片麻痺があるから作りたい」や「壊れたから作り直したい」と思って簡単に作ることができるものではありません。装具を作るためには、制度的に非常に面倒な手続きが多い上に時間もかかります。

装具は、国家資格を持つ義肢装具士が制作するため、医師の診断書が必要になることがあります。診断書は整形外科の医師が書いてくれることが多いのですが、私の場合は事情が少し異なりました。心筋梗塞で救急搬送されて、手術中に脳梗塞になってその後遺症として麻痺が残ったため、主治医は循環器の医師でした。

「装具制作のための診断書を書いてください」と伝えても、「自分には書き方がわからない」と整形外科に回されてしまいました。

また「どの業者がその病院に出入りしているか」によっても装具制作のスケジュールが大きく変わってきます。私は事前に装具について調べて、評判のいい義肢装具業者を見つけたのでそこに装具作りをお願いしたいと伝えたところ、「うちではその業者は使っていないから」と断られてしまいました。

特定の業者を使いたい場合は、その業者が出入りしている病院を調べた上で、そこの病院の診察を受けてからでないと装具作りを頼めないこともあるようです。

病院側の手続きや、提携している業者との関係性があるからかもしれませんが、装具は毎日使う存在です。もう少し、装具を使う人自身が選べるようになると助かるなと感じました。


装具にはさまざまな種類があります。どこが本人の力を使えて、どこにサポートが必要なのかによって、形や大きさも変わってきます。太ももあたりから片足をすっぽり覆うような長下肢装具や、靱帯損傷などの時につける膝装具、片麻痺などで足首の可動域がなくなり、内反がひどいときに付ける膝下の短下肢装具などがあります。

私も短下肢装具をつけていますが、プラスチックのような素材でできているために、夏場などは汗をかくとふくらはぎあたりの付け心地が気持ち悪くなります。

そのために夏でもハイソックスを履いたり、ズボンの上から付けるなどして対応していましたが、最近は足首から膝下までをカバーできる、装具装着者用の吸水性もあるカーフソックスなどが販売されているのでそれを重宝しています。

装具を付けるとどうしても足のサイズが長さも横幅も甲も大きくなるので、自分が履きたい靴がなかなか見つけられなくなり、装具に合わせて靴選びをすると極端にサイズが大きくなり、左右で違う靴を履くことになることもでてきて、決して見ていていいものではなくなることも出てきます。

汗対策だけでなく、装具が肌に直接あたるとすねの部分がベルトで擦れてしまうので、肌の保護の意味合いもあります。夏場は暑くても、清潔や快適さを保つためにも対策が欠かせません。


最初にも書きましたが、装具の制作に関しては、もっと改善されなければならないようなことが多いと思います。装具は一度病院などで作ると、退院後もその後何年も使う人が多いのですが、業者の人から「基本的に歩行の状態や耐久性のことも考えて、一年半ごとに作り替えるのが良い」という意見を聞きました。

もし、一年半ごとに作り直す必要があるのであれば、そのハードルが高いのはいかがなものかと思うわけです。

私も先日装具を付けている足が足底筋膜炎を発症し、痛みを感じるようになったので装具にインソールを付ける必要がありました。ただ、私のかかりつけの病院ではできなかったため、インソールを作ってくれる業者が出入りしている整形外科を受診しなければいけませんでした。「できれば、炎症が悪化する前にインソールを作りたい」と思っていたのですが、ずいぶんと手間と時間がかかってしまいました。

正直な話、装具を必要としている人にとって、装具の不調はありとあらゆる日常生活の基本的な動作に直結してくる問題です。もっと言ってしまえば、装具に不調があるままだと生活の満足度は下がります。

装具を取り巻く現状として、病院や業者などの専門家がいてくれること自体は頼もしい反面、担当者が分かれているが故に手続きがより複雑になり、緊急時の対応にも時間がかかってしまうという課題もあると感じています。

装具ユーザーとして、申請から修理に至るまでワンストップで相談できる窓口や制度ができるといいなと感じています。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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