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全盲の私が公共交通機関を利用するときに気を付けていること

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2023.8.12

私は全盲の視覚障碍者ですが、これまで白杖を使いながら様々な場所に行きました。盲学校を卒業してからの約35年間、単独歩行の経験を積み重ねてきたおかげで、一人で移動できる範囲が広がりました。今回は、私が公共交通機関を利用するときに気を付けていることについて書いてまいります。

執筆:小川 誠

私は全盲の視覚障碍者ですが、これまで白杖を使いながら様々な場所に行きました。

盲学校を卒業してからの約35年間、単独歩行の経験を積み重ねてきたおかげで、一人で移動できる範囲が広がりました。外出の際に同行援護のヘルパーを頼んだり、晴眼者の知り合いに付き添っていただくこともありますが、普段の通勤などは一人で電車を利用しています。

今回は、私が公共交通機関を利用するときに気を付けていることについて書いてまいります。

電車を利用する際は乗車位置に気を付ける


私が最もよく使う公共交通機関は電車です。毎日の通勤だけでなく、日々の用事があるときも利用しています。

旅行や外出などで新幹線の指定席のチケットを購入した場合などは、事前に駅員さんにお願いをしておき、座席まで案内していただいていますが、降りるときは自分一人で降りています。

電車を利用する際に気を付けていることは、乗車位置です。電車のドアの前であればどこでもいいわけではなく、私は下車するときに階段やエスカレーターの近くで降りられる位置を探しています。

何度も試行錯誤をして、下車後にスムーズにエスカレーターや階段にたどり着ける場所を覚えて乗車するようにしているのです。

初めて利用する駅だと、電車から降りたあと、どこに階段やエスカレーターがあるのかわかりません。そのため、電車に乗っている間に近くにいる乗客に「階段かエスカレーターは、降りて右の方でしょうか、左の方でしょうか」と尋ねて確認するようにしています。

近くに人がいないときは、降りたホームで行きつ戻りつしながら自分で階段などを探すようにしています。

ただ、電車は利用頻度が高い分、困った経験もあります。十数年前、初めて利用する駅に一人で行ったとき、駅員に乗車ホームまで誘導を依頼したのにも関わらず、30分くらい忘れられてしまった経験がありました。

もう一度改札に行き、誘導を依頼した旨を伝えたところ、初めて聞いたような対応をされてしまい、残念な気分になってしまいました。

その後、誘導していただくときに、丁寧な謝罪があり、気分は収まりました。初めて利用する駅は勝手が分からず、見えない私にとっては危険度も上がります。駅員の方にも事情があったのでしょうが、安全に利用できるように誘導をお願いしているので、そのことを知っておいていただけると助かります。

タクシーは、障碍者手帳やタクシー券で利用出来る


私の住んでいる地域では、タクシーを利用する場合、支払いのときに障碍者手帳を提示すると料金から1割引してもらえます。他にも、自治体からタクシー券を発行していただいて利用されている方もいます。

タクシーの値引きや、タクシー券などについては住んでいる自治体によって異なります。

他にも、私はNPO法人が運営しているタクシーのサービスを利用することもあります。その法人では、年会費を支払った上で移動距離の料金を支払う仕組みになっています。

障碍者手帳を持っている人や、外出が困難な人向けの介護タクシーや福祉タクシーもありますが、お住まいの地域によって法人やサービスは変わってくるかと思いますので、気になる方は一度調べてみることをおすすめします。

飛行機の乗り降りのサポートは手厚い


頻度としては高くありませんが、旅行のために何度か飛行機を利用したこともあります。

10年以上前の出来事ですが、飛行機を乗り降りするときにかなり手厚くサポートしてくださったことを今でも覚えています。

空港の手続きカウンターまでは、人に尋ねながらどうにか自力で到着したのですが、搭乗手続きが終わってから行き先のゲートを出るまで職員の方々に案内をしていただきました。そのときの職員の方たちの連携が素晴らしく、感動しました。

飛行機に乗るときは先に乗れるように、そして降りるときは一番最後に降りられるように案内していただきました。

現地に到着した後も高速バスに乗りたい旨を伝えたところ、親切に乗り場まで案内していただきました。

飛行機はそのときだけでなく、数回利用しましたが不快になった経験はなく、利用する度に「大変ありがたい」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

まとめ


長年に渡って公共交通機関を利用してきましたが、「時代によってさまざまな変化をし続けているな」と改めて感じます。便利になったと感じる事もあれば、不便になったと感じる事もあります。

今回は主に平時の公共交通機関の利用について書かせていただきましたが、災害などがあった場合はまた事情が異なってくると思います。

私自身、公共交通機関を利用していて、「もし、今、災害や事故が起きたらどうなるだろう」と想像することもあります。トラブルが起きた場合、健常者でも困ったり、混乱したりするでしょうが、視覚障碍当事者はより一層、困難になります。

見えないと、周囲の様子を認識するまでに時間がかかりますし、情報を得づらいからです。困った場合は、周囲の人に尋ねたり、サポートをしていただくことも多いですが、災害時などで周囲の方々に余裕がないとそのサポートも得づらくなってしまいます。

公共交通機関は、不特定多数の人たちが利用しています。「多くの人達が安心して交通機関を利用するには、どういったシステムで運営をすることが最適なのだろうか」と考えてしまいます。

バリアフリーと聞くと、ついつい建物やエレベーターといったハード面や、声かけをしたときの対応などに注目が集まりがちですが、私としては公共交通機関を利用している際の情報バリアフリーについても考えていただきたいと感じています。混乱時の情報提供のあり方について、どうしていったらいいのか、私自身も考えていきたいと思っています。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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