防災の日を前に振り返る、全盲で視覚障碍者の私の防災対策
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2023.8.31
私は外出先で「もし、今、災害や事故が起きたらどうしよう」と想像することがあります。今回は、全盲の私が実際に東日本大震災後の計画停電時に経験したことと、普段から非常時に備えて持ち歩いているものについて書いてまいります。
執筆:小川 誠
私は、全盲の視覚障碍者です。
私は外出先で「もし、今、災害や事故が起きたらどうしよう」と想像することがあります。
災害時は健常者も困ったり、混乱したりするでしょうが、視覚障碍者はより一層、困難になります。見えないことで、周囲の様子を認識するまでに時間がかかりますし、情報を得づらいからです。
今回は、全盲の私が実際に東日本大震災後の計画停電時に経験したことと、普段から非常時に備えて持ち歩いているものについて書いてまいります。
東日本大震災発生後の計画停電のとき
2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。私の住んでいる地域は震源地からはある程度の距離がありましたが、それでも困る場面はありました。
地震発生から3、4日後のこと、私が職場から帰ろうとしたところ、計画停電の影響で電車が動いていませんでした。私は家族に連絡して、駅まで迎えにきてもらうことになりました。
いつも通り駅に向かおうとすると、計画停電の影響で信号が作動しておらず、どうやら人が何人か立って交通整理をしているようでした。
私はなんだかわからずに信号待ちしていると、その一人に「渡れますからつかまって下さい」と声をかけていただき、一緒に横断歩道を渡ることができました。
初めて経験する雰囲気な上に、信号がわからず不安が大きくなっていましたので、声をかけていただき大変安心したことを覚えています。
見えないと周囲の状況がわかりづらいので、緊急時に適切な助言があると本当に助かることが多いのです。
災害時に備えて持ち歩いているもの
災害に対する備えとして家に防災グッズなどの準備はしてありますが、私にとってより困るであろうタイミングは外出時。私が普段からいざというときのための備えとして持ち歩いているものをいくつかご紹介します。
①身分証明書
まずは、身分証明書です。私の場合は外出時に災害に遭遇したときに役に立つかもしれないと思い、障碍者手帳と保険証を肌身離さず携帯するようにしています。
落としたり、無くしたりすると大変なものでもあるので、紛失しないように十分気をつけています。
②食料と飲料
出先で災害に遭遇したときに、家に帰れなかったり、コンビニなどのお店が見つけられなかったりする可能性もあるので、リュックには袋入りのチョコレートを2、3袋入れて持ち歩いています。完全に非常時用というわけではなく、普段から少し食べながら補充しています。
また、すぐに飲みたい場合でなくても、リュックの中には必ず1本飲み物を入れています。
③ウェットティッシュなどの衛生用品
私は全盲なので災害時移動している際に、いろいろな所に手で触れてしまうことが考えられます。触れた所が衛生的に悪いかもしれませんので、ウェットティッシュなどの衛生用品も少し多めに持ち歩いています。これも、普段から使用して補充するようにしています。
④スマートフォン充電用のモバイル・バッテリー
災害時の情報を取得するツールとしてスマートフォンを使うので、モバイル・バッテリーを持ち歩いています。これも、普段の充電用としても使っています。
以上が私が外出時に災害に遭遇したときのために持ち歩いているものです。これだけでは不十分かもしれませんが、いつも持ち歩けるものには限界があるので、なかなか難しいところがあります。
まとめ
個人ができる防災への備えは限られてきます。
視覚障碍者が被災した場合に重要なことは、情報取得、避難所への移動とそこでの生活、そして自宅に残ったときの支援などです。
例えば、避難所でのトイレや食料が支給される場所までの移動など、視覚があれば確認出来るようなことに支援が必要になります。
また、情報を取得するために重要になってくるのがSNSなどのネット情報ですが、全ての視覚障碍者がスマホなどでネット情報を確認できるわけではありません。全ての情報提供をネットに頼ってしまうとネットを使っていない人たちは取り残されてしまう可能性があるため、その人たちのフォローをどうするかも考えていかなくてはならないと思います。
確実な情報を届けることで、的確な行動と支援へと繋がっていくのではないでしょうか。「防災の日」を目前に控えた今、当事者を含めた、防災に対する仕組み作りを積極的に進めていただき、各種メディアで周知していけることを願っております。