弱視から全盲になった私は睡眠時、どのような夢を見るようになったのか
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2023.9.30
私は10歳くらいまでは弱視として過ごしていましたが、現在は全盲の視覚障碍者です。今回は私の夢の見方の変化について書いてまいります。
執筆:小川 誠
視覚障碍者同士の会話の中で、夜寝ているときの夢の話題が出たことがあります。
ある人は「全盲になってから、夢の中で色を見なくなった」と言っていました。視力があった頃と全盲になってからだと夢を見ているときの感覚がちがうようです。
私は10歳くらいまでは弱視として過ごしていましたが、現在は全盲の視覚障碍者です。今回は私の夢の中の感覚の変化について書いてまいります。
私が弱視だったころの夢の感覚
私は生まれて間もなく緑内障と診断されました。視力は弱かったものの両目とも見えていましたが、5歳の頃に受けた手術で左目を失明し、右目の視力は0.03程度になりました。小学校3年頃に視力が一気に落ちて、その後数ヵ月で全盲になりました。
全盲になってからの生活の方がずっと長いので、昔の記憶を辿らなければなりませんが、私が弱視だった頃は色のついた夢を見ていたように思います。
その頃の夢は映像を見るような感じで、視覚以外の情報はあまりなかった気がします。目が覚めた後も、目を閉じるとその直前まで見ていた夢の映像が浮かんでくることがありました。
全盲になってからの夢の感覚
全盲になってから見る夢は、弱視だった頃とはちがいます。映像が浮かんでくることはなくなりましたが、触覚や聴覚が強調されるようになりました。
例えば、点字を読んでいる夢でしたら、点字を触っている感覚があるのです。他にも、パソコンを使っている夢のときはパソコンのキーボードを触っている感覚があります。
弱視の頃も夢には音声がついていたと思いますが、全盲になってからは日常生活と同じくらいはっきりとした音として感じることがあります。人の声だけではなく、音楽が流れていたこともありました。
不思議なことに、夢の中の自分が現在とはちがう場合もあります。私は普段、白杖を使っていますが、夢の中では白杖を使わずに歩いていることもあります。確率的には白杖を使わずに歩いている夢の方が多い感じがします。
夢分析のことはよくわかりませんが、潜在的に弱視のころの何かが心の中に残っているのでしょうか。
そして、夢の中で、建物の中を誰かに誘導していただいていて目が覚めたとき、「今後、なにかいい事がある知らせかな」と思ったりします。
他の視覚障碍者から聞いた夢の感覚の話
私の周囲にいる中途で全盲になった人に夢の話を聞いてみたところ、人によって見る夢はさまざまでした。先ほどの私の感覚と似ている人もいましたが、中には「夢を見なくなった」という人や、「夢は見るけれど、忘れるようになった」という人もいました。
他にも、「夢の中でも暑い、寒いという感覚がある」と言っている人もいました。
現実離れをした夢を見る
晴眼者の読者の皆さんも、現実離れをした夢を見ることがあるかと思います。
全盲である私も、健常者の行う野球やサッカーをする夢であったり、紙に文字をすらすら書く夢を見たりすることがあります。私は晴眼者としての生活を送ったことはありませんが、潜在的な願望があるのかもしれません。
まとめ
これまで私は弱視の頃と全盲になってからの夢の感覚の違いについて意識して考えたことはあまりありませんでした。
私は夢分析に詳しいわけではありませんが、夢には心の中にある潜在的な思いが表れているような気がします。他にも、夢の中で視覚が失われると、代わりに聴覚や触覚の情報が増えるなどの気づきも得られたので、良い機会になったと思いました。
視覚障碍者も晴眼者と同じように、現実離れした夢を見たり、目が覚めた時の感情の変化を感じたりするものなのです。
これからも、よい睡眠でよい夢を見られるハッピーな日が更に増えればいいなと願っています。