視覚障害者の必需品・スクリーンリーダーってどんなもの?ユーザーの経験を踏まえてお伝えします。
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2023.11.11
視覚障害者がパソコンやスマホを操作するために使う、スクリーンリーダー。これはとても重要なものなのですが、いったいどのような機能を持つのでしょうか。スクリーンリーダー歴20年以上の全盲当事者が、これまでの経験を踏まえてそんな疑問に答えます。
執筆:山田 菜深子
視覚障害者がパソコンやスマホを操作するために使う、スクリーンリーダー。これは視覚障害者にとってとても重要なものなのですが、いったいどのような機能を持つのでしょうか。
誰でも使いこなせるの?すぐに習得できるの?使っていて困ることはないの?
スクリーンリーダー歴20年以上の全盲当事者が、これまでの経験を踏まえてそんな疑問に答えます。
音声や点字で情報が受け取れる
私の使っているパソコンやスマホ、喋るんです。全盲でも操作できるように、画面の内容を読み上げてくれるんです。点字ディスプレイを接続すれば、その内容を指で読み取ることだってできちゃうんです。
これは、特別なパソコンやスマホを使っているからではありません。「スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)」というものが入っているからです。
こうして文章が書けるのも、それのおかげ。例えば「きどう」と入力すると「キドウ」と読み上げられます。変換キーを押すと候補の字がいろいろと出てきますが、それもちゃんと説明してくれます。「起立するの起・起きる、動物の動・動く」というように。
実はこのスクリーンリーダー、皆さんの身近なところにあるんです。MacやiOSにはVoiceOver、AndroidにはTalkBack、Windowsにはナレーターというスクリーンリーダーが標準搭載されています。
またそのほかにも、例えば私の愛用するPC-Talkerなど、インストールして使用するものもあります。
ロボットみたいな声とは限らない
画面の内容を読み上げてくれるのは合成音声です。それはいったいどんな声なのでしょうか。
合成音声と聞くと、いかにもロボットという感じの声を想像してしまうかもしれませんが、そうとは限りません。人が話しているのかと思えるくらいなめらかで聞き取りやすいものもあります。そのなめらかな音声はバスの車内アナウンスやテレビ番組のナレーションなどでも活躍しているので、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
デビューのハードルは下がっている
ではこのスクリーンリーダー、すぐに習得でき、誰でも使いこなせるものなのか。私の経験から考えてみましょう。
私が初めてスクリーンリーダーの入ったパソコンに触れたのは小学生のときでした。20年以上前のことです。
操作は難しくなかったのですが、最初は少し戸惑いました。今とは違い、ロボット的な音声しか存在しなかったからです。イントネーションがおかしかったり、漢字の読み間違いが出てきたりして、読み上げられた内容を理解するのに手間取ることも少なくありませんでした。
それでもしばらく聞いているうちに慣れてきて、「この音声では速度が遅すぎるな」と感じられるようになりました。今は読み上げの速度をかなり上げて、可能な限り早く内容を把握できるようにしています。
スクリーンリーダーを使用していて感じるのは、どんどん使いやすくなっているということ。デビューのハードルも下がり、短期間で習得できるようになってきていると思います。
マウスは使わずキーボードで操作を行うなど、スクリーンリーダーの基本を身につければ、どなたでも十分使いこなせるようになるはずです。
前述したようにスクリーンリーダーにはさまざまなものがあり、それぞれ特徴があるので、用途や好みに合わせて適切なものを選ぶことが重要です。
写真や図は把握しづらい
便利なスクリーンリーダーですが、何でもしっかり読めるというわけではありません。
例えば写真や図に遭遇したとき。それがどんなものであるか、うまく把握できないことがあります。スクリーンリーダーには画像の文字を読み取るOCR機能も搭載されていますが、とはいえそれで写真や図が正確に理解できるとは限らないんですね。内容を説明する文章「代替テキスト」を必ず設定していただきたいな、と感じています。
また、だんだんと少なくなってきてはいますが読み間違いも悩みの種です。あるスクリーンリーダーで何かの記事を見ていたら、「シュルイトヨトミ」と読み上げられたことがありました。漢字を一文字ずつ確認すると、「種類豊富」と書かれている。そう、「豊富」は「ホウフ」とも「トヨトミ」とも読めてしまうんですよね。
また、「暇つぶし」が「カツブシ」と読み上げられたことも。それを聞いたときに間違いだと気づけたらいいのですが、鰹節と勘違いしたまま読み進めてしまったらこれは大変です。
皆さんもぜひ!
こんなふうにこまることも時にはあるものの、私たちにとってなくてはならないスクリーンリーダー。文句ひとつ言わず、必要な情報をどんどん伝えてくれることに、いつも感謝感謝です。
音声を聞きながらパソコンやスマホを操作するという作業。皆さんも1度、試してみませんか?新しい世界が開けるかもしれませんよ!