ライター業から学んだ、仕事で必須な「相手とのコミュニケーション」
1 1
2022.9.29
私はこれまで、自分が左半身麻痺の障害者になってからのことを主に書いてきました。今回は、会社や事務所に所属していたとき、または独立してフリーになってからの仕事の受け方で気をつけていたことなどについて、少しでも参考になればと思い書いていきます。
執筆:市川 潤一
私はこれまで、自分が左半身麻痺の障害者になってからのことを主にこちらで書いてきましたが、前回は病前にしていたライターや編集者の仕事の魅力について書きました。
さまざまな障害を持つ方の中には、なかなか就職が上手くいかず、家でもできるライターや編集者の仕事を志望する方もいるかもしれません。
今回は私が会社や事務所に所属していたとき、または独立してフリーになってからの仕事の受け方で気をつけていたことなどについて、少しでも参考になればと思い書いていきます。
障害があろうがなかろうが、ライティングや編集、撮影の仕事で何よりも重要なことは、クライアントや発注者の意図をしっかりくみ取って、仕事をすることです。
私は編集プロダクションに所属していたとき、「どんなに良い文章や写真でも、クライアントの発注に合っていなければ、それはゴミと一緒。」とパワハラ上等で厳しく育てられました。
今でもどのような仕事であろうが、わからないことはわからないままにせず、先方にうっとうしがられたとしても、「これはこういう意図でいいか、こういう意味でいいか、こういうやり方でいいのか」というのは極力自分が納得できてわかるようにしつこく確認を取るようにしています。
この確認を「手間だし向こうも嫌がるから止めておこう」と思ってやらないと、結局先方の意図に合わないものを納品することになりかねません。最初からやり直しになる上に「この人にうちの仕事は任せられない」と思われてしまうリスクもあり、次の仕事に繋がらなくなる危険性もあることを頭に入れておきたいものです。
また、ライティングの仕事では、他の人が書いた原稿を、新たに作り直すリライトという業務があります。ベースの文章はできあがっているので、自分で一から書くよりは簡単な作業に見えるかもしれませんし、「文末の表現だけ変えたりして、リライト完了」と思っている人もいますが、それだけでは不十分なこともあります。
リライトという作業は、人の文章を使って新しい情報を加え文章や原稿を作り出すことなので、少し文末の表現を変えて提出しただけでは、先方も、「全然変わってないじゃないか」という判断をすることになってしまうでしょう。
つまりここでも、「どこまで元の原稿に手を加えるのか。」などの確認が必要になってくるのです。
ライターの仕事を始めたばかりのころはこういったリライトの業務を多く発注されたり、回されることもあるので、経験を積みながら「先方がどこまでのレベルでのリライトを求めているのか」や、発注者の傾向をつかむこともできてきます。
仕事として受ける以上、どこまでいっても、相手(発注者やクライアント)との意思疎通・コミュニケーションの必要性は出てきます。
人によってはその作業が苦手な人もいるかもしれません。曖昧な要求を読み取ることが不得意だったり、相手から強めに要求されるとなかなかこちらから意見を言えなくなったりすることもあるとは思いますが、良い仕事をして、自分のことを売り込み、次の仕事に繋げていくためにこの意思疎通の作業は必要になってきます。
どんな小さく些細なことでも、自分が疑問に感じたことは、どんどん相手に確認していくべきでしょう。面倒くさいと思われるかもしれませんが、そこまで確認を取るということは、先方からすれば、真剣に仕事に取り組んでくれているということにもなります。
また、先方が勘違いしていたことや、間違っていたことを気づかせるきっかけにもなるのです。仕事を与える側と与えられる側という主従関係よりも、お互い、対等な立場で仕事をしていくためにも必要なこととなるでしょう。
このように書いていくと、ライティングや編集の仕事って面倒だなぁと感じる人もいるかもしれませんが、前回も書いたように、自分の文章や写真が取材者やお客さんに喜ばれるというのは、何ものにも代えがたい満足感や充実感があります。
さまざまな障害を持つ方の中には、なかなか就職が上手くいかず、家でもできるライターや編集者の仕事を志望する方も多いかもしれません。
しかし、今回書いてきたように、基本は相手とのコミュニケーションが大事になってきます。お題をもらって、それについてネットなどで調べて書くという仕事ももちろんありますが、質が高く、次に繋がる仕事をするという意味では、しっかりと発注元とコミュニケーションをとり、相手が望むものを納品するというのが一番の秘訣だと思います。