A型作業所に行ってみた、夏のある日のお話
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2023.9.11
A型作業所に見学・体験に行く機会がありました。そこで見たこと、聞いたこと、感じたこと。そんなちいさなお話をさせてください。
執筆:山田 彩緒
暑いあつい火曜日。
わたしはとあるA型作業所の前に立っていました。「←入り口」と書かれたほうへ歩みを進めると、どやっと人が。怖気づいている場合でもないので、すいません、と小声で呟き、のしのしと出入り口へ向かいました。
「本日、体験させて頂く山田です!」
「あら!ごめんなさい、なかで待っててもらえる?」
スリッパに履き替えて空いている席に座りました。先程のかたが戻ってきて、すらすらあ〜と設備の説明をしてくださいました。
お仕事は、室内の作業がメインではあるのですが、ハウスクリーニングに出掛けるかたもいらっしゃいました。受注制なので、その時々で内容は変わるとのことです。
「やってみてもらえないかしら?」
施設内に自動で刺繍する大きな機械があり、間違って縫い着けてしまったもの、機械で処理しきれない糸、を切って真っさらにする作業をやらせてもらえました。
ぼっそぼそにしてしまい、言葉も無く俯いていたら、
「もっと上手になるわよ」
にっこりと笑って仰るので、驚きました。
ちょっと嫌な顔をされるとばかり思っていたのです。
「わたしは文章が書けます」
わたしはそんなことを言いました。ぼっそぼそにした生地の、いえ、自分という人間の、挽回のつもりだったのかもしれません。
「好きなこと、得意なこと、その部分。そこだけ仕事に出来たら、素敵ね」
にっこりと、そう仰っていました。
「障害者」という枠組みのなか、まるで回遊しているかのように、差し障りなく仕事を回していく。誠実に、実直に。
…おひとかた、とても仲良くしてくださったのですが。仕事たのしいですよ。と笑んでいました。沢山のことを諦めてきたであろうかたの、眩しすぎる笑顔でした。
障害の種類も、重さも、みんな違います。日によっても違います。例え大きくない集団でも、まとまっていくのは難しいものです。
お邪魔したA型作業所は、ミーティングを多く、細やかにすること、個人のケアを早急にすること、を心がけているように見えました。
お仕事の受注、いっぱいきますように。と炎天を背に願ったのでした。
Text by
山田 彩緒
1985年生まれ。販売員経験6年。その後うつ病、統合失調感情障害躁うつ型へ。現在は猫と犬とともに、ゆるやかな日々を過ごす。