「はじめまして」がちょっと苦手なわたしのお話
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2023.10.16
初めてお会いするひとと仲良くなりたい、という少しの力みは、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
でも、「はじめまして!あなたはだあれ?」と無邪気には言えません。
今回は、はじめまして!のお話をさせてください。
執筆:山田 彩緒
9月からA型作業所(前記事より)に通っています。
作業所は、一般就労へ向けて訓練を行うところで、様々な障がいをもったかたと接点が生じます。何がそのひとのNGワードになるか分からないので、短い世間話にも思いやりが必要になることもあります。
あるかたはそれを、「余計なことを言ってはいけないと思っている。けど、話さないと分からないことも、ある」と。全体ミーティングで発言していました。
わたし自身、統合失調感情障害躁鬱型という長い病名をもっています。「つまり山田さんってどんなひと?」と問いかけられたとき、拙いながらもお話しできたらと思ってはいますが、前述した「余計なことを言ってはいけないと思っている」かたもいるので、その問いを口にしてくれるとは限りません。
こんなことがありました。
わたしはそのかたと、いま思えば“急いで”仲良くなろうとしていました。顔を合わせれば挨拶を欠かさず、時間があれば質問をぶつけていました。そのかたにとって迷惑だと気づいたのは、笑顔を向けてもらえなくなってからです。
それからは急がず、先ずは「お疲れ様でした」の声かけをしてみて、反応があれば明日は少し話せたらいいな、と思うようになりました。
ゆっくり、ゆっくり。
それから、また話す機会が増えてきました。世間話をふふふっとしていると、わたしは新しい環境に怯えていたんだな、と思いました。
さみしくて仲間が欲しかったのです。
また、こんなことも思います。
わたしが、あなたが、それぞれに悩み、それを誰にも話せないときは?
指導員さんに相談です。
わたしのいるA型作業所はことコミュニケーションに特化していると感じます。指導の他に、一緒に作業もしてくださるのですが、実際の作業手順を分かっていないと細かな指導はできません。
みんなの輪に入り、「ゆっくり、でも確実に」「このやり方なら早い?」と、いろいろな角度から、より詳しく、何度も丁寧に、指導してくれます。ですから自然と、冗談から相談まで言い易い流れができています。
過去、ひとりで悩んだからわたしは病気になったのかもしれないなと考えたことがあります。
誰かに相談することは、一旦自分で内容を引き受けて、ひとに話すことだと、いまは思っています。
仕事の。ひとの。いろんな空気で。わたしは作業所にいけない日が何日もありました。
それは“完璧にやろうと頑張った結果”だと分かりました。にんげんに完璧はないし、最初から上手くできたらちょっとこわいです。
ひとつでも何か持ち帰ることができたら…それは技術でも知識でも、経験でも。帰り道、夕映えがうつくしかったということでも。
寝床につく前、想い出すことがあれば、今日を生かしてもらえたと次の朝を迎えたくなります。
毎日が「はじめまして」のはじまりです。
Text by
山田 彩緒
1985年生まれ。販売員経験6年。その後うつ病、統合失調感情障害躁うつ型へ。現在は猫と犬とともに、ゆるやかな日々を過ごす。