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「リハビリ」という言葉に対する勘違いと運動の重要性

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2023.9.14

私はこれまで数回に渡って半身麻痺の不便さや、動きにくさなどについて書いてきました。今回は、私たちのような脳血管疾患を発症し、運動麻痺が残った中途障害者が直面するリハビリやトレーニングなどの運動について書いていきたいと思います。

執筆:市川 潤一

私はこれまで数回に渡って半身麻痺の不便さや、動きにくさなどについて書いてきました。

今回は、私たちのような脳血管疾患を発症し、運動麻痺が残った中途障害者が直面するリハビリやトレーニングなどの運動について書いていきたいと思います。


リハビリとは、運動機能を取り戻し、回復させるためのものです。

「脳血管疾患を発症してすぐリハビリをはじめれば、運動麻痺が残らない」などと言われることもありますが、そこまで単純な話ではありません。どれだけ麻痺が残るかは、その人の脳の損傷具合や箇所によるところが大きい上に、医療的リハビリが行える設備や技術・スタッフが揃っていることが大事なようです。

基本的に、運動麻痺が出てしまった場合は、その後一生付き合っていくことになることが多いのです。

脳血管疾患を発症するとまずは急性期病院で手術や治療をし、その後、リハビリを始めることになります。個人的にはこの急性期でいかに早くリハビリが受けられ、どこまで回復できるかが、その後、車椅子生活となるか、杖歩行などで歩く(というよりも動く)ことができるかの分かれ目だと思います。


急性期病院のあとは回復期病院で入浴や整容、場合によっては調理など日常生活を送るためのリハビリを受け、それが終われば家庭や施設などに退院していくという流れになります。

退院した後に、私が直面したのは「どうやってリハビリや機能維持訓練を続けるか」でした。ここは「私」ではなく「私たち」と言ったほうがいいかもしれません。当事者すべてに関わることです。

リハビリを続けたいとしても、病院は基本的に入院している場合しかリハビリを受けられず、通所でのリハビリを受け付けていないところが大半です。

そのため、退院後はデイサービスなどの通所リハビリを利用する人が多くなります。ここで注意したいのは、通所リハビリはあくまでも機能維持や出来る範囲での運動をするための施設であって、医療的なリハビリを受けて、機能回復をするというものではないということです。

たまに家族や当事者でリハビリのことをよく知らない人が、「何年も通ってリハビリしているのに、全然指が動かない」などと言うことがありますが、それは前述の理由があるからなのです。

あくまでも、通所リハビリ施設は現在の身体の機能を落とさない機能維持や運動、筋トレを主な目的とした施設なので、麻痺を回復させるところではないのです。

回復期病院を退院してしまうと、なかなか体を動かす機会がなくなり、ますます機能が低下していくこともあって、ただ家の中にいるリハビリ難民と呼ばれる状況にならないよう、家族やケアマネは通所デイサービス等の利用を勧めるのです。

デイサービス等の利用については、当事者でも賛否がわかれるところです。「リハビリ」という言葉を使うと、「そこを利用すれば、機能が回復するかもしれない」と家族や当事者が勘違いするケースが多くなってしまうと思います。

先ほども書いたように、デイサービスでのリハビリは動かなかった腕や指を動かすようにする急性期や回復期のリハビリとは別物です。

何もしないで放っておくと段々と関節が拘縮したり、痙性したりしていってしまうので、それを防ぐようなものです。

現状の関節の可動域を維持し、現在のADL(日常生活動作)やQOLが下がらないようにするものなので、ストイックな当事者は「機能が回復するわけではないのに自費でデイサービスなどの利用をするのは無駄。自分で歩くなど、ウォーキングなどの習慣をつけて、自分で運動をしないと意味がない」などと言う人も多くいます。


半身麻痺を負うと、意識的に体を動かす機会を作らないと運動量が減ってしまいます。身体を動かさないのに病気をする前と同じように食べていると体重が増え、ますます動きにくくなって、動かなくなるという悪循環に陥るのは、半身麻痺の障害者によく見られることです。

かくいう私も他人事ではありません。かなりメタボリックな体型な上に、以前サッカーをしていたときに健足の右膝の靱帯を切っていることもあり、「これ以上膝を損傷すると動けなくなるので、体重を増やさないでください」と医者からもきつく言われています。

家の中でも率先して家事で動くなどしたり、できるだけ食べるものに気をつけて食べ過ぎないようにする、食事でまかなえない栄養素などはサプリなどの補助食品を取り入れるなど、健常時には食事に気をつけるなどあまりやらなかったこともやるようになってきました。

身体を動かさないことで機能が落ちていき、ますます動かなくなっていく悪循環に陥らないためには、とにかく体を動かし、できるだけカロリーを消費し、動ける体で居続けるということが大事なのだと思います。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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