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リストカットへの無知と実際に見たもの

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2023.10.11

リストカットと聞いたり、実際に傷を目にした時に、どんな印象を抱きますでしょうか?

私自身が、昔々思っていたことを正直に言葉にすると、

『怖い』
『やばい人』
『なんで傷をつけるのかが全く理解不能』
『私は絶対にやらない』

というものでした(ごめんなさい)。

でも、自分が実際に入口に立った時に見えたものは、
どこにも出すことのできない苦しみと心の叫びでした。

執筆:愛

***編集部より***
※注意※
このコラムはリストカット経験者の当事者の体験や考えを伝える目的で作成しています。リストカット含む自傷行為を推奨する意図は全くありません。自傷行為でお悩みの方は必ず医療機関や支援機関等、専門家の助言を受けてください。

フラッシュバック症状がある方や、苦手な方はご注意いただきますようお願いいたします。
また症状についてはライター個人のものになります。症状は人それぞれ違いますので、専門家の方にご相談ください。
****************

私が自分に傷をつけるのに至るまでには、
心の傷が数えきれないほどに重なっていました。
いくつもの病気も併発して、いわゆるぐちゃぐちゃ状態。

傷をつけることが正しいか正しくないか、そんな事を言っていられるような状態でもなければ判断もできないような状態で、

『まさか私が…?』

そんな風に思いました。

心はとてもとても複雑で、つけた傷ひとつひとつをとっても、中身が微妙に違ったりしましたし、
心や病状の変化と共に、傷をつける意味が変わっていくこともありました。

私の場合、最初は自分への罰でした。

自分という存在を否定し憎み恨み、ダメな自分への罰として自分を傷つけるという方法を取るようになりました。
(この頃の病状はかなり悪くなっていました)
身に起こるものは全て自分がいけないのだという強い自己否定感がとても大きかったです。

それが段々と、他の理由も加わるようになりました。

自分自身への罰から、
こんなダメな自分は、もっと傷をつけてもっともっとダメなものにしなくてはいけないという感覚と、
常に傷がついてダメなものになっているという安心感からしてしまうこともありました。

時には自分自身への怒りからだったり、
誰かへの怒りや憎しみだったり、
傷つきを心で抱えていられないために、少しでも傷を心から外に出そうと、してしまうこともありました。

『ただただ助けてほしい』という叫びや絶望感、死の準備や死にたいために傷をつけることも…。

ですが、治療を続けていく中で、その後病状や心の変化と共に傷の意味が真逆の意味へと変化し始めました。

なんとか今を堪えるために。
なんとか死なないために。
生きるために死への恐怖を感じるために。
痛みで自分を我に返らせ、"生"に留まるために…。

こんな風に、以前は死へ、暗い方へ向かっていたはずが、
今度は死へ向かう心を止めるのはとても大変なため、痛みを与えることによって必死に自分を止めようと、生かそうとするようになりました。


外から見たら同じ傷でも、
自分への罰や死にたいと思いながらの傷と、
決して死へはいかないために命をなんとか保つための傷と、人に怒りや刃を向けずに自分を傷つけることによって人を守るための傷と…
もがきや矛盾や葛藤がたくさん入り混じっていました。

以前の私は、リストカットを理解できずにどうしてそんなことを…と思っていたけれど、
そうすることでしか命や心を保てない状態があることを知りました。

きっと、中には似ている状況の方もいるのではないかと思います。
または、リストカットとは違う形で、もがき苦しんでいる方もいるのだと思います。
私の母の場合、それはお酒と摂食障害でした。
(同じ症状の方が同じ原因だということではありません。あくまでも私と私の母の場合です)

現在、一切リストカットをしていません。
回復が進み、数年前からしなくても大丈夫なようになりました。
傷も特に隠すことはせず、古傷と共に生きています。

私自身は、一線を超えてしまう自覚があったので、
当時利き手ではやらない、というルールを決めていました。
たまに破ってしまう時もありましたが、それは自分なりの漠然とした必死の抵抗でした。

利き手じゃなかったおかげで、目立つ傷は少なくて済み、
今になってそのルールに救われています。

辞めるまでにもそれなりに時間が掛かりました。
実際にやらなくても、死へ向かってしまう自分を守るために、お守りとして持っていた時期も長かったです。

絶対にならないと思っていたものでも、
その道に行くこともあるのが、人間なのだと思います。
どんな姿も、必死に生きている姿のひとつなのかもしれません。
そして、傷があっても、ひとりの人間に変わりありません。

だけど…

傷を見た人の方だって、心が痛むこともあるはずです。
大切な人などが目の前で苦しんでいる姿を見たら、同じように痛み、苦しみを抱えることだってあるはずです。
きっと怒ったり、止めたり、否定などもしてくると思います。
私は自分の苦しみが大きすぎて、周りの声に向き合うことは難しかったけれど…
今なら伝えることができます。

怖かったのも
理解不能なのも

傷をつけるしかなかったのも
もがきや苦しみや悲しみも…

どれも人の心の中にあり、当事者も側に居る方もそれぞれの想いを抱えながら生きているのだと思います。

治療を重ね、リストカットを辞めることができた今、
今度は古傷が支えになってくれています。

あれだけの苦しみと闘ったんだという証でもあり、
命を残せて今に繋がることができたこと、
古傷を見ては『もう戻らない』と何度も思い直せること、
怖い、やばい人、理解不能、というところから、
またひとつ、人の理解が深まったことなど、
それは私にとって大きな財産でもあると思っています。


過去も一緒に抱きしめて、これからも共に生きていきたいと思います。

Text by

障害手帳2級。本格的に治療を始めてから約16年。
今もまだ葛藤は抱えていますが、治療や取り組んできた事が実を結び、笑える日も増えました。更に理解を深めていき、これからも自分にとっての学びと向き合っていきたいです。希望や夢だけでなく、もやもや、どろどろな自分もぎゅっとしながら、出来ることを精一杯頑張ります。

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